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【試乗】日本未発売のオールシーズンの実力とは? 横浜ゴムのウインタータイヤ性能を極寒の旭川で体感

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【試乗】日本未発売のオールシーズンの実力とは? 横浜ゴムのウインタータイヤ性能を極寒の旭川で体感

 スタッドレスと話題のオールシーズンの違いとは

 冬の道でヒヤッとする瞬間。一度は経験したことがあるドライバーは多いのではないだろうか。誰もがその瞬間というのはなるべく避けたいシチュエーションなはず。冬の道を安全に走る上で大前提な物、それは冬用タイヤだ。冬用タイヤにはさまざまな特性があり、タイヤの特性が環境(地域や路面)に合っていてこそ安心を手にすることができる。

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 横浜ゴムが開催しているスタッドレスタイヤ勉強会に参加する機会を得たので、最新のスタッドレスタイヤ事情をお伝えしていこう。

 まずは横浜ゴムのふたつの冬用タイヤについて紹介しよう。1985年に生まれてから6世代目となるスタッドレスタイヤ「アイスガード60(IG60)」。圧雪性能はもちろんのこと、アイス路面での制動・旋回性能を特に重視したタイヤになる。

 注目ポイントはタイヤに使われるコンパウンドに配合した吸水材「吸水バルーン」だ。なぜ寒い冬なのに水が関係する吸水材がスタッドレスに必要なのか。その答えは氷の表面状態に関係がある。

 朝方などの冷え切っている環境では、氷は乾いているため滑りにくくなっている。しかし太陽光に当たることや、上昇した気温によって表面が溶け始めることで、氷の表面にミクロの水膜が発生する。その水膜がタイヤのゴムと氷の間にあることで密着不足になり、グリップ力が低下してしまうのだ。ゲームセンターにあるエアーホッケーを想像してもらえばわかりやすいだろう。

 そこで吸水バルーンが氷の表面にある水を分子レベルで吸水させることで、タイヤのゴム面を氷に密着させることで高い氷上性能を得ているのだ。

 そしてもうひとつのウインタータイヤは、欧州での通年利用を想定して開発された乗用車用オールシーズンタイヤ「BlueEarth-4S AW21」(2018年欧州発表・日本未発売)だ。乗用車用オールシーズンタイヤは近年ヨーロッパにて注目されているカテゴリーで、今では欧州全体のシェア10%まで占めるようになってきているという。

 AW21は横浜ゴム初のオールシーズンタイヤになるが、スノー性能とウエット性能を高めながらも、ドライ性能と摩耗性能をしっかり確保することで相反する性能を両立させることを目標に開発されたのだ。スノーフレークマークを取得しているAW21は、欧州では冬用タイヤとしての基準をクリアしているため通年を通して使うことができる。手間やコストが掛からず、安定した性能をもつオールシーズンタイヤだからこそ欧州ではシェアが伸びてきているのだろう。

 じつはオールシーズンタイヤといっても、ブランドによってタイヤコンセプトが大きく異なるという。

 通年で使用されるオールシーズンタイヤは、真夏のドライ路面から真冬の冷え切った路面、そして雪道なども想定して作られる。しかしタイヤの強みをどの路面に照準を合わせるかはブランドによって違うため、同じオールシーズンカテゴリーでもキャラクターはさまざまなのだ。

 もちろんスタッドレスタイヤを通年通して使用することは何の問題もない。しかし使われるゴムの種類やブロックなど、雪やアイス路面に特化した作りになっているため、冬は良くても夏場のドライ路面やウエット路面では大幅に性能が低下してしまうため安全とは言えない。そのためにタイヤを履き替える必要性が出てくるのだ。

 同じウインタータイヤでも路面状況で走破性が大きく異なる

 ではふたつのウインタータイヤ、IG60とAW21はどのようなパフォーマンスの違いがあるのだろうか。圧雪路面のワインディングコースで実際に走り比べてみた。

 IG60はステアリング操作に対する高いグリップレスポンスと、路面を掴んでいるグリップ感がステアリングにリニアに伝わってくる。ウインター専用設計のIG60が高いパフォーマンスを持っているのは言うまでもない。冬の怪物と謳っているのも納得のパフォーマンスだ。

 AW21のパフォーマンスは、初めてオールシーズンタイヤを運転する私の予想を良い意味で裏切るものだった。発進時にアクセルをグッと踏み込んでみると空転も少なくグイグイと前に進み、強いブレーキを踏んでも雪をしっかりと掴み、高いトラクションと強い制動力が感じられた。

 私は冬の路面でのタイヤは「進む力・止まる力」がとても重要だと思っている。もちろん曲がる力も必要だが、モータースポーツじゃない限り前述のふたつがまず絶対だ。なぜなら「進む・止まる」の性能が高ければドライバーがスピードを正確にコントロールすることができるからだ。コーナーに合わせてスピードを的確に調整すれば安全に曲がることができる。それが安心感に繋がるのだ。

 では、AW21の曲がる力はどうか? タイヤが路面を掴むグリップ力よりステアリングから感じるグリップ感がIG60に対し弱く感じ、スリップアングルがどうなっているのかわかりにくい印象を覚えた。IG60と比べて同じ舵角・同じスピードでは同じコースを走ることができない。IG60が理想的に安心して曲がれるスピードから、AW21は1割ほど速度を下げれば同じように曲がることができた。

 よく考えてみてほしい。横浜ゴム最高性能のIG60に対してステアフィーリングこそ違いは大きいが、オールシーズンタイヤであっても1割程度の差で済んでいるのだ。さらに圧雪での制動距離の差は7%ほどだという。

 理由はAW21には溝の面積が多く、溝エッジ量が多いことで雪をしっかり掴むことができるからだ。カテゴリーの違いを考えればこのスノー性能は十分と言える。ドライブフィールでは両者まったく違う性格に感じるが、オールシーズンタイヤとしてのスノー性能は十分に高いポテンシャルを持っていると感じた。

 しかしアイス性能を確認する氷盤路での制動とスラローム走行ではIG60とAW21の差が大きく出た。アイス性能を特化させているIG60は減速、スラロームともに優秀のひと言。速度20キロからの制動時にはしっかりと減速Gが感じるほどの制動力を持ち、止まる瞬間にはギュッとゴムがアイス路面に食いついて止まるほどだ。スラロームでは横Gを感じながら狙ったラインをしっかりとトレースでき、グリップ感もステアリングからしっかりと感じることができた。

 一方のAW21はIG60に比べて設置面積が少なく、サイプエッジ量が少ない。吸水材もないため、ひとたびブレーキを強く踏めばゴムが氷を掴むことができず滑ってしまい、ABSが強く介入してしまう。減速Gはほとんど感じられないまま制動距離が伸び、停止位置はクルマ1台分先となった。

 スラロームではさらに差が広がりIG60から3割ほど速度を落としたところでようやく狙ったラインを安全に通ることができた。オールシーズンタイヤにとってアイス路面は苦手なのだという事が明らかになった。

 では、なぜIG60はアイス路面で高いパフォーマンスを発揮することができるのか。それは前述の吸水材「吸水バルーン」の貢献が大きいだろう。では、吸水バルーンの含有量に違いでどのような変化が起きるのか、IG60の基準ゴム仕様と吸水バルーンを多くした仕様で氷盤路での制動とスラローム走行で比較してみた。

 基準モデルに比べてグリップ感の高さが感じられ制動時のABSに介入度合いが少なくなった。つまり氷の表面にある水膜を吸水材がより多く吸収することで設置面積が増えゴムが氷をしっかりと掴んでいるのだ。ゴムと氷をしっかりと密着させることでタイヤ本来のパフォーマンスを引き出しやすくさせているのだ。これらは劇的な違いとまではいかないが、スタッドレスタイヤはこの吸水材の含有量が重要な要素のひとつということがわかった。

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