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これでは買いたくても買えない!! トヨタのEV戦略で改めて考える 電動化に必要なのは何か?

掲載 更新 92
これでは買いたくても買えない!! トヨタのEV戦略で改めて考える 電動化に必要なのは何か?

 世界的にBEV(バッテリー電気自動車)を中心とした電動車への販売が求められており、各メーカーも開発を進めている。そんな中2021年12月にトヨタが行ったBEV戦略発表は大きなインパクトをもたらしている。

 しかし現実問題として考えると、メーカーが商品を用意しても、ユーザーが購入しなければ電動化は進まない。そしてユーザーが購入するためには購入する環境、例えば購入支援や充電器の設置などインフラの整備も重要だ。

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 果たして2030年代中盤までに電動化は実現するのだろうか?

文/小林敦志
写真/TOYOTA、SUBARU、富士急行、WULING MOTORS、ベストカー編集部

■続々と登場する各社BEV

2022年1月に販売を開始したクロスオーバーSUVスタイルBEVの日産 アリア

 日産はクロスオーバーSUVスタイルのBEV(バッテリー電気自動車)アリアの予約注文限定モデル(すでに予約受付終了)“B6 Limited”の販売を2022年1月27日より開始し、2021年11月12日に価格が発表されたB6グレードを2022年3月下旬に発売するとしている。

 一方トヨタは2021年12月14日に行われた、BEV戦略に関する説明会において、2030年までに30車種のBEVを展開し、世界市場における年間販売台数350万台にするとの計画のほか、BEVへの4兆円の投資も発表している。

 また、これに先立ち、新型クロスオーバーSUVタイプBEVの“bZ4X”を2020年央より世界各地に導入することも発表している。

 スバルもブランド初となるグローバル展開するクロスオーバーSUVタイプのBEVとして“ソルテラ”を2022年央までに世界各地に導入するとしている(bZ4Xとソルテラはトヨタとスバルの共同開発モデル)。

 また、三菱自動車は2022年1月に開催された“東京オートサロン2022”において、軽自動車規格のBEVとなるコンセプトカー“K-EV コンセプトX スタイル”を出品、2022年度初頭にはこのモデルをベースとした市販モデルを発売予定としていることを発表している。日産も同じタイミングで軽規格BEVの発売を予定している。

 以上、日系メーカーのここ最近のBEVに関するトピックをピックアップしたが、欧米、中国などのメーカーに比べると“周回遅れ以上”ともいわれていた日系メーカーの電動車(HEV:ハイブリッド除く)に関する動きが活発化している。

 業界内では遅ればせながら2022年を“日本の本格車両電動化元年”などと例える動きも出ている。

 消費者のBEVを中心とした電動車への関心は非常に高いが、事態の動きを静観せざるをえない状況となっている。日本政府は2030年代半ばまでにガソリンエンジン車の販売中止をめざしているとされている。

■いまだ不安の残る政府のEV普及策と充電インフラ

2021年12月に発表されたトヨタのBEV戦略。インパクトは大きかったが、ユーザーをBEV購入に向かわせるかはまだ不透明だ

 ただこの政府の動きは、2030年代半ばまでに内燃機関搭載車を全廃するのではなく、内燃機関を搭載するHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)も含めて車両電動化を進めるとされているからである。

 この話は経済産業省マターとなり、経済産業省は一般乗用車ベースのBEV、PHEV、FCEV(燃料電池車)についての購入補助金制度を2021年末にスタートさせたが、国土交通省ではバスやタクシー、トラックなど、いわゆる“はたらくクルマ”の車両電動化に対する購入補助金制度を用意している。

 同じ時期に欧州では内燃機関の全廃を行う予定としているのを見ると、「政府はどこまで本気なのか?」という疑念を持つ人も少なくない。さらに電動車普及に対する制度作りや充電ステーションの拡充など、インフラ整備がなかなか進んでいないような様子にも不安を覚えている。

 2022年1月6日から7日にかけ、東京では4年ぶりとなる大雪警報が発表された。降雪地域にお住まいの人から見れば笑われてしまうような積雪量で、東京都や隣接県は大騒動となった。

 報道によると、1月6日に東京電力は北海道、東北、中部、関西の各電力会社に電力の融通を要請したことを発表した。暖房利用の増加などで電力供給が非常に厳しくなったのがその理由とされている。

 真冬の寒波だけでなく、真夏の尋常ではない気温上昇などが起これば、やはり電力供給のひっ迫ということが起こっている。消費者としては当然、「いまでさえこんな状況なのに、BEVを増やして大丈夫なのか?」と疑問を持つのは当然の流れ。しかし、電力会社はもとより、政府はその明確な答えを示していない。

 すでに公共駐車場やショッピングモール、一部メーカー系新車ディーラーなどにBEV向け充電施設が設置されている。

 だが、「順番待ちで時間がかかる」とか、「ようやく充電施設に到着したら故障中だった」、「集合住宅なので、戸建てのようにホイホイと充電施設を設けられない」などネガティブな情報は、それほどクルマに詳しくない人の耳にも入っている。

 つまり“BEV元年”としても“ゼロからのスタート”ではなく、根拠の有無は抜きにしてもネガティブイメージが広まっているので、“マイナスからのスタート”となるといっても過言ではないだろう。

■EV先進国の中国でも意外と伸び悩む電動化

日本でも有名な中国の『格安マイクロBEV』宏光 MINI EV

 世界的に特異な政治形態となり、スピーディーな政策実行ができるのが中国。その中国は世界一の電動車普及国とされている。

 中国汽車工業協会の統計によると、2021暦年締めでの中国国内における年間新車販売台数は2627万5000台となり、そのなかで新エネルギー車(BEV、PHEV:プラグインハイブリッド車)の年間販売台数は354万5000台となるので、新エネルギー車は新車販売全体の約13.4%となっている。

 初めて新エネルギー車の年間販売台数が300万台を突破したとされているが、販売比率が全体の13%ほどというのを聞いて、「意外に少ないのだな」と感じた人も多いだろう。

 以前は新エネルギー車の売れ筋といえば、欧州高級ブランドのPHEVなどが名を連ねていた。

 しかし、例えば2021年12月単月での車名別新エネルギー車販売トップ10を見ると、1位は日本でも有名な激安マイクロBEVとなる、上海通用(GM)五菱汽車の“宏光MINI EV”となり、これを含むトップ10のなかでの中国系メーカー車は7車入っている。

 外資ではテスラが2台、そして唯一PHEVとして、そして唯一の日系車としてランクインしているのが、ホンダCR-Vの兄弟車となる広汽本田(広州ホンダ)のブリーズ新能源(新エネルギー)。

 中国系メーカーのラインナップをみると、マイクロBEVは複数のメーカーでもラインナップしているがそれほど多くなく、SUVやセダンタイプなどバラエティに富んでいた。中国車では珍しいステーションワゴンとなる、上海汽車の“栄威(ロエベ)Ei5”は4位となっている。

 大都市でタクシーとしても多く走っており、フリート販売もランキング上位入りに貢献しているのかもしれない。

 中国ではナンバープレートの発給規制地域でも優先発給されるなど、補助金も含め新エネルギー車購入に関するインセンティブは手厚いものとなっている。そして政府の意向がスピーディーに徹底される国でもあるのに、いまだに新エネルギー車の普及は販売台数全体の2割にも到達していない。

 街なかを見ると、年式の古いクルマも多く走っている。車齢が長くなっているようにも見えるので、新エネルギー車への乗り換えに限り、下取り査定額などへ政府が助成金を出すなど、乗り換えを促進する政策を積極的に進めるのもいいかもしれない。

 早い時期から原動機付き自転車(原チャリ)がほぼ電動化されており、電動車に馴染みある生活を送り、さらに政府の強い指導力もあるというのになかなか普及しない様子をみると、電動車普及の難しさというものを感じざるを得ない。

 政治の力が強い中国でも、政府の肝いり政策でもある車両電動化は思うように進んでいないように見える。それなのに、首相がコロコロと方針変更や発言を訂正し、中国のように強い政治主導力もない日本で10数年後に電動車以外の販売を禁止することなどできるのかと疑問に思うのも自然の流れである。

 しかも、政府の言うことを信じて割高な電動車を購入したところ、生活困窮者救済の立場から軽自動車やコンパクトカーなど、一部車種について内燃機関車を2030年代半ば以降も継続販売するなど、梯子を外すようなことを政府が行うのではないかとの疑念を持つ人も多い。

 現首相の言動を見ればそう考えるのも至極当然である。「どうせできるはずがない」とはじめから思っている人も多いだろう。

■ユーザーの疑念を打ち消すのは政府の本気度

富士急バスに導入された中国BYD製のEVバス

 欧州やイギリスの2035年から事実上の内燃機関車販売禁止というものも、「本当にできるの?」と思ってしまいがち。欧州委員会は2月2日に、原子力発電およびLNG(液化天然ガス)発電が脱炭素社会に貢献するとして、“グリーンエネルギー”として認定する方針を発表し、加盟国間で賛否が飛び交う大騒動となっている。

 原発はともかく化石燃料であるLNGでの発電を“持続可能”とする動きに、欧州の“完全脱炭素化”への動きの“ほころび”を見たのは筆者だけだろうか。アメリカのバイデン政権のように、「2030年までに新車販売台数の半分以上をBEVやFCEV(燃料電池車)にする」との政策は、広い自国の国土といった事情を考慮した現実的なものだと納得できる。

 日本のバス業界では、すでに国内販売を行っている中国BYD汽車のバスを導入する動きがここのところ目立っている。一般路線バスをメインとしたBEVバスの導入については、現状では外資、しかも中国頼みといった流れとなっている。

 しかし、北京オリンピック閉幕後には、台湾問題が再燃するのではないかともいわれており、日本政府のいうところの“経済安全保障”の面では不安が残る。

 つまり、仮に中国製路線バスが多く走るようになったとして、中国との政治的対立が悪化すれば補修部品の出荷停止などを中国政府が実行しかねないというリスクがある。

 地理的にも、電動車の普及状況を見ても日本の電動車普及について中国の存在は大きいが、リスクは十分考慮しなくてはならないという慎重な見方もある。

 しかし、日系メーカーは電動車ラインナップでは世界的に見ても出遅れイメージはぬぐえないので、すでに営業運行実績のある中国のBEV路線バスやタクシーの国内導入は公共輸送機関の電動車普及促進の早道であることは間違いない。

 乗用車については、韓国ヒュンダイ自動車が2月8日に“ヒョンデ”として、日本国内での乗用車販売の再参入を発表したが、発表された導入車両はBEVとFCEVであった。欧州ブランドも日本市場へ積極的にBEVを導入しており、いまのところ中国抜きとはなるが外資リードで普及が進んでいくことになりそうだ。

 しかし、より本格的な電動車導入を考えるならば、政府の覚悟ではないが、電力供給インフラの再構築も含め、国民が疑念を持たず政府を信じられるような、詳細で積極的な情報提供を政府が行う必要があると考える。

 前述した中国の様子だが、本音の部分では中国人民の大半、富裕層ほど政府を信じていないという話を聞いたことがある。政府との信頼関係の低さが電動車普及を遅らせる一因のようにも見え、国民の政治不信では日本も中国並みといっても過言ではないので、そこを筆者は不安視している。

 “電動車用意して補助金つければ普及するだろう”などと安易には考えてほしくない。BEVへ否定的ではなく、興味がある人は大半のようだと筆者も考えている。しかし「ガソリン車と比べると不便だからねえ」と漠然としたイメージが定着しているのも確か。

 メーカーは優秀な電動車を世に送り込むことはできるが、庶民の政府への不信感のようなものを拭うことはできない。それは、民間へ丸投げできない、政府しか行うことができないものと考えているし、政府への信頼が高まらない限りはなかなか前へは進むことはないだろう。

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みんなのコメント

92件
  • だって本気ならまず充電インフラ整備する筈なのにしないでしょ?

    ガソリン車並みに簡単に充電出来なきゃ普及するわけ無いし寒冷地の自分的には死にたくないし。

    今ある車大切に乗るわ!
    馬鹿らしい!
  • インフラ云々と言うよりもだな
    発電を化石燃料でしていたら意味ねーんだよ。
    エネルギー保存の法則で電気で走ろうがガソリン焚いて走ろうが一緒の事。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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