カローラ・レビン、スプリンター・トレノは1970年にフルモデルチェンジした2代目カローラとスプリンターへ、1972年に追加されたスポーティグレード。ベースのカローラ/スプリンターは1.2リッターと1.4リッターエンジンを搭載するファミリーセダンで、ラインナップには2ドアクーペも含まれていた。このクーペボディへセリカ用の1.6リッター直列4気筒DOHCである2T-G型エンジンを移植して生まれたのがレビン/トレノなのだ。
その成り立ちはモータースポーツベースという位置付けで、この当時流行したオーバーフェンダーを装備することも特徴。4メートルを切る全長でしかなく車両重量は855キロと小さく軽いボディにハイオク仕様で115psを発生する高性能エンジンを搭載していたのだから、その速さは圧巻といっていいほど。ワイドタイヤとLSDを装備することで、ジムカーナやラリーでは無敵の存在と言ってよかった。
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大衆車であるカローラ/スプリンターとはいえ、クラスが上のスポーツカーをラクラクとパスできるほどの実力は新車当時から大いに支持された。’70年代に強化された排出ガス規制の後でも人気が衰えることはなく、むしろ高性能車が一時的になくなった’70年代後半から’80年代前半は後継モデルより人気があったほど。
’83年にはAE86が発売されているが、軽くてパワフルなTE27には根強いファンが存在した。今回紹介する前期型レビンは、オーナーの荒川達也さんが’86年に購入したもの。年代的にAE86も選べたわけだが、あえて古いTE27を選んだのは前述のような理由からだ。その当時でも一般的な中古車販売店に並んでいたそうで、21歳だった荒川さんにとっては光り輝く存在だったはずだ。
前期型はフロントのデザインが異なる。TE27のスタイルで最大の特徴となるのが前後のオーバーフェンダー。とはいえ1972年式だから購入時でも14年落ちと古いクルマだったわけで、当然のようにトラブルを数多く経験している。トラブルが重なると普通なら数年乗って手放してしまうところだが、荒川さんは違った。ボディを一度、全塗装するとともにエンジンのオーバーホールを実施することにされた。長く乗れるように手を入れていくことを決めたのだ。
セリカ用1.6リッター直列4気筒DOHCの2T-G型エンジンをカローラ・スプリンターに移植したのがTE27だ。エアクリーナー仕様にしたことで迫力の吸気音を楽しめる。チューニングしてあるためラジエター前にオイルクーラーを増設。最初にエンジンをオーバーホールした後もチューニングとともにオーバーホールを繰り返している。最初こそプロにお願いしたオーバーホール作業だが、なんとその後は荒川さん自身で行うことにされた。しかも4回も。長く乗るうちに色々とやりたいことが増えるのだろう、その都度エンジンを分解しているのだ。
その結果、今では定番の1750ccに排気量を拡大するとともに、吸排気バルブやカムシャフトも変更することになった。ノーマルでも十分な速さを備えるTE27だが、長く作り続けられたうえに高性能であったことから社外パーツが今でも豊富に揃う。まして’80年代や’90年代であれば今のように旧車のパーツが高騰する前だから、より手軽にチューニングができたことだろう。するとアレコレと試してみたくなるのが人情というもの。
ステアリングをナルディ製に変更したインテリア。シンプルで視認性の高いメーターパネル。フルノーマルで維持されているTE27は逆に数が少なく、荒川さんのように見えない部分をモディファイしてある個体が非常に多いことも特徴だ。外装はアルミホイール以外ノーマルを保っているし、インテリアに目を向けてもステアリングやシートなど定番部分だけ変更してある程度。これは言い換えればそのまま乗っても楽しいクルマだから、あまりカスタムする必要がないということ。
3連メーターはノーマルのものがそのまま残っている。運転席だけBRIDEのリクライニングシートに変更している。古いクルマゆえにステレオを変えたりスマホが使えるようにとシガーライターソケットを増設したりといった、現代の使い方に合わせたモディファイがメイン。だが、シートの後ろにはロールバーが装備されていて、古いクルマらしくボディ剛性が足りない部分を補ってある。エンジンルームのストラットタワーバー同様に、こうしたボディ補正は旧車を乗るなら考えていい部分。
乗っているとボディが捩れる感覚は誰でも味わうことになるので、適度に補正してあげるとエンジンパワーを引き出しやすくなるし、意外にも乗りやすくなる。エアコンやパワステはないけれど、スポーツカーとはどうあるべきかを教えてくれるような存在であるTE27は、ぜひ体感していただきたい旧車の筆頭なのだ。
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