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ジェイテクト 自動運転関連技術の本格開発 リチウムイオン・キャパシター、パワースーツなど新規分野も拡大

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ジェイテクト 自動運転関連技術の本格開発 リチウムイオン・キャパシター、パワースーツなど新規分野も拡大

2017年11月27日、電動パワーステアリングやベアリング、工作機械を製造するジェイテクトが、メディア向けの事業説明会を開催した。その中で、今後の電動パワーステアリングの展開や自動運転、EV化時代に向けての開発、そして新規分野への意欲的な挑戦は興味深いものだった。

■生産拡大を目指すラック・パラレル式電動パワーステアリング

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ジェイテクトは、電動パワーステアリングを世界で初めて実現した歴史を持ち、現在では世界ナンバーワンのシェアを獲得している。従ってワールドワイドに製造工場を展開しているが、大型乗用車、SUV向けのラック・パラレル(ベルトドライブ)式の電動パワーステアリングでは最後発なのである。

その理由は、同社は大型乗用車向けにラック同軸式の電動パワーステアリングをラインアップしていたために、ラック・パラレル式では出遅れたのだ。だが、2016年にレクサスLC用、2017年にはカムリ用を出荷し、ようやくラック・パラレル式電動パワーステアリングの市場に参入した。

従来のラック同軸式の電動パワーステアリングはラック軸が太くなるため、多車種への展開が難しかったが、モーターをラック軸と並行に置くラック・パラレル式はモーター位置を変えることができ、多車種に転換が可能になる特徴がある。

このラック・パラレル式は日本(花園工場)に加え、アメリカ・テネシー工場でも生産が開始されている。さらに2019年初頭には中国・天津工場でも生産を開始する計画で、この3工場を稼働させることで2020年には年産250万基の生産を目指し、世界各地の自動車メーカーに供給することにしている。

このラック・パラレル式電動パワーステアリングは、後発だったため先行した他社製品をベンチマークとして開発され、これら先発製品を超える低摩擦、高精度のステアリングシステムになっている。今後の高度運転支援システムや自動運転のためには、大きなステアリング負荷に耐えることができる、このラック・パラレル式の重要度はより高くなると予想されている。

■高度運転支援システム、自動運転時代に向けて

ジェイテクトは、今後の自動運転に対応したステアリングシステムの開発にも着手している。レベル3の自動運転で求められる、ドライバーが自らの意志でステアリングを操作しているかを判定する技術として、自動運転から手動運転へのシームレスな移行、そして路面の変化やクルマの姿勢の変化があっても正確に応答する高精度な舵角制御技術、路面からの負荷を正確に判定する技術などが今後の開発の課題となっている。

また大型車、バスなどでは、大トルクが必要なので今後も油圧パワーステアリングが主流と想定されるが、これら大型車用の高度運転支援システムや自動運転化を実現するために、コラム部に同軸アクチュエーターを配置したタイプを開発している。このアクチュエーターはドライバー、あるいは自動運転制御によるステアリングの操作に応じて油圧パワーステアリングを作動させる役割を果たすシステムだ。

こうした高度運転支援システム、自動運転化に伴いステアリング制御には、より高度な制御が求められるが、ジェイテクトは2017年11月に「IT開発センター秋田」を開設している。ここではより高度な運転支援システムや自動運転に向けたステアリング制御関連のソフトウェア技術の開発を行なうことになる。

■リヤアクスル用モーターの開発

ジェイテクトの前身は、豊田工機でオンデマンド4WD用電子制御カップリング(ITCC)を開発し、現在は日本はもとより、グローバルでも高いシェアを持っている。だが今後はクルマの電動化に合わせてオンデマンド式の電動リヤアクスル(E-AWD)の急激な増大が想定されているという。

そのためジェイテクトは、電動リヤアクスル用のモーター、インバーター、アクチュエーター、ECUなどの開発を加速させている。さらに、電動化だけではなく内燃エンジンのダウンサイジング・ターボ化、近未来のもうひとつの環境対応車の燃料電池車に向けて、製造機械の開発・販売も行なっている。例えばターボ軸の精密研磨機、リチウムイオン電池を製造するための専用機械、FCVの水素タンク製造用の機器などもラインアップしている。

■リモコン調整、左右独立が可能のパワースーツ

ジェイテクトは、新たな分野も意欲的に開発している。その筆頭は作業者の筋力を電動アシストするパワースーツだ。将来的には少子高齢化、労働人口の減少、女性の社会進出などの社会変化を見据え、重量物を扱う作業での作業者の負担を軽減することを目指すことをコンセプトとしている。

そのために、ジェイテクトが持つ電動アシスト技術、ベアリング技術、小型軽量化技術などを総動員している。また同社は製造会社のため、生産現場で実験を繰り返し作業者の生の声をフィードバックすることで、製造現場で働く人のニーズに合った、しかも動きやすいパワースーツとなっている。

この試作されたパワースーツは最大10kgのアシストが可能で、リモコンでアシスト力を調整できることや左右のアシストが独立して作動させることができる。また各種サイズを揃えたベスト型は、身体へのフィット感も高めていることも特長だ。

パワースーツそのものはすでにベンチャー企業や電機メーカから発売されており、ジェイテクトは後発となるが、使いやすさや性能などで十分に進出可能と考え、2018年の発売に向けて最終的な開発・熟成中というわけだ。

■リチウムイオン・キャパシター

もうひとつ大きな注目を浴びているのが、新開発された高耐熱リチウムイオン・キャパシターだ。ジェイテクトは、2017年9月にBR蓄電デバイス事業室を新設。この新部署が担当し、開発した高耐熱リチウムイオン・キャパシターを2019年の量産化を目指している。

この高耐熱リチウムイオン・キャパシターは、電動パワーステアリングの大型車への適用を前提に開発している。大型車の電動パワーステアリングには12Vの電源では出力不足であり、蓄電用のキャパシターと充放電コントローラーを従前の電動パワーステアリングに付加することで、車両電源の12Vにキャパシターからの6Vの電圧を加えて18Vの高出力化をし、電動パワーステアリングの適合範囲を拡大する狙いがある。

また、今後の自動運転時にはメイン電源が遮断された状態でもクルマを安全に停止できるように、電動パワーステアリングの失陥時の非常時の作動が求められる。そのため、このリチウムイオン・キャパシターは非常時用のバックアップ電源としても使用できるなど、今後の需要は大きいのだ。

従来のリチウムイオン・キャパシターは耐熱性が低く、クルマに搭載するためには要求されるエンジンルーム内で-40度から125度、車室内で-40度から85度という環境温度条件に適合できなかった。今回ジェイテクトが開発したリチウムイオン・キャパシターは-40度~85度という条件をクリアした高耐熱性を持つため、車室内に装備可能で、出力電圧を制限すれば105度まで耐えられるので、幅広い車両への搭載が可能となった。

この新しい高耐熱リチウムイオン・キャパシターが発表されると、自動車業界だけではなく、工作機械、建設機械、鉄道、発電装置、交通インフラなどさまざまな分野からの反響が大きく、こうした自動車産業分野以外へのビジネス展開にも大きな期待がかけられている。

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