■アグレッシブすぎるワイドフェンダーのクルマを振り返る
スポーツカーや高性能車ではコーナリング性能を高めるために、よりワイドなタイヤが装着され、またクロスカントリー4WDでは、悪路走破性を高めるために大径でワイドなタイヤが装着されています。
【画像】超絶ワイドフェンダーがカッコイイ! 往年のワイドな車を見る(28枚)
さらに、コーナリング時や悪路走行時の車体の安定性を向上するために、トレッドもワイド化されるケースもあります。
ワイドタイヤの装着やワイドトレッド化した場合、ある程度以上となるとフェンダーも拡幅され、実際にスタンダードなボディよりも全幅が拡大したモデルもあり、直近ではトヨタ「GRヤリス」が一例として挙げられます。
また、ワイドフェンダー化は実用的なボディチューニングといえますが、ドレスアップの効果も高いといえるでしょう。
そこで、かなりアグレッシブなワイドフェンダーを採用したクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●ルノー「クリオ ルノースポールV6」
ベーシックなコンパクトカーをベースに高性能車を仕立てることを、古くから実践してきたメーカーのひとつがルノーです。現行モデルでは「メガーヌ R.S.」がラインナップされています。
一方、過去にはもっと過激なモデルとして、販売されたのが「クリオ ルノースポールV6」です。
2001年に登場したクリオ ルノースポールV6は、2代目「クリオ(日本名:ルーテシア)」をベースにワンメイクレース用に開発されたモデルで、本来はサーキット走行に限定されていましたが公道を走るための装備を追加し、ピュアスポーツカーとして市販化されました。
フロントエンジンのFF車であるクリオに対して、クリオ ルノースポールV6はキャビン後方にエンジンを搭載するリアミッドシップ車で、必然的に室内は2シーター化されていました。
外観はクリオのシルエットを残しつつも完全に別物で、大きく張り出した前後フェンダーによって迫力あるフォルムを実現。フロントフェイスとリアまわりにクリオの面影が残っている程度でした。
搭載されたエンジンは最高出力230馬力を発揮する3リッターV型6気筒自然吸気で、トランスミッションは6速MTのみとされ、0-100km/h加速は6.4秒、最高速度は237km/hというパフォーマンスを誇りました。
2003年にはクリオのマイナーチェンジとともにフロントフェイスを一新したフェイズ2が登場し、日本でも「ルーテシア ルノースポールV6」の車名で正規輸入され、当時の新車価格は588万円(消費税5%込)と、かなり高額な設定となっていました。
●スバル「インプレッサ 22B STIバージョン」
スバルは1992年に初代「インプレッサ」を発売。セダンとステーションワゴンの「インプレッサ スポーツワゴン」をラインナップし、トップグレードにはハイパワーな水平対向4気筒ターボエンジンとフルタイム4WDを組み合わせた「WRX」を設定。セダンのWRXは世界ラリー選手権(WRC)に出場することを想定して開発されていました。
インプレッサ WRXは市販車をベースとしたグループAカテゴリーで戦われるWRCで活躍したことでイメージアップに貢献し、国内外で高い人気を誇りました。
その後、1997年からWRCのレギュレーション変更により、改造範囲が広がった「WRカー」による戦いとなり、スバルは2ドアクーペの「インプレッサ リトナ」をベースにした「インプレッサ ワールドラリーカー97」で参戦。
このWRカーをSTIの手によって再現したコンプリートカーが、1998年に400台限定で発売された2ドアクーペの「インプレッサ 22B-STiバージョン」です。
外観はワイドトレッド化されたことに伴い大きく全幅を拡大したブリスターフェンダーが採用され、専用の前後バンパーと角度調整が可能なリアウイングを装着し、よりアグレッシブなフォルムへと変貌を遂げました。
エンジンも専用に開発された2212cc水平対向4気筒ターボ「EJ22改」を搭載し、最高出力は280馬力を発揮。
ほかにも専用チューニングの足まわりに強化されたブレーキシステム、クイックレシオのステアリングギアボックスを搭載するなど、エンジンからシャシに至るまで総合的にチューニングされていました。
当時の価格は500万円(消費税含まず)と高額で、STI謹製のコンプリートカー第1弾という歴史的なモデルでもありました。
●メルセデス・AMG「G63 AMG 6×6」
メルセデス・ベンツが誇るクロカン車である「Gクラス」は、ラグジュアリーな装いと卓越した悪路走破性から、長く世界中のセレブに愛されているモデルです。
誕生したのは1979年で、NATOの軍用車両だった「ゲレンデヴァーゲン」を民生向けに改良して発売されました。
これまでGクラスには数多くのバリエーションが存在しますが、飛び抜けて異彩を放つモデルだったのがメルセデス・AMG「G63 AMG 6×6」です。
2013年に世界限定100台で発売されたG63 AMG 6×6は、Gクラスの頂点に君臨していた「G63」をベースにホイールベースを伸ばし、軍用車の技術を転用した6輪のピックアップトラックとして開発されました。
ボディサイズは全長5875mm×全幅2110mm×全高2110mmと、小型のマイクロバスほどの大きさですが乗車定員は4名で、道なき道でも優雅にオフロード走行を楽しめることをコンセプトとしていました。
外観は巨大なカーボンファイバー製のオーバーフェンダーとフロントルーフスポイラー、荷台にはロールケージが装着され、見るものを圧倒するスタイルを実現。
内装はさまざまなオーダーが可能で、基本的にはショーファードリブンを想定したゴージャスな後席となっていました。
エンジンは最高出力544馬力を誇る5.5リッターV型8気筒ツインターボを搭載し、駆動方式は6WDを採用。
足まわりは多目的車である「ウニモグ」にも採用された「ポータルアクスル」によって、最低地上高は460mmを誇り、渡河深度は1mを誇りました。
また、合計5つのデフロック機構やタイヤの空気圧調整システムを搭載し、砂地、岩場、泥ねい地といったあらゆる悪路走行に対応していました。
G63 AMG 6×6は2014年に日本でも限定数5台で正規輸入され、当時の価格は8000万円(消費税8%込)と超高額でした。
※ ※ ※
後付けのオーバーフェンダーを装着したモデルや、ワイドフェンダー化されたモデルは、それだけでも車体の印象が大きく変わるくらいの迫力を醸しています。
オーバーフェンダーというと違法改造とみなされていた頃もありましたが、現在は法規に則った改造で構造変更などの手続きをおこなえば、大手を振って公道を走ることが可能です。
ただし、手間を考えるとそのほかのエアロパーツよりもハードルが高く、ドレスアップの手法としては少数派といえるでしょう。
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