■人気な「5ナンバー車」が初の3割割れ
2018年も年間の新車販売ランキングでは、依然として日産「ノート」やトヨタ「アクア」に代表される5ナンバーサイズのコンパクトカーが上位を占めています。
日本のコンパクトは「ノート」「アクア」の2強時代? なぜ「フィット」は加われないのか
過去を見ても、日本の道路事情や駐車場サイズからも、「5ナンバー車」は販売面でも好調を続けていましたが、最近ではその傾向が変化しています。
2018年の乗用新車販売台数において、「5ナンバー車」が初の3割割れとなり、サイズの大きな「3ナンバー車」の割合が多くなっています。なぜ、日本の道路事情に合った「5ナンバー車」の販売が落ちているのでしょうか。
この「5ナンバー/3ナンバー」には、さまざまな条件がありますが、主な違いとして、全長4700mm/全幅1700mm/全高2000mm)のボーダーラインが存在。このサイズを超えると「3ナンバー」、この数値以下だと「5ナンバー」となります。
そのため、道路幅が狭い場所が多く、運転に不慣れなユーザーにも扱いやすいように日本の自動車メーカーは、「5ナンバー車」を市場に投入してきました。
日本自動車工業会によると1993年の「5ナンバー車」販売台数は、約254万台で全体の65.3%を占めています。しかし、2018年は約131万台となり半減近くまで落ち込んでいます。
また、「3ナンバー車」においては、1993年時点で全体の約16%。2018年には一転し、「5ナンバー車」を超える約158万台を記録しています。
なぜ、「3ナンバー車」が好調な販売を見せているかというと、自動車メーカーから販売される新型車がモデルチェンジをする度にボディサイズを大きくし、3ナンバー化しているからです。
2018年に発売されたトヨタ「カローラ スポーツ」は、国内販売されるカローラシリーズとして、53年の歴史上初の「3ナンバー車」。また、同年に発売され4年ぶりの復活と話題となったホンダ「インサイト」も3ナンバー化しています。
これは、先進安全装備の充実化やボディの衝突安全性向上などユーザビリティを目的としたことによる部分と自動車メーカーの開発・販売を考えた場合のボディ共通化やグローバル戦略が理由にあります。
自動車メーカーのメリットとしては、ボディを共通化することで、開発コストを抑えつつバリエーション豊富なモデルラインナップの展開可能です。また、グローバルで販売するモデルには、日本の道路事情だけを考慮するわけにはいきません。
一方、輸入車メーカーの日本におけるブランド確立も「3ナンバー車」が普及した大きな要因です。「5ナンバー車」が好調だったころ、輸入車は手が届きにくい存在でした。
しかし、最近ではさまざまな輸入車ブランドが車種のラインナップを拡大し、手が届きやすい価格帯モデルも登場し、日本国内でのシェアも年々拡大しています。
■「5ナンバー車」にせまる軽自動車市場
「5ナンバー車」の減少は、人気の軽自動車も影響しています。その理由は、「5ナンバー車」より、購入金額、税金、維持費といったお金の面やボディサイズが小さいことです。
2018年の軽自動車販売台数は、2017年と比べて3.6%増の約150万台と2年連続で増加しています。とくに、ホンダの「N-BOX」は乗用車の販売台数上位を死守し、人気のモデル。
また、軽自動車には、『手軽さ』という最大のセールスポイントがあり、その流れで近年のアウトドアや車中泊といったブームに便乗した新型モデルが発売されるほどです。
こうした背景について、3ナンバー化した「インサイト」や人気軽自動車の「N-BOX」をラインナップにもつ、ホンダディーラーのスタッフは次のように話します。
「以前までは、『5ナンバー車』は販売面でも主力でした。しかし、軽自動車人気が出ていくにつれて、『5ナンバー車』の需要が軽自動車に流れていと思います。また、全体的にクルマの大型化が進むことで、昔よりも『3ナンバー車』が一般化して、“大きい”というイメージを持たなくなったというユーザーもいます。
それには、クルマの死角をカバーするカメラやセンサーの標準化も影響しており、クルマが運転しやすくなったという点も大きいです」
※ ※ ※
誰もが手の届きやすい「軽自動車」と、サイズも大きく高級感あるクルマが多い「3ナンバー車」。クルマ業界以外においても、最近は『中途半端なもの』が淘汰される傾向にあります。「軽自動車」と「3ナンバー車」に挟まれ、現代の「5ナンバー車」は中途半端なサイズになってしまったのかもしれません。
今後の国内市場では、多様化するニーズに応える施策をしつつ、さらなる二極化にも対応したモデルが生き残るのかもしれません。 【了】
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