スバルが自社のAWD(オールホイールドライブ=4輪駆動)モデルを雪道で走ってテストするメディア向けの取材会を実施した。場所は日本の中でも一番の豪雪地帯である青森県・酸ヶ湯(すかゆ)温泉周辺。過酷なスノーコンディションの中、クロストレックとフォレスターが見せたAWD技術の実力とは。
青森市内から酸ヶ湯温泉まで、日本有数の豪雪地帯が舞台に
今回の取材会の行程は、青森駅近くの駐車場をスタート地点として、まずはクロストレックに乗って日本一の豪雪地帯として知られている酸ヶ湯(すかゆ)温泉を目指す。そして酸ヶ湯では昼食・休憩をしたのちフォレスターに乗り換え、新青森駅でゴールするというもの。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
まず、クロストレックに乗り込んですぐにありがたかった装備は、シートヒーター(フロント)とステアリングヒーターだ(メーカー装着オプション)。取材スタート時点の青森駅周辺の気温はー1℃で、地元の人に言わせるとそんなに寒くないとのことだったが、スイッチを入れるとすぐにシートもハンドルも温まり、とても快適にドライブをスタートすることができた。
ちなみに出発時点での青森駅周辺の路面状況は、ドライ&ウェット。道に雪はなく、乾いているところと濡れているところが混じっているコンディションだった。というわけで、雪道での印象を書く前に、ドライ路面での走りについて触れておくことにしよう。
走り始めてまず最初に感じたのは、加速が思っていた以上にスムーズで気持ちいいということ。今回の試乗はライターの自分と編集者、そしてカメラマンの3人に、撮影機材と宿泊荷物を満載した状態だったので、加速では大きなハンデになるはずだが……。
スポーティかつしなやかな走りで長距離移動を快適にこなす
クロストレックのパワートレーンは、全車2L直噴自然吸気エンジン(145ps/188Nm)にモーター(13.6ps/65Nm)を組み合わせたe-BOXER(イーボクサー)を採用している。そのため停車からの発進加速時には、e-BOXERのモーターが加速をアシストしてくれるために、スムーズに車速を上げることができ、乗員+荷物の重量ハンデを感じさせることはなかった。
また、SI-DRIVEのモードは「エコ」と「スポーツ」から選択できるが、今回の試乗では積極的に「スポーツモード」をチョイス。するとアクセルペダルを踏み込んだ瞬間からグイっと力強い加速をしてくれるので、ロングドライブでも快適に移動することができた。
そして乗り心地がとてもいい。今回の試乗車は18インチのスタッドレスタイヤを装着しており、乗り心地面では17インチ装着車より不利なはずだが、フロントシートはとても快適。さらにリアシートに座ったカメラマンからも不満が出ることはなかった。
クロストレックは最低地上高が200mmと高めに設定されているが、その分のストロークを生かして、サスペンションがしっかり動いていることが運転しているとよくわかる。
これは最近のスバル車全般に言えることだが、スバルグローバルプラットフォームをベースに、しなやかに動く足まわりを組み合わせ、さらに快適性を高める造り込みが行われており、とても乗り心地がいい。これは大歓迎だ。
さらに付け加えるとすれば、ステアリングフィールがとても滑らかで、ハンドルを切ったときのザラつき感が少ない。これは電動パワーステアリングに2ピニオン方式を採用したおかげなのだろう。運転していてワンランク上の上質なクルマを走らせているようなイメージを持った。
巧みな駆動制御のおかげでドライビングに全集中
さて、酸ヶ湯温泉に向けて30分ほど走ると雪が降り始め、路面はいよいよ圧雪路に変化してきた。ここでもクロストレックの走りは快適で、雪面をしっかりととらえた走りには安定感がある。
ちなみにクロストレックの4WDシステムは、アクティブトルクスプリットAWD(ACT-4)を採用。通常は前60:後40のトルク配分を基本としており、走行状態に合わせてリアルタイムにトルク配分をコントロールしてくれる。たとえば前輪のスリップを検知した際には、後輪へのトルクを増やして駆動力を確保できるように制御する。
このあたりの制御はとても巧みで、ドライバーがトルク配分の変化に気付くことはない。あくまでも車両の挙動は自然で、ドライバーは滑りやすい雪道の中、アクセルとハンドル操作に集中することができる。
途中、雪道での走りを撮影したいということで、酸ヶ湯温泉を直接目指さずに、すこし遠回りしていくことにするが、この時、幸いにも新雪が積もった広い駐車場があったので、X-MODE(エックスモード)を試してみることに。
テレビCMのとおり、クロストレックは雪道に強いことを実感
X-MODEは路面の状況に応じてモードを切り替えると、前進時・後退時ともに4輪の駆動力やブレーキなどを適切にコントロールして悪路からの脱出をサポートする機能だ。
今回は新雪が10cmほど積もった場所で一旦停止したあと、スノー/ダートモードに切り替えて発進を試みたが、いとも簡単に脱出することができた。雪道でスタックした車両をクロストレックが救助するというテレビCMを見たことがあったが、X-MODEを使えば過酷なスノーコンディションでも安心して抜け出すことができそうだ。
撮影も順調にこなし、いよいよ目的地の酸ヶ湯温泉が近くなってくると、道の両脇には高い雪壁がそびえ立つ。前方の視界も悪いために慎重に走行を続けるが、このとき改めて感じたのはクロストレックの視界の良さだ。
狭い雪道では大型の観光バスとすれ違うことが何度もあったが、クロストレックはピラーやリアゲートの形状を最適化することで死角を低減しており、しっかりと雪道の幅が見えるので安心して目的地まで走りきることができた。
ミドルクラスSUVとして、雪道で最強の相棒だった
酸ヶ湯温泉で休憩・昼食を取った後は、車両をフォレスターに乗り換えて、新青森駅を目指す。
試乗車両はフォレスターのツーリングをベースに、東北地区のスバルグループが独自の架装を施した「ウィルダネススペシャル」という限定車だ。
ウィルダネスのアルミホイールにスタッドレスタイヤを組み合わせたほか、ダイヤトーンサウンドナビセット(試乗車は非装着)や専用のフロントグリル&リアゲートプロテクターを装備して、合計409万7434円のところを、特別価格374万8113円として約35万円も値引きしたお買い得の限定モデルとなる。
フォレスターには、1.8L直噴ターボエンジン(177ps/300Nm)を搭載するモデルもあるが、今回試乗したツーリングは、先ほど試乗したクロストレックと同じ2L直噴自然吸気エンジン(145ps/188Nm)にモーター(13.6ps/65Nm)を組み合わせたe-BOXER(イーボクサー)を搭載する。
フォレスターに試乗して最初に感じたのは、クロストレックでも感じた視界の良さだ。クロストレックよりも着座位置が高いために、より遠くまで見えるために、狭い雪道でもとても運転しやすい。
この運転のしやすさは、手頃なボディサイズがもたらしていることも間違いない。フォレスターはミドルクラスのSUVながら、全幅を1815mm(クロストレック比+15mm)にとどめており、例の大型観光バスとのすれ違いでも怖さを感じることはなかった。
*新雪が積もった過酷なコンディションでも無問題
そしてなんといっても高い悪路走破性が光る。復路でも新雪が積もった広い駐車場でX-MODEをテストしてみたが、やはり安心感はフォレスターの方が上。最低地上高は220mmとクロストレックより20mm高く設定されているので、深い雪の場所も安心して突っ込んでいくことができ、豪快に雪を蹴散らしながらの走りを楽しむことができた。
そして復路は往路とは違う道を選択して、青森県黒石市を経由することに。この道はほとんどクルマが通らない道で、折りからの降雪で10cmほど新雪が積もった過酷なコンディションだったが、フォレスターはまさに水を得た魚のようにスイスイと走り抜けてくれた。
このときのスノードライブがとにかく楽しかった。雪道の運転にも慣れてきたので、周囲の安全を確認しながらスタッドレスタイヤのグリップの限界を探りつつ走らせてみるが、非常にコントロール性が高く安心してコーナーを駆け抜けていく。
ハンドル操作でクルマを曲げるのではなく、アクセル操作でクルマを曲げている・・・といってはさすがに言い過ぎかもしれないが、それに近い感覚で運転できるのだ。
そんなハードなスノードライブでも、同乗していた編集者とカメラマンはスヤスヤと寝ていたので、これこそが安心感の証明といってもいいだろう。
「ぶつからない」「ヒヤリ!としない」をサポート
黒石市内に入ると雪は止んで、路面状況はドライ&ウエットに変わってきた。フォレスターもクロストレック同様に、ドライ路面でも乗り心地がいい。
ちなみに今回は高速道路を走ることがなかったので、スバルの運転支援システム「アイサイト」のツーリングアシスト機能(0~120km/hでアクセル・ブレーキ・ステアリング操作をアシストして運転負荷を軽減)をテストすることができなかった。
しかし以前、フォレスターで東京から神戸まで取材で往復したことがあったが、この時アイサイトが大活躍したことを思い出した。新東名の最高速120km/h区間で、巡航速度を120km/hに設定し、速く快適に移動することができた。
そしてアイサイトにはそのほかにも「ぶつからない」「ヒヤリ!としない」をサポートするたくさんの機能を持っているので、どんな道でも安心感が高いということも付け加えておこう。
復路はかなり遠回りをしたが、無事に時間どおりに最終目的地の新青森駅に到着することができた。朝から夕方までいろんな道を走り回ったが、愉しかったからかクルマを降りるときに自分がそれほど疲れていないことに気付いた。
スバルのクルマづくりのキャッチコピーに「安心と愉しさ」というものがあるが、今回の取材会ではクロストレックとフォレスターをドライブすることで、この安心と愉しさを改めて確認することができたことが収穫だった。(写真:井上雅行)
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みんなのコメント
その辺CVTではドライバーの意思通りの反応を期待するのは無理
特にスバル車の場合アクセル踏んでますという指令を送ってから反応が起こるまでのタイムラグは非常に大きい
CVT自体を守る為の制御が過大に入ってとても意のままなドライブが出来る仕様では無い