開発中止が報道され、これに対して日産が否定するといった騒動になった日産スカイライン。大きな話題になるのはスカイラインが日本車のなかでも特別な存在である証だ。そして、その開発中止の新聞報道では「日産の象徴」と表現された。
スカイラインが日産を代表するクルマとなり、そして日本のクルマファンの心を捉えてきた理由はどこにあったのだろうか?
開発中止は本当にない!? 名門スカイラインが低迷してしまったのはなぜか?
文/片岡英明 写真/NISSAN、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】熱狂的ファンに支持され消滅の危機を乗り越えてきた「スカイライン」の新たな伝説の復活を願って写真をチェック!!
■スカイラインは憶測でさえ大きなニュースになる
6月12日、日産ファンだけでなく自動車ファンの間にも衝撃が走った。日本経済新聞が日産を代表するスポーツセダン、スカイラインの次期モデルが開発中止になったと報じたからである。
「ハコスカ」「ケンメリ」「ジャパン」「鉄仮面」と64年の歴史をもつスカイライン。新たなスカイライン伝説を期待したいところだ(写真は2019年マイナーチェンジされた現行V37型)
また、上級クラスのフーガとシーマも販売が低迷しているから次期モデルはないと続け、セダン市場からの全面撤退もありうるとした。これは大ごとだ。
スカイラインといえば、長い間、日産を支えている屋台骨である。これまで何度もブランド消滅の危機にあったが、首脳陣は日産には必要と判断したから60年以上も生き延びてきた。
それから3日後の15日、日産はノートの上級に位置するノートオーラを発表している。その席上、星野朝子執行役副社長は「これから先も日産はスカイラインをあきらめない」と、新聞報道を一部否定したのだ。
このコメントは、さらに多くの憶測を生み出したのである。スカイラインの次期モデルの開発中止騒動は、今もスカイラインが日産を代表するスターであることの証と言えるだろう。憶測でさえ大きなニュースになる。
確かに日本ではセダン離れが進み、この10年ほどで多くのセダンが消えていった。スカイラインの最大のライバルであり、伝説のハイオーナーカーだったマークIIはマークXにバトンを託した後、消滅している。今はチェイサーもクレスタもない。
また、コロナとカリーナはプレミオとアリオンになった後も親しまれていたが、さびしく消えていった。レジェンドも間もなく日本では販売を打ち切る。本家筋では、長く親しまれたブルーバードとサニーも静かに消え去っていった。
■64年の歴史のなかで存続の危機は2度あった
スカイラインは1957年4月の誕生だから2022年に生誕から65年になる。その間に何度か消滅の危機に直面した。最初の危機は、誕生から10年足らずの時だ。プリンス自動車が日産に吸収合併されたため、存続の危機に陥ったのだ。
1963年に登場した2代目スカイラインは、プリンス自動車が日産自動車と合併したため、車名をニッサン・プリンス・スカイラインに変更
この時はブルーバードなどと部品の共用化を図るとともに、差別化を明快に打ち出して危機を乗り切っている。日産と合併した後にフルモデルチェンジした3代目のハコスカは大ヒットを飛ばし、ブルーバードと並ぶ日産の主役に躍り出た。
もうひとつの存続危機は、1999年だ。日産の経営が悪化し、フランスのルノーの軍門に下った。日産のCEOに就任したカルロス・ゴーンは大ナタを振るい、合理化を積極的に推し進めた。販売店を統合し、国内専用モデルの多くは整理の対象となっている。
次期モデルの開発は凍結されたのだ。スカイラインも例外ではなく、リストラ車のリストに上がった。
1998年にデビューした10代目になるR34スカイライン。先代よりコンパクトでスポーティーなボディは人気となったが事実上この代で「ハコスカ」の血統は終わった
だが、プリンス党、スカイライン党と呼ばれる熱狂的なファンに支持されている。また、走りの評価も高い。昔はブルーバードが日産の代表だったが、コロナと同じように1990年代を前に求心力を失っている。
これに対しスカイラインは外様だが、1970年代には人気、販売量ともに日産の代名詞的な存在、エース的な存在にのし上がった。1990年代に失速したが、レースでも活躍するイメージリーダーのGT-Rがスカイラインの魅力を引き上げ、販売の落ち込みを小さくしている。
■牙を抜かれたV6エンジンのスカイライン
ファンが多かったため、日産の首脳陣は驚くべき方法でスカイラインのモデルチェンジを敢行し、11代目を送り出した。日産は1999年の東京モーターショーに「XVL」と呼ぶコンセプトカーを参考出品している。これを商品化し、インフィニティチャネルで発売しようと考えていた。
1999年開催の第33回東京モーターショーに出展したXVL(エックス・ブイ・エル)。新技術「エクストロイドCVT」と「直噴NEO Diエンジン」の搭載が紹介された
日本では新しいネーミングで登場すると思われていたが、2001年夏に日産から衝撃的な発表がある。このXVLがスカイラインを名乗って正式デビューを飾ったのだ。日産の販売店にとってもファンにとっても寝耳に水の発表だった。
11代目のV35系スカイラインは伝統の直列6気筒エンジンと決別し、V型6気筒エンジンを積んでいる。丸型テールランプを採用しなかったし、売りのひとつだったターボ搭載車もない。
エンジンもハンドリングも大人っぽい味付けだが、刺激的じゃなかった。2006年にモデルチェンジして登場した12代目のV36系スカイラインも似た性格だ。2013年秋に13代目のV37系スカイライン(現行型)になり、V6エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド車が誕生する。
2006年に発売開始された12代目のV36型スカイライン。写真のクルマはスポーティーグレードの「350GT タイプSP」
■高性能スポーツの走りを再び! 『400R』の登場
日本向けはセダンだけに絞り込まれ、バリエーションも絞り込まれた。が、2014年5月に2Lの直列4気筒ターボが加わり、2016年春には先進の運転支援システムも盛り込んだ。
そして2019年7月のマイナーチェンジを機に、ハイブリッド車にプロパイロット2.0を搭載。また、V6ツインターボのスポーツセダン、400Rを仲間に加えている。スカイラインらしい高性能スポーツを復活させたのだ。
2019年にマイナーチェンジした現行型スカイライン。高速道路でハンズオフが可能な「プロパイロット2.0」を搭載して話題を集めた
だが、現行モデルが登場した頃にはユーザーの嗜好はミニバンを経てクロスオーバーSUVに移っていた。V6エンジンになって以降のスカイラインに疑問符を持っているファンも多い。
彼らは不信感を抱き、他メーカーの上級ブランドや輸入車に乗り換える人も多かったのである。だから20世紀の勢いはない。
今は405psを発揮するハイパワーモデルの400Rが販売の中心になり、5割近くが400Rだ。が、今の日産には勝ち抜く競争力と体力がないから販売は伸び悩んでいる。とはいえスポーツモデルが販売の主役となるのは、スカイラインならではの現象だ。やはりファンは高性能セダンを期待しているのである。
2019年のマイナーチェンジで追加された『400R』。405ps/48.4kgmを発揮する3.0L V6ツインターボを搭載、日産のスカイラインに対する思い入れを垣間見た
2019年度の下半期(2019年10月~2020年3月)の平均登録台数は500台ちょっとだ。新型コロナウイルスの影響をモロに受けた2020年上半期(2020年4月~9月)までの登録は、この半分以下の平均218台にとどまった。
下半期(2020年10月~2021年3月)までは平均359台と、ちょっとだけ盛り返している。だが、かつての栄光を知っているとさびしい限りだ。
4代目の「ケンとメリー」、これに続く5代目の「ジャパン」は年に15万台以上の販売を記録した。販売不振で早めに生産を終えた10代目のR34系スカイラインでさえ、4年間の月平均販売は1000台を超えている。
15万台以上売れたスカイライン5代目「ジャパン」。モデル末期にターボが設定されパワーアップ、またテレビドラマ「西部警察」で採用され人気となった
■「ハコスカ」「ケンメリ」「ジャパン」「鉄仮面」新たなスカイライン伝説をもう一度
こう考えるとスカイラインの神通力は失せたと思う。また、セダン離れが進み、高性能志向が薄れたこともスカイラインを凋落させた理由のひとつだ。だが、ひっそりと販売をやめるクルマが多いなか、スカイラインは中止の噂が流れただけで大きなニュースになってもいる。やはり腐っても鯛、今なお日産を代表する自動車界のトップスターなのだ。
セダン離れが顕著だから、次のスカイラインでセダンは整理されるかもしれない。が、存続させるなら、海外でも需要が見込めるクロスオーバーSUVになるだろう。
実際、先代のスカイラインにはクロスオーバーが用意されていた。キャビンスペースの広いSUVデザインならEVに仕立てることもたやすい。アリアの兄弟車という方法だってある。
2009年に日本で発売されたスカイライン『クロスオーバー』。北米で先行販売されていたインフィニティEX35を日本国内向けとして発売
ジャーナリストではなくファンとしては、新たなスカイライン伝説の誕生に期待したい。
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みんなのコメント
昔の日産は良かったおじさん「昔の日産は良かった!」
日産は日本を軽視してるおじさん「日産は日本を軽視してる!」
シルビア復活させろおじさん「シルビア復活させろ!」
以上、日産関連記事コメント四天王でした。
日産とプリンスを合併させようとしたのは当時の住友銀行。
プリンス自動車は日産より、トヨタとの関係が深かったから合併するならトヨタ!と模索してた。