毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
何このド迫力!! トヨタ海外専売SUV「TRDプロ」が超カッコいい!!!
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスバル エクシーガおよびエクシーガクロスオーバー7(2008-2018)をご紹介します。
【画像ギャラリー】スバルらしい個性派7シーターミニバン/SUV!! エクシーガ&エクシーガ クロスオーバー7をギャラリーでチェック!!!
文:伊達軍曹/写真:SUBARU
■レガシィのDNAを受け継いだツーリング7シーター
「7シーター パノラマ ツーリング」というコンセプトで登場した、ステーションワゴン的なフォルムと走りの実力を備えたスバル製ミニバン(のちにSUV)。
スバリストの心はとらえたものの、それ以上の広がりを作り出すことはできず、結果として廃番となった佳作。それが、スバル エクシーガおよびエクシーガ クロスオーバー7です。
2008年6月に登場したスバル エクシーガは、レガシィ アウトバックよりひと回り大きな全長4740mm×全幅1775mm×全高1660mmのボディに「2+3+2」の3列シートを組み込んだ7人乗りのミニバン。
ボディサイズは全長4740×全幅1775mm×全高1660mm。ホイールベース2750mmとしながらも、5.5mの最小回転半径によって無理なく取り回せる扱いやすさを実現
とはいえそのフォルムは前述のとおり、ミニバンというよりはステーションワゴンに近いものでした。
室内寸法は同世代のレガシィツーリングワゴンより65mm幅広く、85mm高いというもの。
その中に置かれた計3列のシートは、後ろに行くほどヒッポポイントが70mmずつ上がっていく「シアターシートレイアウト」を採用していました。
着座位置が徐々に高くなるシアターシートレイアウトにより、すべてのシートで見晴らしの良いパノラマビューを実現。またサッシュ付きドアの採用やリヤドア開口部の大型化、ほぼ直角まで開くドアヒンジの採用などにより、スムーズな乗降性を目指している
そのため、オプション装備だったパノラミックガラスルーフの開放感と併せ、スバル エクシーガの「乗員にとっての快適性」はなかなかのもの。
ガラスエリアをセカンドシートの頭上まで広げることで全席での開放感を大きく高めた、1160×851mmの開口寸法を持つパノラミックガラスルーフをメーカー装着オプションとして設定
3列目も、大柄な人だとさすがにやや窮屈ですが、身長170cm前後の成人であれば、割とゆったり座れるだけのスペースは確保されていました。
初期のパワートレインは、最高出力225psの2L水平対向4気筒ターボ+5速ATと、同148psの2L水平対向4気筒自然吸気+4速AT。
駆動方式はスバル車ですので4WDが基本でしたが、2L自然吸気のほうではFFを選ぶこともできました。
2009年9月には自然吸気モデルのトランスミッションがCVTに変更され、同年12月には2.5L自然吸気+CVTとなるグレードを追加。
2012年7月には2.5Lエンジンを新世代のボクサーエンジンに置き換えるとともに、「アイサイト」のver.2搭載グレードを設定しました。
その後もさまざまが改良が加えられたスバル エクシーガでしたが、販売は振るわず。
そのためスバルは2015年4月、ミニバン扱いであったエクシーガをSUV風に仕立て直し、エクシーガに代わる新たな7人乗りSUVとして「エクシーガ クロスオーバー7」をデビューさせました。
2015年4月登場のエクシーガ クロスオーバー7。最低地上高を170mmに上げ、全幅は25mm増え1800mmに。多彩な用途に使えアクティブなライフスタイルを実現する7シーターSUV
クロスオーバー7のパワートレインは2.5L水平対向4気筒自然吸気+CVT(リニアトロニック)で、駆動方式は4WDのみ。
足回りはエクシーガと同じくフロントがマクファーソンストラットでリアがダブルウィッシュボーン式ですが、SUV化にあたってダンパーとステアリングのチューニングが変わっています。
こちらのエクシーガ クロスオーバー7も一部のコアなスバルファンには響いたのですが、世の中の多くに訴求するまでには至らず、販売成績は低空飛行が続きました。
そのためスバルは2018年3月にエクシーガ クロスオーバー7の生産を終了。そのまま販売のほうも終了と相成りました。
■大胆なリニューアル戦略に打って出るも、廃番となった理由
3列シートの7人乗り車としては異例なほどに――特に自然吸気エンジン搭載グレードは――良好なハンドリング性能を持ち、居住性なども決して悪くはなかったスバル エクシーガおよびエクシーガ クロスオーバー7はなぜ、廃番となってしまったのでしょうか?
まず一つは「タイミングが悪かった」というのがあるでしょう。
スバルが満を持してエクシーガを発売したのは2008年。しかし2008年といえば、一世を風靡していたトヨタ ウィッシュやホンダ ストリームなどロールーフミニバンの人気が下火となり、それに代わってハイルーフ+後席スライドドアのミニバンが人気となっていった時期でした。
さらに当時は原油相場が高騰してガソリン価格が上昇し、ハイブリッド車が注目を集めていたタイミングでもあります。
そんななかで、燃費がよろしくないイメージがある(というか、実際良くはない)「4WD」「水平対抗エンジン」「ターボ」というキーワードは、お世辞にも販売に寄与するものではありませんでした。
ということで、エクシーガおよびクロスオーバー7が売れなかった理由は、表層的には「タイミングが悪かったから」ということなのでしょう。
しかしそれ以上に、根本的には「広い意味での“実力”が足りていなかったから」というのが、エクシーガおよび同クロスオーバー7が消えていった理由であると、筆者は見ています。
スバル エクシーガは、「子育てやその他の理由で3列シートが必要ではあるが、いわゆる走りの気持ち良さもあきらめたくはない」と考える層のために開発された車でした。
そのように考えるユーザー層をさらに分解すると、それは下記のとおりとなります。
1. 一部のスバリスト(スバル車のフィーリングが好きなスバリストのなかで、たまたま3列シート車が必要になる人生ステージにいる人)
2. 一部のミニバン愛用者(スバリストではないミニバン愛用者で、できればもっと走りのいい3列シート車に乗り替えたいと考えている人)
上記の1また2に該当する人もそれなりにいるはずですが、「それなり」の数でしかありません。マーケット全体から見れば少数派なのです。
マニアックなスポーツカー等は別ですが、一般的な車の場合は、そのような少数だけを相手に自動車の開発および販売ビジネスを行っても絶対に利益は出ません。利益が出ないどころか、トントンにもならず赤字となるでしょう。
上記の1と2をコアターゲットにしつつ、「その周辺にいる人」も巻き込むだけの商品力というか「なんとなくの魅力」がないことには、どうにもならないのです。
近年のスバル車で言えばXVが、そのような「決してコアなスバリストではない“浮動票”」を獲得するだけの「なんとなくの魅力」を備えた商品でした。
現行型XVの発売1カ月後の受注のうち、スバル車以外からの乗り替えが約6割を占めていたというのは有名な話です。
2010年6月登場の初代XV。現行型は3代目にあたる
しかし残念ながら、エクシーガおよびエクシーガ クロスオーバー7には「それ」がありませんでした。
「それ」というのは、「なんかよくわかんないけど、いいじゃん!」と人に思わせるだけのデザインやたたずまい、あるいは物語です。
もしもそういったものがエクシーガにあったなら、決してバカ売れするタイプの車ではないでしょうが、「そこそこの数は売れ続ける(=それなりにソロバンは合う)稀有な実力派7シーター」として、歴史を刻んでいけたのかもしれません。
なまじいい車だっただけに、そこが残念でなりません。
■スバル エクシーガ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4740mm×1775mm×1660mm
・ホイールベース:2750mm
・車重:1570kg
・エンジン:水平対向4気筒DOHC、2498cc
・最高出力:173ps/5600rpm
・最大トルク:24.0kgm/4100rpm
・燃費:13.2km/L(JC08モード)
・価格:259万2000円(2014年式 2.5iアイサイト)
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みんなのコメント
なんというか...記事を書く仕事してるなら、誤字のチェックくらい念入りにしてから世に出して欲しい。自動車メーカーが世に出した車と同じで、一度世に出したら書き換えられないのだからね。
ホント、イヤミにしか聞こえないタイトルだわさw