トヨタの新型「クラウン・セダン」に設定された、FCEVバージョンの快適性とは? 小川フミオが後席を中心にリポートする。
昔のクラウンを目指す
世界でオンリーワンの1台──新型MX-30ロータリーEV試乗記
パーソナルにもビジネスにも、と、謳うのが、トヨタの新型クラウン・セダンだ。2023年11月に、ハイブリッドと、FCEVが同時に発売された。
FCEVとは、フューエルセル・エレクトリックビークル。燃料電池車と訳され、つまり、水素を燃料に電気を作り、モーターをまわして走る。バッテリー駆動のBEVとはまた違うEVである。
今回のクラウン・セダンFCEVは、3000mmと長いホイールベースと、5030mmの全長を持つ4ドアボディを組み合わせている。
スタイリング的にはファストバックだけれど、さすがにショーファードライブの需要を考えているだけあって、トランクは独立式となっている(そのほうが静かだし)。
私は、後席に座るのなら、EVはいい、と、思っている。静かだし、車体が重いぶん乗り心地がよくなるからだ。そこで、クラウン・セダンFCEVでもさっそく後席に乗りこんでみた。
室内はさきに触れたとおり、3000mmのロングホイールベースの恩恵で、前席と後席の前後長に余裕がある。室内はブラックのレザー張りで、足にふかふかと感じられるカーペットが敷いてある。
乗降性は高く、見た目はクーペライクだけれど、頭をそれほどひっこめずに乗り降りができるのは嬉しい。
後席シートは、クッションがたっぷりしていて、身体がうまいぐあいに収まる。独立タイプの足のせ(フットレスト)をフロアに置けるので、落ち着いた気分で乗っていられる。
なにより感心するのは、乗り心地。基本的には「GA-L」といって、トヨタ「MIRAI」と基本的には共通の、後輪駆動用。ただし、設定がまったく違う。
「昔のクラウンらしい、ゆったりした乗り味を出したかった」と、足まわりを担当したトヨタ自動車のMSプラットフォーム設計部の技術者は教えてくれた。ハイブリッド版と同じ考えだ。
FCEVは2tの車重もうまく活かしていると感じられる。前席にいても後席にいても、自分の目線は動かず、姿勢はフラット。いい感じの乗り心地だ。
車外からのノイズは、すくなくても法定速度内ではきれいにカットされている。これもクオリティを高める。
現行のMIRAIは、ドライバーズカーとして開発されているのに対して、クラウンFCEVは後席乗員の存在を強く意識して開発されたという。
しかし、運転してもじつはとてもいい。アクセルペダルの踏み込みに対してのトルクのつきかたがとても自然だし、操舵感はやや重めであるものの、これもまたある種の重厚感と感じられなくもない。個人的には好みなのだ。
FCEVはとくにショーファードライブを意識したモデルかもしれないが、自分で楽しむために乗るのも、おおいにアリだと思う。モーター駆動のいいところが、しっかりある。
ただし、MIRAIと同様、FCEVの後席は床が少し高い。水素タンクを搭載するFCEVだけに、避けられないだろう。脚を伸ばした姿勢で乗ることをお勧めする。
ハイブリッドが730万円であるのに対して、FCEVは830万円。トヨタでは、事業主の場合、債務と見なされなかったり、諸費用を月額利用料に一本化できたりするサブスクプラン「KINTO」を勧めている。そういうのも考慮すべき車両なのかもしれない。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
全幅がかなり広がったから駐車スペースに
停めにくくなったね。