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「砂漠に強いホンダが帰って来た!」 31年ぶり、ダカールラリー悲願の総合優勝達成

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「砂漠に強いホンダが帰って来た!」 31年ぶり、ダカールラリー悲願の総合優勝達成

ホンダ、ダカールラリー復帰後8年目にして勝利を掴む

第42回となるダカールラリー2020で、ホンダはついに優勝した。ダカールラリー復帰後8年目、パリ・ダカからだと1989年以来となる31年ぶりの優勝だ。
2020年からラリーの舞台は、南米大陸から中東のサウジアラビアに移行する大きな変更があった。サウジアラビア西側の紅海沿岸からスタートしたが、コースの大半は内陸部を中心としたルートで、その約8割は砂漠であり、設定された12のスペシャルステージは最長546km・トータル5100km、ラリー全体の総走行距離は約7800km(前年から約2000kmも総走行距離が伸びた)と、これまでの大会とは大きくその内容を変えていた。

【画像ギャラリー11点】ダカールラリー2020を戦い抜いたホンダチーム

同時にラリーの主催団体である「ASO」のレースディレクターには、四輪&二輪で豊富なダカール参戦経験のあるデビッド・カステラ氏が新たに就任しており、これによってオーガナイズ面がより充実すなるなど大きな変化があった。このようなラリー環境のドラスティックな変化が、ホンダチームにとっての追い風にもなったはずだ。

チーム代表HRC本田太一氏が分析する勝利の要因

戦いを終えたMonster Energy Honda Teamのチーム代表である本田太一氏は言う。
「初めてのサウジアラビア開催と言うことで文化・風習の違い等、当初はかなり懸念していた部分もあったが、その点ではまったく問題がなかった。サウジアラビアの都市部は非常に近代的で、ラリーに対しての理解もあった。
また、極端に言うと南米でのラリーは運営がおおざっぱな部分もあったし、フランス語やスペイン語が中心で英語が使いづらいという言語の問題もあったが、まずその部分が大幅に改善された。ラリー経験者のディレクター就任よって、オーガナイズ面が格段にクリアになったのもよかった」

「南米のラリーではルートがすでに“道”として定まっていることも多かったが、サウジアラビアの広大な砂漠には砂以外、何もない。そういった過酷な環境下では、ルールや約束事の遵守がシビアに結果に反映されるので、誰もがよりそれを意識して行動したのがよかったと思う。
これらラリー環境の大きな変化が、ホンダチームに安定した展開をもたらしてくれ、例年になくチームタクティクスとしてのプログラムの消化が順調に行えた。これが大きな勝因だと思っている」

このように、例年では必ずと言っていいほどホンダに発生した、マイナートラブルやヒューマンエラーが少なく、運営面のミスが少なかったのである。これとは対照的に、ライバルのKTMにペナルティが目立ったことも事実。
また、2018年のような不可解な主催者判断やレギュレーション変更もなく、ラリーの舞台がアフリカの砂漠に近いステージに帰って来たことで、ダカールラリーは新たなフェイズに突入したようだ。

結果的に、今年のホンダは12あるスペシャルステージのうち6つで勝ち、ステージ3から最終ステージまで総合トップの座を明け渡すことなく、ラリー折り返しのステージ6で総合トップに立ったリッキー・ブラベックがそのまま逃げ切る形で総合優勝を果たしたのだ。
ただ、2位のハスクバーナに約16分と言う(ラリーでは)僅差での勝利だった。

「ブラベック選手は、さらにライダーとしての能力を向上させており、走りのコントロールや、その日ごとの調子を考えつつライバルの様子を見ることなど、非常に計算高い走りをしてくれたのも勝因のひとつ」と本田氏は言う。

ブラベックは2019年もエンジントラブルで脱落するまではトップを走っており、ライダーとしての実力は十分だ。しかし、ホンダチームにおいては、今年のダカールラリーが何から何までが順調だったわけではなかった。
前大会において発生したエンジントラブルの対策・解決を図ったはずであったが、今大会の中盤ステージ6ではエンジン交換が必要なトラブルが発生し、さらにもう一基にもトラブルが発生している。2週間のラリー期間中にエンジン交換が2回というのは、長距離ラリーでは決して珍しいことではないが、勝ちを狙うチームにとっては大きな問題である。

「前年の問題を解決して翌年のレースに臨んでも、何かしらのトラブルが起きる。前回は終盤までトップを走ったブラベック選手のエンジンが壊れてしまった。今年もリザルト上では目立たないものの、バレダ選手がエンジン交換によるペナルティを受けている。勝てたからいいようなものの、このような問題が出てしまったことは大きな問題であり、油断することなく次に向けてしっかりと準備をする」と本田氏。

参戦マシンであるCRF450RALLYは2014年から投入されたプロトタイプカテゴリーのマシンで、現在のところ詳細は公表されていない。
そもそも今のマシンは2013年の復帰第一戦での力不足を目の当たりにし、KTMを凌ぐトップスピードの実現を主眼に開発されたマシンの進化・熟成形である。ここに来てトップスピードにおけるアドバンテージはほぼ消滅したものの、操縦安定性やハンドリング面ではまだ優位にあると本田氏は言う。

MotoGPマシン RC213Vで培った技術が生かされている?

また、今年のマシンでは(主に熱関係を意識した)耐久性と燃費の向上が大きなテーマだった。
「MotoGPで普遍化しているTBW(スロットルバイワイヤー)を採用したことは大きな武器になっている」そうだが、果たして全開運転時にTBWの効用あるのだろうか。
また、燃費を向上させるために効率的な燃焼を促すには熱的安定性が必要だから、冷却方法にも工夫が必要かもしれないし、高回転化を狙ってビッグボアにすれば燃焼効率の保証も難しい方向に傾く……。燃費以外にも1Lを下回る程度と思われるエンジンオイル容量で、全開時間の長い砂漠において(加えて砂漠はリヤタイヤの空転でオーバレブする状況も少なくない)十分な潤滑をどう実現しているのかなど、エンジンの作りに関して興味は尽きない。
同時に車体に関しても「モトクロスのノウハウを活かして、細かな工夫はしている」というフレーム構造や仕様がどのようになっているのか。
少なくとも次回2021年の大会でもホンダが連勝することで、その詳細が明かされる可能性は高まるのではないだろうか。

レポート●関谷守正 写真●ホンダ/モーサイ編集部 編集●モーサイ編集部・上野

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