現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 水素が変える未来、BMWのFCEV開発者が語ったその詳細とは?

ここから本文です

水素が変える未来、BMWのFCEV開発者が語ったその詳細とは?

掲載 更新 7
水素が変える未来、BMWのFCEV開発者が語ったその詳細とは?

BMWはFCEV(燃料電池車)を、クルマの新たなパワートレインのひとつにするだけではなく、インフラとそのコスト、エネルギーを有効活用する手段としても考えていた。

FCEVは究極のエコカーと主張

BMWジャパン、日本でiX5ハイドロジェンの実証実験を開始。市販燃料電池車の開発に活かす

FCEVは、水素と空気中の酸素を化学反応させ、発生した電気でモーターを回し、クルマを走らせる。排出するのは水だけなので「究極のエコカー」と言われている。

現在市販されているFCEVは、トヨタのミライとヒョンデのネッソの2車種だ。そしてBMWはiX5ハイドロジェンの開発と実証実験で得た知見を活かして、2020年代後半にFCEVを発売する予定だ。

7月25日に行われたiX5ハイドロジェンの日本での実証実験開始の会見において、BMWグループ 水素燃料電池テクノロジー・プロジェクト本部長のユルゲン・グルドナー氏の説明から、BMWの水素戦略をみていく。

BMWも他の欧米メーカーと同じようにBEV(バッテリー電気自動車)のラインナップを増やしており、現在日本ではiX、i7、i5、i4、iX3、iX1と6車種を展開している。

しかし、来たる電動化時代にはBEV100%では対応が厳しいとBMWは考えている。その理由の一つがインフラだ。全ての車両がBEVになったら、相当数の充電器が必要だ。そしてその充電器の設置にかかる費用も膨大なものになる。

グルドナー氏の説明によると、BEVとFCEVがそれぞれ500万台までのインフラコストではFCEVの方が高いが、1000万台になるとFCEVにBEVが追いついてきて、1500万台では逆転し、それ以上ではBEVの方が高くなっていることが分かる。

FCEVは充填速度が早いことを活かし、現状のガソリンスタンドのように短時間で多くのクルマを対応することができることをイメージすれば、このグラフを理解できる。

合わせてグルドナー氏は、BMWとしてもトラックやバスなどの大型車はほとんどFCEVに移行していくとの考えを示した。これまでTHE EV TIMESでもお伝えしてきたように、大型車は重いバッテリーを搭載する必要のあるBEVよりも、軽量な水素タンクにより積載空間や最大積載量、航続距離を確保できるFCEVの方が有利だ。

大型車がFCEV化してくれば、燃料の水素は、乗用のFCEVよりも多くの量が日々安定的に必要になるため、水素製造コストも下がる可能性も考えられる。

捨てられる電気を水素へ

グルドナー氏が見せてくれた資料の中に大変興味深いものがあった。それは2022年にドイツで電力網に供給されなかった再生可能エネルギーが5.8TWhもあったというもの。これにより約10万トンの水素を製造できるとの試算だ。これはiX5ハイドロジェンを約16,700回満充填できる量だ。

翻って我が国の状況はというと、再エネの普及により昨年の4月と5月の2ヶ月間だけで全国でのべ57日も太陽光発電などを停止させる「出力制御」が行われた。2015年に全国で初めて出力制限が行われた九州においては2022年度に80回も実施され「常態化」と言える状況だ。

せっかく発電したCO2フリーの電力を捨ててしまうのはもったいない。発電事業者も出力制限で収入がゼロになるよりは、水素製造電力として売電できた方が良いだろうし、水素製造コストも下がる。

日本政府も2020年10月26日の菅前総理の所信表明演説において、2050年のカーボンニュートラルに向けて再生可能エネルギーを最大限導入することを発表している。ペロブスカイト型太陽電池の実用化、洋上風力発電の稼働も進めば、再エネがより潤沢になるのは間違いない。

再エネ電力でBEVを充電し、余った電力は捨てるのではなくCO2フリーのグリーン水素を生成し、FCEVに有効活用できるようになることを願いたい。これは石油などの資源を輸入に頼る日本が自国で資源を生み出せ、その分の輸入コストも下げられる素晴らしい未来ではないだろうか。

こんな記事も読まれています

メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
AUTOCAR JAPAN
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
AUTOSPORT web
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
Auto Messe Web
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
AUTOSPORT web
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
AUTOSPORT web
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
AUTOSPORT web
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
AUTOSPORT web
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
AUTOCAR JAPAN
オーテック&ニスモ車が大集合!「AOG湘南里帰りミーティング2024」で見た「超レア車5台」と「中古車で狙いたいクルマ5台」を紹介します
オーテック&ニスモ車が大集合!「AOG湘南里帰りミーティング2024」で見た「超レア車5台」と「中古車で狙いたいクルマ5台」を紹介します
Auto Messe Web
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 後編
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 後編
AUTOCAR JAPAN
ラリージャパン3日目、SS12がキャンセル…一般車両が検問を突破しコース内へ進入、実行委員会は理解呼びかけると共に被害届を提出予定
ラリージャパン3日目、SS12がキャンセル…一般車両が検問を突破しコース内へ進入、実行委員会は理解呼びかけると共に被害届を提出予定
レスポンス
【F1第22戦予選の要点】苦戦予想を覆すアタック。ラッセルとガスリーが見せた2つのサプライズ
【F1第22戦予選の要点】苦戦予想を覆すアタック。ラッセルとガスリーが見せた2つのサプライズ
AUTOSPORT web
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 前編
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 前編
AUTOCAR JAPAN
NASCARの2024シーズン終了! 日本からスポット参戦した「Hattori Racing Enterprises」の今季の結果は…?
NASCARの2024シーズン終了! 日本からスポット参戦した「Hattori Racing Enterprises」の今季の結果は…?
Auto Messe Web
ジャガーEタイプ S1(2) スタイリングにもメカニズムにも魅了! 人生へ大きな影響を与えた1台
ジャガーEタイプ S1(2) スタイリングにもメカニズムにも魅了! 人生へ大きな影響を与えた1台
AUTOCAR JAPAN
もの凄く「絵になる」クルマ ジャガーEタイプ S1(1) そのすべてへ夢中になった15歳
もの凄く「絵になる」クルマ ジャガーEタイプ S1(1) そのすべてへ夢中になった15歳
AUTOCAR JAPAN
日本の「ペダル踏み間違い防止技術」世界のスタンダードに! 事故抑制のため国際論議を主導
日本の「ペダル踏み間違い防止技術」世界のスタンダードに! 事故抑制のため国際論議を主導
乗りものニュース

みんなのコメント

7件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村