ヘリテージ(継承)を生かし、新たな世界観にチャレンジ(挑戦)する……。デザイン初公開から10カ月、この2つのキーワードを携え、三菱エクリプスクロスの"走り"をようやく体感できた。「行動意欲を駆りたてるデザイン」「閃きをもたらすコネクティビティ」「安定走行を楽しめる四輪制御ドライビングフィール」という3つを柱にする期待のSUVを桂伸一氏が試す。ガチ・ライバル、トヨタC-HRとの比較チェックもあり。果たして結果は!?
文:桂伸一/写真:西尾タクト
ベストカー2018年1月26日号
「意のままの走り」に秘密あり!! 新型CX-8にみるマツダの進化とこだわり
■三菱復活なるか!? S字をヒラヒラ走る姿に安心した
まずは、三菱がオールニューのエクリプスクロスで"戻ってきた"ことが喜ばしい!! 常に技術革新に挑み、走りを飛躍的に向上させること(もちろん安全性のために)にこだわり、世界初装備を好む。そんな三菱の姿勢と個性はやはりメーカーの存在価値として極めて重要である。
XR-PHEVIIという名のコンセプトカーが2015年ジュネーブでお披露目され、エクリプスに発展する。それはハッとさせられるほど前衛的で鋭いウェッジシェイプだった。ま、そのままの造形では市販は無理だろうなと当時は思い、現実この姿に落ち着いた。今回用意したライバル、C-HRのデザインが通る世の中だから、あのスタイリングもありだったなといまさらに思う。
さてエクリプスクロス、前衛的スタイリングを後部に残したが、その上下のリアウィンドウが後方視界を明快にし、光を取り込むことで室内を明るくさせている点がクルマの基本性能を押さえていると感じた。室内の居住性では特に後席が目を引く。200mmのスライド量と16~32度のリクライニング機構、足元の余裕も含めて家族のための後席の快適性が優れている。
そして走り、乗った瞬間「安心した」と口から漏れる。コンパクトSUVとはいえ、4WDを直噴1.5Lターボで事足りるのか? を危惧したからだ。今回の大磯プリンスホテル特設コースで、ゼロスタートから加速と変速、減速を繰り返すウチに納得。
ウェット路面でのスラロームもなんのその。4WD技術には自信のある三菱だけに高評価は当然の結果かもしれない
ダイレクト感に乏しいCVTでありながら、全開、中間加速と回転に空転感が驚くほど少ない。低速トルクが太く、アクセルの踏み込み量に対するエンジン回転と加速Gと車速の期待値がすべて合致する。ヒトの感性にズレがなければCVTでもこんなに自然になるのか、である。それも好印象へ導く要素だ。さらにステア操作に対する応答性の立ち上がりが実に素直。
ランサーエボリューションで開発し作り込んだ「AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)」をさらに進化させ、S-AWCとして搭載。エクリプスに搭載されるのはブレーキ制御のタイプで、積極的なAYCとは違うが、知らされないまま走行して高速S字スラロームをヒラヒラと、アンダーステアも感じずに抜けていく。
■宿敵C-HRとどっちがイイ?
さぁ、これをヒット車C-HRと比較せよと編集部からの指令。まずはカタチ、好みは分かれるだろうが幅広い層に受けているC-HRがひとまずリードする。次は走り。C-HRは1.2Lターボ搭載。小排気量だけに0.3Lの差は大きいうえに、CVTの特性もフル加速では空転感を感じるC-HRに対してエクリプスが有利。
基本的にアクセルは踏み始めから自然な反応を好むため、ほとんどはECOモードで、ジワリと加速する特性を選ぶ。そのモード同士で比較してもエクリプスは期待に沿っている。C-HRはガソリン4WDよりも、パワーユニットはやはりハイブリッドが似合いだと思う。
走行性能についてもかなり高評価の桂さん。ただ斬新さはC-HRに軍配が上がる!?
スマホとの連携ディスプレイ、AppleCarPlayのタッチパッド操作、またフルカラーのヘッドアップディスプレイなどなど、コネクティビティはエクリプスが完璧に一枚上手。パジェロでSUVの走破性を築き、ランエボでスポーツ4WDとS-AWCによる旋回性能を極めた三菱である。その待望の新作エクリプスクロスが、C-HRをカタチ以外で上回ってもおかしくない。これが結論だ。
最後に、PHEVにディーゼル、ほかのパワーユニット搭載時はどんな走りになるのか。これが気になるところ…。
【桂伸一氏 採点表】
車種
エクリプス
クロス
C-HR
走行性能
8点
7点
4WD性能
7点
6点
室内の広さ
8点
7点
使い勝手のよさ
8点
7点
安全装備の
充実度
7点
7点
クルマ斬新度
7点
9点
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