ついに導入されたランドローバー ディフェンダーのショートボディ「90」、そしてロングボディ「110」に直6ディーゼルエンジン+48Vマイルドハイブリッド(MHEV)が追加されるなど、ラインナップがここにきて充実してきている。さらに本国では2024年にブランド初の電気自動車・BEV投入も発表されている。ここでは、90の2L直4ガソリンターボ仕様と110の3L 直6ディーゼルターボ+MHEV仕様を乗り比べてみた。(Motor Magazine2021年9月号より)
圧倒的な力強さを感じる110ディーゼル
箱根でのテストドライブは、梅雨のある日、濃い霧が立ち込め、ときおり雨足の強まる中で行われた。このクルマでなかったら、走り出すのも躊躇したぐらいのコンディションであった。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
「ランドローバーのアイコニックなモデルを21世紀仕様に刷新し、高い走破能力と耐久性を有する最新の4×4」を謳い、約1年前に上陸を果たし、受注が殺到。2021年7月初旬の時点でオーダーすると、納車は年明けになるという。
そんなディフェンダーの日本仕様は、これまで「110」のガソリンエンジン仕様のみだったが、3月にショートボディの「90」が、5月には今後売れ筋になるであろう「110ディーゼル」が加わった。
すでにレンジローバースポーツやディスカバリーにも搭載されている、持てる技術のすべてをつぎこんだという3L直列6気筒ディーゼルターボエンジンには、48Vマイルドハイブリッドシステム(MHEV)が組み合わされているのも特徴だ。300psという最高出力は既存のガソリン車と同じながら、最大トルクは250Nm差の650Nmとはるかに大きい。
ドライブフィールは期待どおりで圧倒的に力強く、箱根路の上り勾配をものともせず駆け上がっていける。さらには6気筒ならではの耳触りの良い低く重厚なサウンドを味わえるのも醍醐味だ。むろん新世代のディーゼルらしく不快な音や振動がよく抑えられている。ゼロ発進での出足も身軽に感じられるのは、MHEV化が効いてのことだろう。
車両重量は同じ仕様のガソリンと比べて180kg重くなっている。この風貌ながら意外なほど軽快な走りに驚かされたガソリンに対しては、より落ち着いた乗り味となっており、ここは好みの分かれそうなところ。個人的には豊かな動力性能と併せて、ディフェンダーのキャラクターにはディーゼルがよく似合うように感じた。
90の最小回転半径は5.3m。小まわりの効くディフェンダーだ
一方の90は、110に対して全長とホイールベースが435mm短縮されて、ガソリンターボ仕様のみ導入される。試乗したのはエアサスペンションとオールシーズンタイヤを装着したHSEグレードだ。
かつてはポピュラーだった2ドアのSUVというのは、今はほとんど見なくなったが、デザイナーは90のプロポーションこそディフェンダーを象徴する「意図しているデザイン」と述べているという。たしかにこの原寸大のオモチャの自動車のようなユニークな容姿は、110を凌ぐインパクトだ。
ただし、実用性の面ではいろいろ制約もある。横開きのテールゲートは110と同じだが、開けると広大な荷室の110とは違って、ゴルフバッグを横積みできない程度の広さとなる。リアシートに前後スライド機構もなく、荷室を拡げるには後席を倒すしかない。
フロントドアは110より20cmほど長いので、駐車する場所も考える必要がある。リアシートへのアクセスは、この大きなフロントドアを開けて前席の肩のレバーを引くと背もたれが倒れ、さらにスイッチを押すと座面が前端までスライドして乗降するためのスペースが出現するのだが、ステップの地上高が高いこともあり、正直、乗り降りしやすいわけではない。
とはいえ、乗り込んでしまえば後席の居住空間は横に3人座っても大丈夫なほどの広さで、膝前もコブシを縦に3つ分超を入れられるほどのクリアランスを持つ。座面のクッションもたっぷり確保されているので、座ってしまえば苦にならない。
逆に、もう少し狭くして前後スライドを設けるなどして、荷室を広くしてくれても良かったのではという気もするが、基本的に2シーターとの割り切りが賢明といえそう。とにかくこのデザインに価値があると考えたほうがよい。
走りは、ショートホイールベースで小まわりが利き、110より圧倒的に取り回しの面で有利だということは想像どおりだ。110の最小回転半径が6mを超えるのに対し、90で5.3mにとどまるといえば、ご想像いただけよう。
外見から想像するよりも走りが軽やかな感覚も、110のガソリンを上回る。とはいえキビキビというほどではなく、あまり俊敏だとそれはそれで似合わないわけだが、鈍重ではないということだ。
ショートホイールベースで重心も高いので、コーナリングの安定性はあまり高くない。それほど路面の荒れていない一般道を走ってもピッチングしやすいのは、見た目のバランスからイメージするとおりだ。今回残念ながら高速道路を走れなかったが、それなりに跳ねることも覚悟しておいた方が良いだろうが、しかし、このデザインのクルマに乗れると思えば許せるという人は大勢いるに違いない。
日本に導入されるモデルのエンジンは、ガソリン仕様のみとなる。プロダクトマネージャーの藤井氏によると、「ディーゼルも選べるにこしたことはないのは承知しているが、諸々のコストを考慮して、ひとまずはガソリンのみとした」という。
車両重量は意外なほどに110よりもだいぶ軽いので、加速力でも上回るかと思っていた。しかし、110のほうが低いギアで引っ張るシフト制御とされているせいか、同じエンジンでもやや90の方が控えめな印象を受けた。おそらくは燃費面にも配慮した制御としたのだろう。
90の導入を待っていた人は大勢いたようで、デビューフェアではディフェンダー全体のうちで販売比率がほぼ半分に達したとのこと。現状でも2割強を占めているが、レンジローバー イヴォークも途中からは2ドアが勢いを失ったこともあり、ディフェンダーも時間が経過するとこの比率は変わるだろう。とはいえコアなファンが多いのもこの世界の常。ゆくゆくはリセールで110を上まわることも十分に考えられるのではないだろうか。
FCEVに加え、5年間で6モデルのBEVを市場投入
また、今回はオフロード走行も試すことができ、雨の降りしきる厳しいコンディションの中でも、走破性の高さはよくわかった。テレインレスポンスは「砂地・砂・利雪」、「泥・轍」、「砂」、「岩場」と路面の選択肢が充実しており、適宜制御してくれるので、アクセルペダルを踏めば、クルマ任せで前に進んでいける。
加えて、路面の大きな段差を乗り越えても、衝撃があまり伝わってこないことにも感心する。これには、ラダーフレームの最強クラスのクルマに対して約3倍のねじり剛性を誇るという新開発のモノコックも効いているに違いない。
さらに、あたかもボンネットが透けて見えるかのようなクリアサイトグランドビューや、センサーで水面との距離を画面表示してくれるウェイドセンシングのような先進機能も重宝する。渡河水深が900mmというのもディフェンダーらしいところである。
実は、ランドローバーは、そんなディフェンダーをベースとするFCEVの存在も明らかにしたばかりで、2021年末にプロトタイプでの実証実験を本国で始める旨が報じられた。
これにはデルタモータースポーツ、AVL、マレリ、英国電池産業化センターという世界有数のR&Dパートナーが関わっている。
同門のジャガーは2025年以降にBEV専門となることを宣言し、ランドローバーもモデルは明かにしていないが、2024年を皮切りに5年以内に6車種のBEVを順次ラインナップを揃えていくとしている。ひいては全体として2039年までにサプライチェーン含めビジネス全体の排出ガスゼロを目指し、それに向けて電動化を進めていく、というのが今後のロードマップである。
一方、近い将来の話では、SUV専門メーカーとして多様な要望に応えるべく、近年かなり細かくバリエーションを刻んできたが、今後は、少し整理する考えもあるという。ひとまずディフェンダーに関しては、これで役者が出そろい、冒頭で述べたとおり、納車に時間を要する状況は当面続きそうなので、興味のある人は早めに行動を起こした方が良さそうだ。(文:岡本幸一郎/写真:井上雅行)
ランドローバー ディフェンダー90 HSE 主要諸元
●全長×全幅×全高:4510×1995×1970mm
●ホイールベース:2585mm
●車両重量:2100kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1995cc
●最高出力:221kW(300ps)/5500rpm
●最大トルク:400Nm/2000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・90L
●WLTCモード燃費:8.3km/L
●タイヤサイズ:255/60R20
●車両価格(税込):758万円
ランドローバー ディフェンダー110 X D300 主要諸元
●全長×全幅×全高:4945×1995×1970mm
●ホイールベース:3020mm
●車両重量:2420kg
●エンジン:直6 DOHCディーゼルターボ+モーター
●総排気量:2993cc
●最高出力:221kW(300ps)/4000rpm
●最大トルク:650Nm/1500-2500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・89L
●WLTCモード燃費:9.9km/L
●タイヤサイズ:255/60R20
●車両価格(税込):1171万円
ランドローバー初のBEVは2024年にデビューする予定だ
2036年までに排出ガスを実質ゼロを目指す
ランドローバーブランド初のBEVは2024年に発表すると表明された。また今後5年間の間に6モデルのBEVを市場へ投入、さらには全ラインナップの約60%をゼロエミッションカーにしていくという。ディーゼルエンジンについては2026年に廃止するとしている。ランドローバー全体では、 2036年までに排出ガスを実質ゼロにするという。また日本市場では、現在全国に47名いるEVスペシャリストを2023年までに100名体制に拡充し、正規ディーラーや充電設備を完備、充電設備の提携先も拡大される計画だ。
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