これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、その後のSUVの発展に大いにも貢献した、三菱チャレンジャーを取り上げる。
こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】シティオフローダーに仕立てた[チャレンジャー]は兄貴分のパジェロをなぜ超えられなかったのか?
文/フォッケウルフ、写真/三菱
■クロカン全盛期に登場したシティオフローダー
三菱自動車と言えば、近年はアウトランダーPHEVに代表される世界屈指の電動車両技術を得意としているが、やはり1980~1990年代のRVブームを牽引してきた魅力的なクロカン4WD、通称「ヨンク」を輩出してきたことも忘れてはならない。
当時の三菱製ヨンクといえば、パジェロが絶大な人気を集めていたが、今回クローズアップする「チャレンジャー」はそんなパジェロの弟分であり、本格的なオフロード4WDとしての性能を有しながら都会的なイメージを持つRVとして同社のラインナップに加わった。
1996年にデビュー後、2001年まで販売されたチャレンジャー。海外では「パジェロスポーツ」として2代目、3代目モデルも販売されている
RVブーム真っ只中に市場で人気を博していたクロカン4WD車は、悪路走破性はもちろん、舗装路における操縦安定性についても十分に満足できるパフォーマンスを発揮していた。耐久性の高さなどタフな能力を持つ一方で、無骨なスタイルや車重の重さが影響し、市街地での扱いづらさはネガティブな要素となっていた。
そこで1990年代中盤になるとクロカンSUVの持ち味である耐久性や悪路走破性はそのままに、市街地でもスマート扱えるクルマが求められるようになり、現在のシティSUVの前身とも言えるシティオフローダーが各メーカーからリリースされる。三菱では2台目パジェロをベースにしたシティオフローダーの開発に着手し、1996年7月にチャレンジャーを市場に投入する。
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■あらゆるシーンに調和するアーバンテイストを演出した内外装
チャレンジャーは、そのラダーフレームやサスペンションまわりの構造、駆動系といった主要のメカニズムをパジェロから継承しているが、外観はオンロードからオフロードまで、都会から自然の中まであらゆるシーンに調和するアーバンテイストを演出。オフロード4WDとは異なる力強さ、シャープさとなめらかさを併せ持った新鮮味溢れるデザインとしていた。
フロントまわりは、異形2灯式のヘッドランプと縦桟基調グリル、その周辺を縁取るクロームメッキガーニッシュによって、落ち着いた表情のなかにシャープさを感じさせる造形。ボディサイズは全長が4620mm、全幅1775mmと市街地で扱いやすいサイズとし、全高は1730mmとベースとなったパジェロよりも低く設定された。
運転席まわりは操作部や空調パネル、メーターを一体化することで横方向に広がりのある形状としている。車内は明るく広々とした乗用車的な居住感覚とし、すべての乗員が心地よく過ごせる
街なかでの機動性に配慮したサイズとしながら、ロングホイールベースによって、室内にはゆとりあるスペースが確保され、あらゆるシーンですべての乗員が、心地よく過ごせるよう明るく広々とした乗用車的な作りも相まって、優れた居住性を実現していた。
運転席まわりは主要操作部や空調パネル&グリル、メーターを一体化し、横方向に広がりのある形状とすることで開放感を演出。操作スイッチは、機能別に最適な位置に配置し、各種インジケーターは、メーター内に集中配置するなどして、視認性/操作性など機能面に関する部分にも多くの工夫が盛り込まれていた。
実用性の高さもセールスポイントのひとつで、クラス初のロングフラットモードなど多彩なシートアレンジメントをはじめ、オーバーヘッドコンソールやデュアルカーゴフロアボックスなど豊富な収納スペースが備わっていた。パジェロが3列シートだったのに対し、チャレンジャーは2列仕様の5人乗りとし、用途に応じてアレンジできる機能を有していた。
フロントシートはフルリクライニング機構、リアシートはダブルアクション機構を採用し、これらの機構を組み合わせることによって最大で2800mmの荷室長が確保できた。この世界初となるロングフラットモードに加え、多彩なアレンジを可能にしたことで、レジャー用途のユーザーを強力にサポートできる性能を実現していた。
■本格4WDシステムでハードな悪路走行も可能
搭載されるパワーユニットは、高出力とスムーズな加速フィーリングに加えて優れた静粛性と余裕の動力性能を発揮する3.0Lガソリンと、クリーンな燃焼と高出力/高トルクを両立してゆとりの走りを実現する2.8Lディーゼル、優れた低振動/低騒音に加えて滑らかなトルク特性を持ち味とする2.5Lディーゼルををラインアップ。
1997年に実施されたマイナーチェンジでは、ガソリンエンジンは3.5LのGDI仕様に変更。ディーゼルエンジンは2.8Lに1本化されたうえに、電子制御化されたことで最高出力は105psから140psへ出力向上が図られている。
いずれもミドルサイズSUVに相応しいパフォーマンスを発揮するとともに、GDI搭載車ではINVECS-IIスポーツモード5速ATが組み合わされたことで、より爽快な走りを味わわせながら燃料消費量の抑制も実現していた。
市街地走行を想定しているが、駆動方式は全車4WDとし、上級グレードのX、XRには、フルタイム4WDを基本に4種類の走行モードを状況に応じて使い分けられるスーパーセレクト4WDが採用されていた。
これが高速道路からオフロードまであらゆる路面で前/後輪につねに最適な駆動配分を行うことで、経済的かつ快適なドライブを可能とするとともに、オンロードでの操縦安定性とオフロードの走破性能を実現。その他グレードでは、走行中でもレバー1 本で2WD/4WDの切換可能なイージーセレクト4WDを採用していた。
今どきのSUVのようなモノコック構造ではなく、ベース車と同様に強固なラダーフレーム構造を採用。足まわりはフロントにダブルウィッシュボーン、リアにはシンプルでしなやかな3リンク式リジッドサスペンションを採用
大柄でスクエアなボディサイズや、パジェロから譲り受けたクルマの構造や機能は、今どきのSUVクラスの特徴を鑑みて分類すると、クロカンSUVとなるが、当時としては洗練度を極めたアーバンテイストのオフローダーとして認知されていた。
1997年のバリ~ダカール・ラリーでは総合4位入賞を果たすなど、パジェロと変わぬ高いレベルのオフロード性能を武器としていたが、市場での人気はRVブームを牽引した兄貴分のパジェロを超えられず、類似するコンセプトで開発された、トヨタハイラックスサーフや日産テラノといった競合車にも一歩及ばなかった。そしてSUVクラスはさらなるシティ化が促進し、乗用車ベースのクロスオーバーが売れ筋となり、チャレンジャーはエアトレックの登場を機に日本国内での販売が終了となってしまう。
クルマの下半身にあたるシャシーはクロカン4WDとしながら、上半身はスマートな使いやすさと快適さを実現して乗用車的に仕上げたそれまでにないパッケージングは、その後のSUVクラスへ大きな影響を与えたことは間違いない。クロカン4WDが全盛の時代に新たな価値を訴求した、まさに“挑戦者”だったと言えるだろう。
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みんなのコメント
11年2.8ディーゼルに乗ってたけど、電子制御化された4M40エンジンのトルクやパワーにもに不満はなかったし、海から山から通勤から荷物もたくさん詰めて不満はなかった一台です。
中途半端なクルマだな
って思ったけど
良く考えたら
時代を先取りしすぎたクルマだったのかもしれないですね
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