未来感ほどほどの絶妙な和みのEV
SDGsの脱炭素で再生可能エネルギーな世の中が迫ってきて電動化はやぶさかではないものの、ドイツ車的な2トン半近いハイエンドEVがエコってのもピンとこないし、新規参入メーカーの「クルマ未満」じみたEVにひっかき回されるのも勘弁。おそらく車に車以上の何かを求めるエッジな人々のコンセンサスは、そんなところではないか。
ならば最注目は、シトロエンから独立して6年半が経つDSだ。ついに初の市販EVとなるDS 3クロスバックE-テンスを日本市場にも送り込んできた。
リアゲートのエンブレムとフロントグリルの格子模様が多少異なる以外、先行する1.2Lガソリンターボのピュアテック130と外観は変わらない。DS 3クロスバックのICE(内燃機関)=ガソリン版は155psの「パフォーマンスライン」も追加されたが、EV版のE-テンスの最大出力は100kW=136ps、最大トルクは260N・mと、ガソリン車の標準たる130ps/230N・mと横並びに近い。
車幅は1800mmに満たず、車高も立体駐車場にギリ収まる1550mm。全長は4100mm強なので、街中での取り回しの軽快さはいうまでもない。小さな車格ながらも、前席ウインドウはアコースティックガラスで二重化されており、もとよりガソリンモデルでも相当に静粛性は高いが、EV版はさらに圧倒的なほど静か。 EVとはいえゼロ発進からのアクセルを踏んだ瞬間の転がりだしは、ガツンとトルクが立ち過ぎるでもなくマイルド。むしろ、電気モーター特有のワープみたいな加速感を避けている節さえある。完全停止までしないが街乗りはワンペダル操作もできるし、ガソリン車より300kgほど重いものの、発進時や四つ角を曲がる程度では重量増を感じさせない。柔らかいが張りもストロークもある乗り心地は、同門のプジョーやシトロエンとも一線を画す。
それでいて内装は小さな高級車そのものである点は、EVも同じく。E-テンス専用となる白一色の「リヴォリ」内装は、それこそ包み込まれるように柔らかな雰囲気とタッチで、このインテリアのためだけにE-テンス一択のマダムが絶対にいるだろう。「それ、どこの?」と聞かれる程度に、多くの人にまだ知られていない点もくすぐるはずだ。
後席に乗り込むと、邪魔にはなっていないがシート下に、ガソリン車にはないカドが認められる。リチウムイオンバッテリーを後車軸の前方に収める関係で、リアサスはフランス車得意のトレーリングアームではなく、左右リジッドを斜めのロッドで吊るした「パナールロッド」方式なのだ。
ハイドロで名をはせたシトロエン DSから65年近く、最新鋭のDSがパナールロッドって、いくらなんでも原始的すぎないか? というツッコミどころはあるだろう。だがパナールロッドはBセグの車格で50kwh容量のバッテリーという重量物を受け止めるのに必要なソリューションでもある。乗り味にトレーリングアームのガソリン車とほぼ差がないことを鑑みれば、物理的には文句のつけようがない。
ちなみに、2年前に開かれた国際試乗会で生産試作にちょい乗りしたとき、このパナールロッドのリアサスは結構な固さだった。ようは「DSらしいマジック・カーペット・ライド」へと、2年の間に仕立てられたのだ。 未来的でテックなにおいがするだけのEVではなく、アナログ的というか触感や視覚のうえで、従来的な車の良さという点でもE-テンスは語りかけてくる。強めにブレーキを踏むとブレーキディスクの摩擦と回生モーターの抵抗が噛み合わず、ジャダーが少し出る兆候はあるが、制動がヌケるわけではない。
航続距離はWLTP(国際基準の排出ガス・燃費試験法)モードで320km。補助金込みで乗り出しは大体500万円ほど。国産にも既存の高級輸入EV車にもない、ハイエンドなスモールEVとして貴重なポジションといえる。 文/南陽一浩、写真/茂呂幸正、PSAグループ【試乗車 諸元・スペック表】●グランシック型式ZAA-D34ZK01最小回転半径5.3m駆動方式FF全長×全幅×全高4.12m×1.79m×1.55mドア数5ホイールベース2.56mミッションその他AT前トレッド/後トレッド1.54m/1.55mAI-SHIFT-室内(全長×全幅×全高)-m×-m×-m4WS-車両重量1580kgシート列数2最大積載量-kg乗車定員5名車両総重量-kgミッション位置不明最低地上高0.19mマニュアルモード-標準色ブラン バンキーズオプション色クリスタルパール、ノアールペルラネラ、ブルー ミレニアム、ウィスパー掲載コメント-型式ZAA-D34ZK01駆動方式FFドア数5ミッションその他ATAI-SHIFT-4WS-標準色ブラン バンキーズオプション色クリスタルパール、ノアールペルラネラ、ブルー ミレニアム、ウィスパーシート列数2乗車定員5名ミッション位置不明マニュアルモード-最小回転半径5.3m全長×全幅×全高4.12m×1.79m×1.55mホイールベース2.56m前トレッド/後トレッド1.54m/1.55m室内(全長×全幅×全高)-m×-m×-m車両重量1580kg最大積載量-kg車両総重量-kg最低地上高0.19m掲載用コメント-エンジン型式ZK01環境対策エンジン-種類電気モーター使用燃料電気過給器-燃料タンク容量-リットル可変気筒装置-燃費(10.15モード)-km/L総排気量-cc燃費(WLTCモード)-燃費基準達成-最高出力136ps最大トルク/回転数n・m(kg・m)/rpm260(27.5)/3674エンジン型式ZK01種類電気モーター過給器-可変気筒装置-総排気量-cc最高出力136ps最大トルク/回転数n・m(kg・m)/rpm260(27.5)/3674環境対策エンジン-使用燃料電気燃料タンク容量-リットル燃費(10.15モード)-km/L燃費(WLTCモード)-km/L燃費基準達成-
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みんなのコメント
前車と同様に、何物にも似ていないデザインが気に入ってます。
前車のDS3、車体はグレー/屋根はレッド、内装はレッドのレザー仕様にしたので注文生産となり、納車まで半年あまり待ちました。 フロントグリルの形状、シャークフィンやルーフの別色塗装など、次々と日本車がまねをしているのを見てほほえましく思いました。
シトロエンやDSに乗っている車好き(少し変態かも?)は、ヴェセルは視野に入っていないと思います。