シャープさを増した顔つきが目を惹く新型「ベルランゴ」
2024年10月、シトロエン「ベルランゴ」がマイナーチェンジを受けました。
【画像】「えっ!…」ミニバンなのに運転が楽しい! これが進化したシトロエン「ベルランゴ」です(30枚以上)
昨今、日本におけるシトロエンのヒットモデルといえば、なんといっても「ベルランゴ」。2020年の上陸以来、約4年で1万台以上をセールスしたといいますから驚きです。
ライバルのルノー「カングー」と同様、本来は実用性を最重視した商用バンですが、日本に導入されるのは装備を充実させて快適性を高めた乗用車仕様。商用車としてではなく、ファミリーを中心としたユーザーたちに、実用性に優れたワゴンとして使われることを想定しているのです。
通常モデルは、2列シート+広大なラゲッジスペースというパッケージングで、セダンやハッチバックはもちろんのこと、同等のボディサイズのSUVと比べても、より多くの荷物を積めるのが人気の理由。オーナーの中には、キャンプを始めとするアウトドアレジャーを楽しんでいるユーザーが多いのも納得です。
その上、スライドドアを組み合わせているのも、ファミリーユーザーから高い支持を集めるポイントのひとつでしょう。
そんな「ベルランゴ」のマイナーチェンジモデルは、まずシャープさを増した顔つきが目を惹きます。フロントグリルやヘッドライトなど、シトロエンの最新デザインエッセンスに基づいた新しい顔つきとなりました。
ちなみに、フロントグリルの中央に添えられた新しいシトロエンのエンブレムは、創業時のロゴをオマージュしたものだそうです。
これまでの「ベルランゴ」は、犬に例えると“ブサかわ”系の愛嬌ある顔つきでしたが、新型はキリっと引き締まって端正に。印象がかなり異なるので好みが分かれるところですが、カッコよさなら断然、新型です。
インテリアや装備類も進化しました。ダッシュボードはブラックで統一され、シフトセレクターはダイヤルからスイッチ式へ。中央のタッチスクリーンは8インチから10インチへと大型化し、スマホのように通信でアップデートし、成長していくソフトウェアが搭載されたこともトピックです。
スマホを接続すればナビとして機能し、従来どおりApple CarPlayやAndroid Autoにも対応。新型では接続するUSBポートがType-Cとなったこともポイントです。
ドライバーの正面にあるメーターもアナログからデジタルとなり、ステアリングの形状も楕円形となるなどアップデート。ちなみにステアリングにはヒーターも内蔵されているので、これからの寒い日の運転も快適です。
そんな新型「ベルランゴ」における大きな進化が、運転支援機能の性能向上です。まず、ミリ波レーダーを追加したことでACC(アダプティブクルーズコントロール)の性能が格段に向上。高速道路での渋滞中は、停止後3秒以内なら自動発進が可能となるなど利便性もアップしています。
車線内を維持しながら走るステアリングアシストでは、右寄りや左寄りなど、車線内をドライバーの好みの位置でトレースしてくれるレーンポジショニングアシスト機能が追加されています。
また、これまでステアリングコラムから生えたレバーについていたACCなどの操作スイッチがステアリング上に移り、操作性がアップしているのも歓迎すべきところでしょう。確実に使いやすさがアップしましたからね。
●ライフスタイルと照らし合わせながら選びたい「ベルランゴ」
さて、そんな「ベルランゴ」ですが、日本で売っているモデルは2列シート仕様だけではありません。実は上陸当初にはなかったロングボディの3列シート仕様「ベルランゴ・ロング」が、2023年1月に追加されています。
しかも今では、「ベルランゴ・ロング」の方が日本での売れ筋になっているのだとか。つまり、3列シートとスライドドアを備えたミニバンとしてこのモデルを選んでいる人が多いということでしょう。
確かに「ベルランゴ・ロング」は、国産ミニバンのヒエラルキーを無視した個性派として選びたくなる1台です。キャンプにもよく似合いそうですね。
ただし、これから選ぼうという人には伝えておかなくてはいけないことがあります。それは、国産ミニバンと同じだと思って買ってはいけない、ということです。
例えばスライドドアは、日本だと軽自動車のスーパーハイトワゴンでも採用車の多い電動式ではありません。これまで電動スライドドアつきのモデルに乗っていた人が「ベルランゴ」に買い換えるのであれば、その辺をしっかり認識しておく必要があります。
また「ベルランゴ・ロング」のサードシートは、国産ミニバンとは設計思想が異なります。第一に、効率よくシートを畳むことができません。サードシートのアレンジは、乗車状態を除くと「背もたれを前へ倒す」もしくは「シートをまるごと外す」の二択で、前者だと存在感がかなり大きく、後者だと手間が面倒という印象。
また、スペース的に問題はないものの、サードシート付近はフロアが高くなっており、乗員の着座姿勢は体育座り気味。着座姿勢に優れる背の高い国産ミニバンとはこの辺りも異なります。
とはいえ、着座位置自体が高めなので、前方の見晴らしがいいのは美点。開放感もあります。
また、セカンドシートは背もたれの角度が立ち気味な上に、そのリクライニング調整もできません。この辺も、リラックスできることを重視する国産ミニバンとはちょっと思想が違います。
一方、左右と中央とで完全に3分割されたシートは、チャイルドシート(ジュニアシート)を3脚装着できるなど、国産ミニバンにはないメリットがあるのもまた事実。小さな子どもが3人いる家ファミリーなどは、これだけで選ぶ理由となるかもしれません。
このように「ベルランゴ・ロング」は、ミニバンではあるものの、国産ミニバンと考え方が異なる部分がいくつかあり、快適性という面でも物足りない部分があるのは否めません。しかし、機能性は秀逸です。
例えば、サードシートを外してたくさんの荷物を積んで遊びに出かける、なんていうシーンでは、国産ミニバン以上に“使える相棒”となるでしょう。元々、荷物運搬車だけに、積載を中心としたパッケージングは極めてハイレベルなのです。
そんな国産ミニバンとの違いをしっかり把握し、自分自身のライフスタイルと照らし合わせながら選ぶのが、「ベルランゴ」オーナーとしての“満足への道筋”だというのは間違いありません。
出自は商用車ながら走りの部分にも抜かりはなし
そんな「ベルランゴ・ロング」ですが、実はもうひとつ、国産ミニバンにはない魅力があります。それはドライバビリティ。すなわち運転感覚です。
背の高いバンにもかかわらず、「ベルランゴ・ロング」でのコーナリングは実に安定していて、運転していて楽しくなってくるのです。
決してサスペンションが硬くしまっているわけではありませんが、車体が傾く速度を抑えた不思議なロール感であり、粘ってよく曲がる感じがなんともいえず心地いい。
また高速道路を走ると、車体の安定感も直進安定性も驚くほど高く、どこまでも走り続けたくなる不思議な感覚になるほどです。
特に何百キロも移動するようなロングドライブでの疲労の少なさは素晴らしく、また短い距離でも「なんだか運転疲れがない」という不思議な感覚を味わえるに違いありません。
ちなみに、パワーユニットはマイナーチェンジを経ても不変で、直列4気筒ディーゼルターボエンジンは1.5リッターと小排気量ながら、最高出力130ps、最大トルク300Nmを発生。大きく重い(1660kg)「ベルランゴ・ロング」をグイグイと加速させてくれるので、頼もしい限りです。
* * *
商用車としてつくられたモデルとはいえ、こうした走りの部分も手を抜かないのはお国柄ということなのでしょう。
こうした走りのよさも、国産ミニバンとはひと味違う「ベルランゴ」シリーズを選びたくなる魅力といえそうです。
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みんなのコメント
文中に後期型のほうがカッコ良いと書かれているけど、
中国あたりでパクった車みたいなみすぼらしいデザインだと思う。