毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
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しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ カレン(1994-1998)をご紹介します。
文/伊達軍曹、写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】バブル崩壊期に直面してしまった徒花か トヨタ カレンをギャラリーで見る
■苦戦続くビスタ店救済のため登場した6代目セリカの姉妹モデル
その昔トヨタが持っていた5つの販売チャネルのなかではもっとも歴史が浅く、販売台数でも苦戦していた「ビスタ店」のために作られた、6代目セリカ(T200型)ベースとするモデル。
しかし消費者ニーズの変貌により販売は低迷し、結果として1代限りで生産終了となった2ドアスペシャルティクーペ。
それが、トヨタ カレンです。
トヨタ カレン(1994-1998)。当時のCM、永瀬正敏が朝焼けの中パンを頬張りながら歩いてるとショーウィンドーにディスプレイされたカレンに目が留まる…を覚えている人も多いかもしれない
何かと苦戦していたビスタ店のための専売モデルとして1994年1月に発売されたトヨタ カレンは、カテゴリー的には「スペシャルティクーペ」または当時の言葉で言う「デートカー」に属するFFクーペでした。
要するにホンダ プレリュードのような立ち位置にあった車です。
そのメカニズムは、ほぼ同時期にデビューした6代目セリカと同一で、エンジンはハイメカツインカム(高効率かつ低価格なDOHC)の3S-FEと、スポーツツインカムである3S-GEの両2L直4、そして廉価グレードのTSには1.8L直4の4S-FEが搭載されました。
ハイメカツインカム搭載のXSには4WSを採用した「XSツーリングセレクション」というグレードもあり、スポーツツインカムを搭載したZSにはスーパーストラットサスペンションを採用した「ZSスポーツセレクション」というグレードも用意。
トランスミッションは4速ATまたは5MTで、駆動方式は前述のとおり全車FFです。
リアビューはほぼ6代目セリカそのものと言える。なおカレンという名前は「時勢の、流行の」を意味する英語「Current」から命名された
同時期のセリカとの違いは、「車名と販売チャネルが違う」というのはまぁ当然として、T200型セリカが異型4灯の特徴的なヘッドランプを採用したのに対し、カレンはオーソドックスな2灯式。
そしてセリカのボディ形状が2ドアハッチバックであったのに対し、カレンは同じ2ドアでも「クーペ」であるという違いがありました。
以上の基本情報からわかるとおりトヨタ カレンは、例えばセリカGT- FOURのようなゴリゴリのスポーツモデルではなく、日産シルビアのような「FR車ならではのハンドリング」を売りにする車でもありません。
あくまでも「デートカー」的ニュアンスの一台を求める比較的若年の男性や、かつて米国で「セクレタリーカー」と呼ばれたジャンルの車を求める女性ユーザーに売ることを念頭に置いた作りだったのです。
しかしカレンはその両ターゲットにも残念ながら刺さらないまま、同時期のセリカより約1年早い1998年9月に生産終了となり、翌1999年8月には販売のほうも終了となりました。
■1代限りで姿を消したカレン その運命は登場時に決まっていた?
トヨタ カレンが1代限りであえなく消滅した理由。それは、カレンが世の中に出た1994年にはすでに、狙っていた「どじょう」が「柳の下」にはいなかった――ということです。
カレンのベースであるセリカそのものが、もともとはゴリゴリのスポーツカーではなく「スペシャルティクーペ」的な立ち位置でした。
カレンのベースとなった6代目セリカ(1993-1999・写真はGT-FOUR)。カローラ店で扱われ、モータースポーツにおけるベース車両としても長くファンを楽しませた。2006年・7代目までその系譜は続く
しかしモータースポーツの世界で4WDターボの「セリカGT-FOUR」が名声を高めていくにつれ、いつしかユーザーは「GT-FOURにあらずんばセリカにあらず!」的に感じるようになっていきました。
セリカGT-FOURは確かに素晴らしいスポーティカーですが、自動車メーカーというのは硬派なスポーツカーばかりを作るわけにもいきません。
そのためトヨタは、前述した「ビスタ店の販売状況を改善させるため」という理由と同時に、「モデルラインナップの裾野を広げるため」という理由でも、比較的ライトな自然吸気FFクーペであるカレンを登場させたのです。
人々が、「デートカー」あるいは「セクレタリーカー」的なニュアンスで楽しく使ってくれることを念じながら。
しかしカレンの開発企画が始まった頃は、そういった車(硬派スポーツクーペではないクーペ)の需要が確かにあったわけですが、カレンが実際に発売された1994年には、世の中のムードとニーズは変化していました。
いわゆるバブルの崩壊と、それに伴う嗜好の変容です。
インパネ。マイナーチェンジ(1995年10月)や一部改良、ツーリングセレクション(XS)の販売などテコ入れが図られたが、販売が好転することはなく、1代限りでひっそりと姿を消すことになる
俗に言う日本のバブル景気は、1990年初頭からの株価暴落と、同年3月に当時の大蔵省が通達した「総量規制」によって実質的には崩壊していたわけですが、世の中全般ではまだまだ好景気ムードがしばらく続いていました。
しかし1990年代も後半になると北海道拓殖銀行や山一證券などの大手金融機関がバタバタと倒れ、のほほんとしていた一般国民も「これは完全にヤバい!」と気づいたわけですが、カレンが登場した1994年の前年である1993年にはすでに有効求人倍率が1を下回り、俗に言う就職氷河期もなんとなく始まっていました。
そうなると、多くの若年男性は「デートカーうんぬんとか言ってられない。というか車を持つどころじゃないし、もしも持つなら、もっと実用的な車にするよ!」と思うようになります。
もちろん車好き、運転好きの若い男性は相変わらずクーペが好きでしたが、彼らの数はそう多くはなく、しかもそういった層が好むのは「FFのデートカー」では決してなく、「FRのクーペ」でした。
そして、あくまで一般論として経済観念がもともとしっかりしている場合が多い女性ユーザーは、当然のようにセクレタリーカー(小ぶりなクーペ)ではなく、燃費が良くて比較的低価格な箱型の車を選ぶようになります。
トヨタ カレンは決して悪い車ではなかったと思いますが、このようにして「出る幕がなくなった」という状況になってしまったのです。
そしてベースとなったトヨタ セリカも、7代目のT230型で4WDターボのGT- FOURを作ることをやめて「デートカーへの回帰」を図りましたが、こちらも不発に終わり、結果としてセリカ自体が消滅してしまいました。
■トヨタ カレン 主要諸元
・全長×全幅×全高:4490mm×1750mm×1310mm
・ホイールベース:2535mm
・車重:1160kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1998cc
・最高出力:140ps/6000rpm
・最大トルク:19.0kgm/4400rpm
・燃費:12.0km/L(10・15モード)
・価格:194万2000円(1994年式 XS 4速AT)
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みんなのコメント
よほど尖ってるモノが無ければ売れなくなっていた。
出した時期が良くなかった。