輸入車Cセグメントサイズではぶっちぎり人気のゴルフに、2015年6月からヴァリアントをベースにした4モーションのオールトラックがラインアップに加わり、早速試乗してみた。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
ゴルフ・オールトラックは、ゴルフのステーションワゴン、ヴァリアントの4WDのことだ。ステーションワゴンのカテゴリーではCセグメントサイズが日本では主流で、約80%にのぼる。その内訳では、国産車が90%を占めているという。ちなみに、車種ではカローラ フィールダーがもっとも人気があり、次いでスバル・レヴォーグやホンダ・フィットシャトルが人気だ。
ゴルフ オールトラックには4WDを採用しており、レヴォーグやアウトバックと同類といえる。ちなみにボディサイズは全長4585mm×全幅1800mm×全高1510mm、ホイールベース2635mmとなっている。
このステーションワゴンのマーケットに2013年12月ゴルフ・ヴァリアントが投入されている。このとこは、いよいよフォルクスワーゲンが全方位でモデルラインアップを充実させ、国産車からの乗り換えユーザーを取り込む戦略が動き始めているということだ。単年ではあるがヴァリアントはすでに1.4万台の販売実績があり、バリエーションとして今回のオールトラック4WDモデルをラインアップに加え、さらに選択肢を充実させているというわけだ。
ゴルフ・オールトラックはオンデマンドの4WDクロスオーバーで、エクステリア、インテリアのデザインの良さ、優れた燃費性能(21.0km/L)、広大な荷室といった特徴をそのままオールトラックでも手に入れることができ、通常の605Lの荷室容量が最大1620Lにも拡大するスペースがある。
ヴァリアントの購入者層としては国産車からの乗り換えユーザーが50%、ミニバンからの乗り換えユーザーが30%、そして60%以上の顧客が上級グレードのハイラインを選択すると説明する。そして1.4LTSIエンジンを搭載するヴァリアントに対しては、「もっとパワーのあるエンジンが欲しい」という声があるという。ちなみに1.4LのTSIエンジンは150ps/250Nmというスペックだ。
これらの状況を加味し、VWグル―プジャパンはオールトラックでは、1.8LのTSIエンジン搭載6速湿式多板DSGという組み合わせの4WDを導入した。180ps/280Nm、14.7km/Lというスペックで、回生エネルギー機構を持つ4モーション(4WD)となっている。本国ドイツではオールトラックの開発はディーゼルがメイン。国内では前述の1.4Lでは少し非力、2.0Lになるとコストの問題がある、などの理由から1.8Lエンジンとなった背景がある。
価格では輸入車Cセグメントの4WDステーションワゴンでは最廉価となる347万円。アップグレードパッケージモデルで367万円というプライスでレヴォーグのトップグレードである2.0Lモデルでは334.8万から356.4万円と真っ正面から対決可能な価格となる。こうした戦略的な価格に合わせて、ゴルフらしい、真面目な性能をもったモデルがオールトラックとなるわけだ。
◆インプレッション
さっそく試乗してみると、センターデフを持たないオンデマンド4WDは100:0から0:100まで、前後のトルク配分を可変できるハルデックス製の4WDで、出だしの低速域ではFFとして走りはじめ、コーナリングや高速域になるに従い後輪へとトルク配分する。状況に応じて100%後輪駆動にもなる。しかし、ドライバーにはそのトルク配分の変化を感じることはなく、滑らかに普通に走ることができる。
サスペンションは20mm車高をアップした専用サスペンションで、アプローチアングル14.5度、デパーチャーアングル17.3度、ランプアングル9.4度とSUV的要素も持ったクロスオーバーになっている。乗り心地も硬くなく、しかし引き締まった印象のあるサスペンションで、ゴルフらしいしっかりとしたフィールになっている。ちなみに装着するタイヤサイズは205/55-17だ。
走行モードは「normal」「sport」「eco」「custom」の他に新たに「off road」が加わっている。このオフロードを選択すると、ABSはより速く制動距離を短くする設定に変更され、アクセルも緻密に制御される。試乗では、箱根のワインディング、および東名高速での試乗だったため、このオフロードモードを試さなかったが、雪道やヘビーレインなどμの低い路面では心理的にも安心の材料になるだろう。
ゴルフのプラットフォームはもともとアップライトなシートポジションになっているため、車高が20mm上がったものの、それほどハッチバックのゴルフとの違いを感じることはない。すっきりとした視界はオールトラックでも再現され、運転しやすい。また、数々の安全装備も標準装備されているのも評価の高いポイントでもある。
エクステリアではシルバーが効果的に配され、力強く、上品にアクセントを加えている。サイドビューではホイールアーチに黒のアーチモールが加わり、ひと目でオールロードであることが分かる。さらにシルバーのルーフレールやシルバー塗装のミラーなど、アグレッシブな雰囲気を演出する。
試乗車のインテリアは(アップグレードパッケージのオプション)タンカラーのレザーシートがシックで大人な印象だ。1クラス上の、そしてプレミアムモデルのBMW3シリーズをも凌ぐ印象で、高級感あるインテリアになっている。右ハンドル仕様になっているため、ペダル配置がわずかに左へオフセットしているものの、強く意識しなければ、気づかないレベルだろう。
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