トライアンフから「スピードトリプルRS」が登場した。シリーズ7代目にして初の「RS」の称号を冠した最新最強モデルである。従来モデルとどこが違うのか検証しつつ、試乗インプレッションをお伝えしたい。スペインで開催された国際メディア試乗会から2輪ジャーナリストのケニー佐川がレポートする。(REPORT:ケニー佐川 PHOTO:トライアンフ)
エンジンと装備と電制のすべてが進化
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スピードトリプルはトライアンフを代表する3気筒スポーツネイキッドである。従来モデルの最上級グレード「R」と比べてどこがどう変わったのか。大きく分けてポイントは3つある。
ひとつはエンジン。従来型の水冷並列3気筒DOHC4バルブ1050ccをベースとしながらも、合計105ヵ所におよぶ新型パーツを投入し、ピーク回転数を1000rpm高めることで最高出力は従来比10psアップの150psを発生。最大トルクは逆により低い回転数から4%アップの117Nmを実現している。つまり、よりワイドレンジの出力特性を得たことになる。
二つ目はエクステリアの高級感が高まったこと。フロントフェンダーやラジエターカウルにカーボン素材を採用、サイレンサーもアロー製の軽量チタンタイプとするなどトータルで3kgの軽量化を実現している。メーターも先行投入された新型ストリートトリプル同様の大画面で見やすいTFTディスプレイが装備された。
三つ目は電子制御の進化だ。最大5種類のライディングモードに加えてクルーズコントロールを標準装備。新設計の慣性計測ユニット(IMU)によるコーナリングABSとコーナリングトラクションコントロールが新たに搭載された他、いよいよスマートキーを採用。キーレスでの始動とステアリングロックも可能となっている。
これ以外にも前後サスペンションにはオーリンズ製φ43mmNIX30 倒立フォークとTTX36 リンク式モノシッョク、ブレーキにはブレンボ製ラジアルモノブロックキャリパーを装備、ホイールも新設計の10本スポークタイプに刷新されていることもポイントだ。
「RS」はつまり、よりパワフルなエンジンとそれを制御する高度な電子デバイスが与えられ、見た目や装備のグレード感も一層高められたモデルということだ。
熟成を極めたスポーティかつ上質な走り
今回はサーキットがメインステージということで、「RS」の進化した走りを思い切り堪能することができた。ピットを出てアクセルを徐々に開けていくが、まず吹け上がりが軽やか。そしてアロー製サイレンサーが奏でる排気音がいい。3気筒らしさにこだわったという、まさにトライアンフらしい独特のビブラートが効いた迫力のトリプルサウンドが楽しめる。
元々が持ち味のフラットトルクはそのままに、より低回転数からひと回り太いトルクで大柄な車体を押し出していく。それでいてスロットルの反応も穏やかなのでコーナー立ち上がりでもアクセルを開けやすく、かつ高回転までスムーズに伸び切るエンジンは爽快そのものだ。軽快かつ安定感のあるハンドリングも健在で、オーリンズのしっとりとグレード感のある動きと、ピレリのスーパーコルサSPのねっちりとした接地感に支えられ、気持ちよくコーナーに飛び込んでいける。さらに今回新たに投入されたコーナリングABSとトラコンという"保険"による精神的なバックアップも大きい。もちろん、どんな電制にも限界はあるが、リラックスしてスポーツライディングを楽しめる余裕が生まれるのはいいことだ。
TFTディスプレスの美しく見やすい大画面も感動もの。複雑な電制システムをジョイスティックの直感的な操作で呼び出せるインターフェイスとしての扱いやすさも素晴らしいと思う。
落ち着いた高級感のあるスタイリングと外装、深みのあるトリプルサウンドとライダーの感性にフィットした操作感など、伝統のスピードトリプルも7代目のRSに至って熟成を極めた感がある。サーキット走行からスポーツツーリングまで幅広く使えて、大人の所有欲も満たしてくれる贅沢な一台に思えた。
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