シールのクロスオーバー、シーライオン
BYDには、シール(アザラシ)という名のサルーンがある。その車高を持ち上げたクロスオーバーの名前は? シーライオン(アシカ)だ。確かに、ずんぐりとしたフォルムは似ているかも。
【画像】BYDでベスト完成度 シーライオン7 競合サイズの電動SUV サルーンのシールも 全180枚
海洋生物にちなんだ名前や造形で展開する戦略を、BYDは選んでいる。中型のハッチバック、アット3という例外もあるけれど。
シーライオン7のパワートレインは3択。駆動用バッテリーは、スタンダードレンジで82.5kWh。リアに駆動用モーターが載る312psと、フロントにも追加される530psの2種類から選べる。航続距離は、前者が最長482km、後者が455kmとなる。
ロングレンジでは、91.3kWhへ増量。ツインモーターで、530psの最高出力は変わらない。航続距離は502kmが主張される。急速充電は、最大230kWに対応する。
基礎骨格は、シールと同じBYD独自のe-プラットフォーム3.0。駆動用バッテリーは、独自開発されたリン酸鉄リチウム(LFP)仕様だ。
ちなみに、バッテリーEVでも、補機類用の12V電源は従来的な鉛バッテリーが用いられることが多い。しかしシーライオンは、これにも軽量なLFPバッテリーを選んでいる。8年間の寿命がうたわれ、バッテリーあがりの心配は少ない。
ナッパレザーのインテリア 高めのフロア
中国の新興メーカーの中でも、経験を高めつつあるBYDだが、スタイリングやインテリアデザインには奇抜さが薄れてきたように思う。ただし、製造品質の向上を感じる一方で、グロスブラックの樹脂パネルが多く、視覚的な特徴は薄い。
今回試乗したシーライオン7は、ツインモーターのロングレンジで、トップグレードのエクセレンス。ナッパレザーのインテリアで仕立てられていた。一定の高級感はあり、BYDの他のモデルにありがちな、強い新車臭も抑えられていた。
ダッシュボード中央には、縦横に向きを変えられるタッチモニター。インフォテインメント・システムは最新世代で、画質は高精細。画面の下部には、エアコンなどのショートカットメニューが常時表示される。市場の意見に耳を傾けたといえ、評価したい。
それでも、大画面は有効に活かせていない印象。翻訳も部分的に完全ではない。試乗車は、アップル・カープレイを利用できなかった。
車内空間は広いといえるが、フロア面が高いため、想像ほど快適な姿勢を取れるわけではない。荷室容量は、ヒョンデ・アイオニック5と同等。フロント側には、58Lの収納空間、フランクが設けられている。
クセのない加減速感 ソフト過ぎるサス
それでは発進。全般的に運転はしやすく、セレクターでDを選択し、右足へ力を込めれば、大きなボディはスルスルと進み出す。複数のドライブモードと、2段階の回生ブレーキが用意されるが、さほど大きな変化があるわけではない。
車重は2435kgと軽くないが、総合で530psもあるため、本気の加速はかなり鋭い。パワーデリバリーは滑らかで、ブレーキは自然にスピードを落とす。クセのようなものは感じられなかった。
若干、アクセルペダルの反応が鈍く、ブレーキペダルはスポンジー。だが、違和感を覚えるほどではないだろう。
運転支援システムは、完成度が高いとはいえない。制限速度の警告音は正直うるさい。このアラームは、モニター上の警告表示とともに、簡単にオフにできるが。
車線維持支援は介入が強力で、ステアリングが不意に取られ、パンクしたのかと勘違いしそうになった。ドアミラーなどへ目を配ると、ドライバー監視機能が注意してくる。もう少し穏やかでいい。
操縦性は、530psの動力性能を活かしきれない。BYDで共通することだが、サスペンションは非常にソフトで、軽く回せるステアリングホイールの感触はリモート感が強い。カーブでは自信を抱きにくく、直進時の安定性に優れるわけではない。
旋回中にパワーを加えていくと、リアアクスル側が効果的に働き、フロントノーズが食い込んでいく。引き締まった姿勢制御や操縦性なら好ましい挙動ながら、シーライオン7の場合はそうともいえない。
浮遊感ある乗り心地 競争は楽ではない
アシカへ抱くイメージ通り、おおらかなクルージングは不得意ではない。高めの着座位置ながら、シートはしっかり身体を包み込み、静かな車内空間の中で移動できる。高速道路では、風切り音が聞こえてくる程度だ。
乗り心地には浮遊感がありつつ、僅かに入力を処理しきれない硬さが伴う。もう少し洗練度を高めたいところ。試乗車はスタッドレスタイヤを履いていた。サマータイヤへ変えれば、多少は走りの印象が良くなるかもしれない。
英国価格は、シングルモーターで約4万6000ポンド(約897万円)から。今回の試乗車は、5万5000ポンド(約1073万円)前後が見込まれる。2024年末に受注を始め、2025年2月から納車されるという。
気になる部分もあるとはいえ、筆者がこれまで試乗したBYDの中で、最も完成度が高く感じられたシーライオン7。しかし筆者の中でのベストBYDは、サルーンのシールだ。運転体験が好ましいわけではなく、エネルギー効率に優れるわけでもない。
市場の反応は、実際の価格で左右されるだろう。いずれにしても、テスラ・モデルYやプジョーE-5008などとの競争は、決して楽ではないように思う。
◯:高速走行時の静寂性 快適なシート
△:調整不足のサスペンション リモート感が強いステアリング 車内の操作系のレイアウト 優れないエネルギー効率と運転支援システム
BYDシーライオン7 エクセレンス(欧州仕様)のスペック
英国価格:5万5000ポンド(約1073万円/予想)
全長:4830mm
全幅:1925mm
全高:1620mm
最高速度:215km/h
0-100km/h加速:4.5秒
航続距離:502km
電費:4.5km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2435kg
パワートレイン:誘導モーター(前)+永久磁石同期モーター(後)
駆動用バッテリー:91.3kWh
急速充電能力:230kW
最高出力:530ps(システム総合)
最大トルク:70.2kg-m(システム総合)
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
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