■自動車界のミラクルイヤー…幕開けは世界でいちばん熱い夏?
昭和が終わり、平成が始まった1989年は、自動車業界にとっても節目の年となりました。
「安くて良いクルマづくり」で販売台数世界一になった日本が「世界が憧れるクルマづくり」へと大きく舵を切ったのです。
そんな1989年に登場したクルマのなかでもいまでも強烈な存在感を示す3台を紹介します。
1989年はマネーの年でもありました。リクルート事件で大騒ぎとなり、川崎市の竹やぶで1億円の札束が見つかり、ソニーがアメリカのコロンビア映画を買収したバブルの絶頂期です。
そのような時代に、トヨタが世に送り出した高級車が「セルシオ(海外ではレクサス「LS」)」でした。
キャッチコピーは「この車から、クルマが変わります」で、横に添えられたのは「世界の高級車として すべての基準を超えるために 450台の試作車 1400人のエンジニア…」という文言でした。
同じトヨタの「センチュリー」や「クラウン」とは違う世界基準のクルマをつくるため、エンジンやミッションなどを徹底的に磨き上げ「静粛性」という武器で世界を驚かせたのです。
象徴となった4リッターV型8気筒エンジンは恐ろしくスムーズで「エンジンの上でコインが立つ」という伝説も残したほどです。
この「静粛性」に加え、最高速度250キロでの安定走行と低燃費を両立したことから、アメリカでは欧州の高級車を下取りに出し、レクサスに乗り換える富裕層が続出したといいます。
2台目のクルマは、日産「スカイライン GT-R(BNR32型)」(以下、R32)です。
当時は、スタジオジブリの映画「魔女の宅急便」が公開され、横浜ベイブリッジが開通し、プリンセス・プリンセスの「世界でいちばん熱い夏」が大ヒットした32年前の夏にR32が衝撃のデビューを飾りました。
スパルタンなエクステリアデザインは、グレーメタリックのボディカラーと相まって、非の打ち所がないカッコよさでした。
「新しい神話が、このクルマからはじまる」というキャッチコピーそのままに、当時の自主規制上限となる280馬力を誇る2.6リッター直列6気筒ツインターボエンジンを搭載。
R32のポテンシャルを引き出した「ATTESA E-TS(電子制御四輪駆動システム)」と「SUPER HICAS(4輪操舵システム)を採用し、「技術の日産」としてスカイラインGT-Rを復活させたのです。
その伝説は、国内外のレースシーンで現実となり、圧倒的な強さを誇ったことで「新しいGT-R神話」をつくりあげました。
これまで、「安い、壊れない、燃費が良い」で勝負してきた日本車が「速い、強い、かっこいい」で世界を制したロングセラーとなり、その後R33、R34、そして現在も販売されるR35へとGT-RのDNAは引き継がれています。
■ロードスターと工藤静香とWinkと…
3台目は、マツダが誇るユーノス「ロードスター(NA型)」。当時、オープン2シーターのジャンルは絶滅寸前といわれていましたが、このクルマの爆発的ヒットによって、世界中のメーカーが2匹目のドジョウを狙いにいくことになるのです。
200万円以下で買える手軽さとマツダが提唱する「人馬一体」の如きドライブフィールで人気を博しただけに、都内でも赤や青のロードスターをあちこちで見かけました。
ドライバーズシートを見ると、渋カジの学生やラルフローレンで決めた社会人がステアリングを握っていたものです。
ちなみに漏れてくる音楽はたいていユーロビートで、都心を離れるとWinkや工藤静香が多かった気がします。
「軽く、小さく、運転が楽しい」欧州車のお家芸に日本車の持つ「丈夫で安心」という価値が加わり、国内販売月3000台を誇ったロードスターに続けとばかりにBMW「Z3」、ローバー「MGF」、フィアット「バルケッタ」、ポルシェ「ボクスター」などが次々と登場していきました。
今回、紹介した3台以外にも数多くの名車が誕生したミラクルイヤーとなる1989年は、日本の自動車メーカーがもっとも輝いた時代だったのかもしれません。
ちなみにこの年の暮れ、三菱地所がアメリカのロックフェラー・センターを買収し、日経平均株価は史上最高値の3万8957円44銭をつけましたが、年明けから株価は下落し、バブル崩壊へと突き進んでいったのでした。
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みんなのコメント
35はLSとほぼ同価格帯
普通なこと
所得の上がらない日本が異常なだけ
今でも当時の車は十分評価されると思う。
プリメーラのような高性能ファミリーセダンはもう出ないんでしょうね。