現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ヤマハが見た夢「OX99-11」とは? F1エンジンをデチューンしてロードカーに搭載…ロンドンでの初公開ではジョン・ワトソンがドライブ【クルマ昔噺】

ここから本文です

ヤマハが見た夢「OX99-11」とは? F1エンジンをデチューンしてロードカーに搭載…ロンドンでの初公開ではジョン・ワトソンがドライブ【クルマ昔噺】

掲載 1
ヤマハが見た夢「OX99-11」とは? F1エンジンをデチューンしてロードカーに搭載…ロンドンでの初公開ではジョン・ワトソンがドライブ【クルマ昔噺】

ケーターハムとのプロジェクトに期待!

モータージャーナリストの中村孝仁氏が綴る昔話を今に伝える連載。2024年10月2日、ヤマハが英国ケータハム社にeアクスルを供給し、EVスポーツの計画に参画することが発表されました。そこで今回は「ヤマハの4輪車への挑戦」を振り返ってもらいます。

【現存数3台】新車価格「約1億3000万円」だったヤマハ「OX99-11」とは? マクラーレン「F1」と共通項の多い幻の名車3台ぜんぶ見せます!

ヤマハ発動機は日本楽器製造から独立した会社だった

ひと口にヤマハと聞いて、連想するイメージは人によって違う。ある人はピアノをはじめとした楽器かもしれないし、いや、オーディオだという人もいるだろう。そして我々(このサイトを読む人)に最も近いのは、2輪車メーカーとしてのヤマハだろう。もっとも、2輪を作るヤマハ発動機は、ヤマハ株式会社(当時は日本楽器製造)から独立した会社なのだそうだ。

そのヤマハは、2輪車を作る傍らで昔から4輪車への進出を画策していた。当初はクルマを丸ごと作るところから始まっていて、MGAツインカムを手本に最初に作られたのが、「YX-30」というオープン2シーターのモデルである。まだ、世界的にもDOHC黎明期にあって、オールアルミ製(ピストンからコンロッドに至るすべて)の1.6Lエンジンを完成させていた。

そして並行して開発された試作2号車は、コンパクトなクーペモデルだった。個人的にはこのクルマを見て確信に近いものを持ったのだが、これは、ファセル・ヴェガ「ファセリア」が手本だ。1961年7月に日本楽器製造はファセル・ヴェガ ファセリアを購入している。

ただ、購入したのはコンバーチブルだったのだが、この試作2号車のデザインはファセリア4シータークーペにあまりにも酷似しているのである。

日産、そしてトヨタとのコラボが続く

その後ヤマハの力では車両を完成させることなく、このプロジェクトは終焉するのだが、とあるメーカー(日産である)がヤマハの技術に興味を持ち、共同でスポーツカーの開発が進む。全体の概要は日産が作り、ヤマハはYX-80と呼ばれる2L DOHCのエンジンの供給と、細部の設計や試作を担当する。こうして完成したのは日産「A550X」と呼ばれた流麗な2シータースポーツで、本来は東京モーターショーに出品されるはずであったのだが、その計画は突然中止されてA550Xは幻のクルマと化した。

完全なランニングプロトまで作られていたのにである。我が家には今も日産時代にとあるデザイナーが描いたレンダリングがある。そして紆余曲折の末に、このヤマハ製2L DOHCエンジンを搭載したクルマはトヨタから「2000GT」として誕生するのだが、そのくだりはここでは省略する。

独自に車両を開発しロンドンで初公開!

これ以降、ヤマハはトヨタとともにエンジン開発に専念し、最終的にはブラバム「BT60Y」に搭載された3.5LのF1エンジン開発まで突き進む(これはトヨタとは無関係)。そしてこの3.5L V12、「OX99」エンジンはF1では成功しなかったものの、そのF1でマシンがまだエントリーしていた1992年に、ロードゴーイングカーにこのエンジンを搭載して特異なスポーツカーが作られた。それが「OX99-11」である。

このクルマは1992年にロンドンで初公開されたものだが、そのエンジンベイに搭載されていたのがOX99であった。もちろんロードゴーイング用としてデチューンされていたのは言うまでもない。 F1参戦と同時期に開発されていた関係から、ヤマハは本気でこのクルマを市販するつもりだったのだろうが、やはり時代が悪すぎた。価格は当時でも1億円を超え、バブルが消滅した時代背景からは恐らく考えられないくらい高価なものだったように思う。だから結局はこのクルマも完成はしたものの、日の目は見ず終いである。

ボディのデザインは由良拓也

発表会でこのクルマをドライブしたのはジョン・ワトソン。長くブラバムで活躍したドライバーだったからの登用ではないかと思われた。ちなみにヤマハエンジン搭載のF1ブラバムをドライブしたのは、マーチン・ブランドルとマーク・ブランデルの2人である。

OX99-11と名付けられたこのクルマはそのベアシャシーからもわかるように、ほとんどF1にルーフの付いたコックピットを与えたような作り。ボディのデザインは由良拓也氏。発表会の場にも彼の姿があった。車体の中央にドライバーズシートがあり、そのいで立ちはまさにF1そのもの。しかし、ドライバーの左サイドやや後方にはもうひとつのシートがあり、一応タンデムの2人乗りとされている。

実際に発表会の場では女性がその席に収まってみたものの、やはり窮屈そうなのは見てもわかった。 結局3台が作られただけでプロジェクトはキャンセルされた。2016年には袋井のテストコースを走行したOX99-11の姿がネットに掲載されていて、現在もおそらく3台すべてが動体保存されているはずである。

ケータハムのモデルはEVである。残念ながらICEでスポーツカーを作ることは叶わなかったが、ケータハムとのプロジェクトは成功させてほしいものである。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

注目度はスーパーカー並み! 宇宙船のような「ネコ目」と呼ばれたシトロエン「DS」ならば、500万円で旧車泥沼生活が送れるかも!?
注目度はスーパーカー並み! 宇宙船のような「ネコ目」と呼ばれたシトロエン「DS」ならば、500万円で旧車泥沼生活が送れるかも!?
Auto Messe Web
164台のみ市販されたアウディ「スポーツクワトロ」は1億円の価値がある!? 2オーナーのオリジナル度高い個体がオークションに登場
164台のみ市販されたアウディ「スポーツクワトロ」は1億円の価値がある!? 2オーナーのオリジナル度高い個体がオークションに登場
Auto Messe Web
900万円で極上のボンドカーが手に入る! 映画『007/ダイ・アナザー・デイ』に登場したアストンマーティン「V12ヴァンキッシュ」は今が買い!?
900万円で極上のボンドカーが手に入る! 映画『007/ダイ・アナザー・デイ』に登場したアストンマーティン「V12ヴァンキッシュ」は今が買い!?
Auto Messe Web
納屋物件のオンボロに500万円オーバーの値が…ジャガー「Eタイプ」は今なおパーツ入手可能! レストア後は数千万円の価値になるのは間違いなし
納屋物件のオンボロに500万円オーバーの値が…ジャガー「Eタイプ」は今なおパーツ入手可能! レストア後は数千万円の価値になるのは間違いなし
Auto Messe Web
バブル期に日本でかなり人気のあったルノー「アルピーヌ V6ターボ」に右ハンがあった! まだ手が届く630万円で落札されました
バブル期に日本でかなり人気のあったルノー「アルピーヌ V6ターボ」に右ハンがあった! まだ手が届く630万円で落札されました
Auto Messe Web
懐かしの1970年代ポップカルチャーの象徴! 元祖「デューンバギー」が約568万円で落札…オリジナルを保ったメイヤーズ「マンクス」でした
懐かしの1970年代ポップカルチャーの象徴! 元祖「デューンバギー」が約568万円で落札…オリジナルを保ったメイヤーズ「マンクス」でした
Auto Messe Web
お洒落すぎるキャンピングカー「ベッドフォードCA」を知ってる? 英国で値上がり中の名門ドアモービル社が仕立てた1台とは
お洒落すぎるキャンピングカー「ベッドフォードCA」を知ってる? 英国で値上がり中の名門ドアモービル社が仕立てた1台とは
Auto Messe Web
スバル「クロストレック」の始祖「インプレッサ スポーツワゴン グラベルEX」とは?「RVカー」お約束アイテム満載の遊び尽くすためのクルマでした【カタログは語る】
スバル「クロストレック」の始祖「インプレッサ スポーツワゴン グラベルEX」とは?「RVカー」お約束アイテム満載の遊び尽くすためのクルマでした【カタログは語る】
Auto Messe Web
ゴブジ号は「究極の愛されキャラ」! どこに乗っていっても人気モノ…だけれどもエンジンフードのルーバーから黒い涙が流れてきて【週刊チンクエチェントVol.48】
ゴブジ号は「究極の愛されキャラ」! どこに乗っていっても人気モノ…だけれどもエンジンフードのルーバーから黒い涙が流れてきて【週刊チンクエチェントVol.48】
Auto Messe Web
20歳女子、トヨタAE86「スプリンタートレノ」に乗ってみた!「大森の3連メーターは母のレビンと同じかも……」【令和女子旧車に乗る】
20歳女子、トヨタAE86「スプリンタートレノ」に乗ってみた!「大森の3連メーターは母のレビンと同じかも……」【令和女子旧車に乗る】
Auto Messe Web
超レア! バブル末期を象徴する「ケーニッヒ仕様8シリーズ」…2年越しで前オーナーから譲ってもらったV12モデルと思い出を作っていきます!
超レア! バブル末期を象徴する「ケーニッヒ仕様8シリーズ」…2年越しで前オーナーから譲ってもらったV12モデルと思い出を作っていきます!
Auto Messe Web
F40から40年を経て「12倍以上のお値段」で誕生! フェラーリF80は3リッターV6+モーターで1200馬力の怪物だった
F40から40年を経て「12倍以上のお値段」で誕生! フェラーリF80は3リッターV6+モーターで1200馬力の怪物だった
WEB CARTOP
非公認・第1回なんちゃってセレブ「後席オブ・ザ・イヤー」を発表! リアシートの乗り心地を評価…選ばれし2台のクルマは?
非公認・第1回なんちゃってセレブ「後席オブ・ザ・イヤー」を発表! リアシートの乗り心地を評価…選ばれし2台のクルマは?
Auto Messe Web
6輪のスーパーカーとか激熱じゃんか! タイレルP34への憧れから意地で生み出した「コヴィーニC6W」が強烈!!
6輪のスーパーカーとか激熱じゃんか! タイレルP34への憧れから意地で生み出した「コヴィーニC6W」が強烈!!
WEB CARTOP
レクサスの斬新コンセプト「エレクトリファイドスポーツ」市販化の可能性は? 伝説の“和製スーパーカー”「LFA」後継との説も? テスト車目撃で「次の動き」にも期待大!
レクサスの斬新コンセプト「エレクトリファイドスポーツ」市販化の可能性は? 伝説の“和製スーパーカー”「LFA」後継との説も? テスト車目撃で「次の動き」にも期待大!
くるまのニュース
日産「レパード」にオープンが存在した!? 幻の「レパード アルティマX」かと思いきや…家族4人でドライブを楽しんだオープンエアモデルの正体とは?
日産「レパード」にオープンが存在した!? 幻の「レパード アルティマX」かと思いきや…家族4人でドライブを楽しんだオープンエアモデルの正体とは?
Auto Messe Web
大人レゴの秘密 3800ピースで作る究極のマクラーレン ドライブモードも再現
大人レゴの秘密 3800ピースで作る究極のマクラーレン ドライブモードも再現
AUTOCAR JAPAN
マイアミ文化をランボルギーニで表現したら…既成概念を打ち破る「ウルスSE」登場! アニメから飛び出してきたようなカラーリングが斬新すぎる!
マイアミ文化をランボルギーニで表現したら…既成概念を打ち破る「ウルスSE」登場! アニメから飛び出してきたようなカラーリングが斬新すぎる!
Auto Messe Web

みんなのコメント

1件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村