「今年の最優秀車」の称号たる日本カー・オブ・ザ・イヤーを戴冠し、ますます絶好調のスバル新型レヴォーグ。正式発表前から幾度もの試乗会が行われていたが、その度に招待され、その実力を目の当たりにしたメディア側は驚きを隠せず、逆にスバル側は自信を深めていったに違いない。
ここでは首都高などでのテスト走行を通して、あらためて新型レヴォーグの素性を吟味、そして悩みのタネとなるに違いない「STI Sport」と「GT-H」の比較にも言及。さらにアイサイトXについてもじっくりと解説する!
待望のターボ復活!! 新型フォレスターはいよいよ本気を出したのか?
●トピック
・初の公道試乗へ。首都高でのドライビングではアクセルレスポンスのリニアさ際立つ!
・「STI Sport」と「GT-H」を比較。迷っている人はどちらを買うべき??
・その歴史から紐解く 新世代安全装備「アイサイトX」はなにがどうすごいのか?
【画像ギャラリー】全17枚の画像で首都高を走り抜ける最新レヴォーグとアイサイトXの解説をじっくりチェック!!!
※本稿は2020年11月のものです。試乗日:11月15日
文/松田秀士、写真/SUBARU、ベストカー編集部、試乗撮影:中島仁菜
初出:『ベストカー』 2020年12月26日号
■幾度ものテストコース試乗を経て、初の公道試乗へ
これまで新型レヴォーグの試乗会はプロトタイプ車両を使い段階的に開催された。
まず、JARIの外周路(高速周回路ではない)を使用して大幅に機能と安全性能を向上させたアイサイトX(エックス)の確認。
ステレオカメラなどのサプライヤーが変更され、気合の入れ具合が半端ない。
E・YAZAWAの「どうよ!」で両手離しのCMが記憶に新しい日産プロパイロット2.0を凌ぐのでは? と思わせるほどADAS(運転支援)機能の進化がスゴイ!
で、その次は袖ヶ浦フォレストレースウェイで動的体感プログラムという運動性能の確認。サーキットなので限界域もチェック。
ここではSGP+フルインナーボディの剛性感と、スバル初となるZF社製電子制御ダンパー(STI Sport)のドライブモード違いのフィール、サスリングストローク化、2ピニオン電動パワステ、そして新開発1.8L直噴ターボ+新開発リニアトロニックをチェック。
こちらもプロトタイプだったが、これまでのスバルにはない高級感に拍手した。
しかし、ライン生産のモデルでの公道試乗は今回が初めて。クローズドのかぎられたコースでの試乗では読み取れないことがたくさんあるもの。
一番重要なのは実際に使ってみてどうよ、ということなのである。
試乗は東京・恵比寿にあるスバル本社ビルを出発して日曜日の都内と首都高で行った。さらに今回はSTI Sport EXとGT-H EXの2台を借り出し、両車の比較も行うというもの。
初の公道試乗。STI Sport EX(左手前・409万2000円)とGT-H EX(右奥・370万7000円)の差はZF製電子制御ダンパーの有無。これによりSTI Sportはドライブモードセレクトを備える。GT-Hのサスペンションはカヤバ製
まずはSTI Sportで出発。地下駐車場からスロープを登り始めて最初に感じたのは極低速域でのアクセルレスポンス。
20km/h前後でのスロットル反応がすばやく、トルク感があって思いどおりに加減速ができる。
スバルビルまで乗ってきた欧州車よりも格段にコントローラブルだ。
いや、その欧州車だってそれなりに扱いやすいモデルなのに、昨今の一般的な常識がエコ優先ゆえにこんなところにストレスを抱えて、それを当たり前に感じていたのだと改めて気づかされた。
これまで経験したサーキット走行などでは、アクセルON/OFFの開度が極端ゆえにこの超低速域のレスポンスに気づかなかったのだ。
今回試乗してくれた松田氏。首都高でのドライビングではアクセルレスポンスのリニアさが際立つ。余談だが、ハンドルと比べると手前のディスプレイの大きさがわかる
ドライブモードは「NORMAL」で走り出す。これまでサーキットの鏡面に近い路面だったから、サスペンションの動きのスムーズさに感動したが、一般道では+アンギュレーションという外乱が常に入る。
しかし、乗り心地はふつうに快適なのだ。市街地路面の凸凹をうまく吸収するが、過剰に吸収するワケでもない。
サスストロークをフロント25%、リア5~10%ロングストローク化しているのだが、この効果は明らか。過剰に吸収しないのでタイヤの接地感をしっかりドライバーが感じることができるのだ。さらに首都高ではロールが大きすぎないので安心感も高い。
後ろが「STI Sport EX」、前が「GT-H EX」。価格は前者が409万2000円、後者が370万7000円と38万5000円の差がある。STI Sport EXは「ドライブモード」セレクトのある最上級グレードだ
首都高を走って感じるのはFA20型ターボ(2L直噴ターボ)ほどの無茶ぶりパワーはないものの、300Nm(FA20は400Nm)という最大トルクがほぼ4000rpmまで続くので、FB16型ターボ(1.6L直噴ターボ)よりも力があり、明らかに実用重視なエンジンだ。
新型リニアトロニックとのコラボも相性がよく、スムーズ。
新型レヴォーグのエンジンは新開発のCB18型1.8L直噴ターボで、そのスペックは177ps/30.6kgm。リーンバーンで効率を高めており、FB16ターボよりも燃費を向上させている
ドライブモードを「SPORT+」にセットすればトルクバンドのなかでエンジン回転数が上がり、加減速のスポーツ感が高まる。しかもアクセルレスポンスがリニアだ。
この電子制御ダンパーは「NORMAL」と「SPORT」が同じ減衰力でステアリングもAWDも同じ制御。
「SPORT+」のみ減衰力が上がり、路面の継ぎ目もしっかり感じるスバリスト好みに変化する。
ステアリングも重くなり、AWDもスポーツ制御だ。
首都高ではずっとこのモードで走りたくなる、が速度に注意だ。
もうひとつ、「COMFORTモード」があるのだが、ダンパーの制御がかなり緩くなり、非常に乗り心地がよくてステアリングも超軽くなる。
女性や高齢者の車庫入れも苦ではない。かといって首都高でも不安感はない。
■「STI Sport」と「GT-H」との比較。迷っている人はどちらを買うべき??
さて、興味深いのは「GT-H」との比較だ。サスペンションやステアリングのフィールは「STI Sport」でいう「NORMAL」と「SPORT」のドライブモードと同じフィーリング。
特にホイールストローク初期の動きがとてもスムーズなので乗り心地もいい。
コーナリング中のロールも大きくなく、自然なのでこれで充分じゃないかと思えるほど。
ただし、一般道での小さな凸凹路面の振動処理はやはり電子制御ダンパーには及ばないし、「SPORT+」のあのシャッキリ感を望むのは贅沢というもの。
ただし、アフターパーツへの交換も視野に入れるなら「GT-H」がお薦め。個人的にはこっちでいいかも、というくらい優秀だった。
松田氏は実際に試乗してGT-H EXグレードのコストパフォーマンスの高さを薦めてくれた
さて、両モデルともにアイサイトXを装備したEXグレードだったが、首都高でもその真価を発揮して、ACC+LKAで車線内のど真ん中を前車追従で文句なしのDAS走行。渋滞ではハンズオフも可能だ。
そんな高速巡行モードでは旧型より格段に静粛性の高い室内が一種のパワースポットのような空気感に包まれたように感じられ、とても元気に試乗することができた。
(TEXT/松田秀士)
STI Sport Xのインパネ。11.6インチセンターインフォメーションディスプレイとメーター部の12.3インチフル液晶メーターと連携してドライバーに必要な情報をサポート
■スバル レヴォーグ STI Sport EX主要諸元
・全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm
・ホイールベース:2670mm
・車重:1580kg
・エンジン:CB18型水平対向4気筒DOHCターボ
・総排気量:1795cc
・最高出力:177ps/5200~5600rpm
・最大トルク:30.6kgm/1600~3600rpm
・トランスミッション:リニアトロニック(CVT)
・JC08モード燃費:16.5km/L
・WLTCモード燃費:13.6km/L
・車両本体価格:409万2000円
■その歴史から紐解く 「アイサイトX」はなにがどうすごいのか?
スバルのクルマ作りといえば、「安心と愉しさ」。その根幹を成すのは先進安全装備の「アイサイト」だ。
古くは1999年の3代目レガシィから採用されたステレオカメラによる「ADA」から始まり、2006年に4代目レガシィに採用された「SIクルーズ」、そして2008年に同じく4代目レガシィについに「アイサイトVerI」が搭載。
2010年に5代目レガシィに採用され、「ぶつからないクルマ」のコピーで注目された「VerII」が大ヒットとなる。
新世代の安全装備「アイサイトX」
そして初代レヴォーグに搭載された「VerIII」に進化し、その最新バージョンが「ツーリングアシスト」だった。
では、新型レヴォーグから採用されたアイサイトX(エックス)は、これまでのアイサイトVerIIIツーリングアシストからどう進化したか。
まず、これまではステレオカメラのみだったシステムに新たに前側方レーダーや電動ブレーキブースター、後側方レーダーとリアソナーを組み合わせて新たに衝突回避をサポートするシチュエーションを増やした。
ブレーキ制御だけで衝突回避が困難なケースでは、システムが操舵を制御して衝突回避をサポート(約80km/h以下)
また、ステレオカメラは従来の日立オートモティブシステムズ製からスウェーデンのVeoneer社製に変更。画角を2倍にして検知範囲を広角化し、画素数を230万画素に増加させた。
このほか、準天頂衛星やGPSからの情報に加え、3D高精度地図データを利用し、カーブ前や料金所前の速度制御、アクティブレーンチェンジアシスト、渋滞時ハンズオフアシスト(約50km/h以下)、ドライバ―異常時対応システムを実現しているのだ。
アイサイトXの機能については画像ギャラリーでも詳細に解説しているが、そのスゴさはやはり実際に試乗して実感してみてほしい。
(TEXT/編集部)
約50km/h以下での走行中、渋滞時のハンズオフ走行と発進をアシストし、渋滞のストレスを軽減する
【画像ギャラリー】全17枚の画像で首都高を走り抜ける最新レヴォーグとアイサイトXの解説をじっくりチェック!!!
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みんなのコメント
数十年前とさほど収入も変わっていない世の中で、
その頃の400万円の車って、相当な高級車でしょ。
レヴォーグって金額関係なしに
世界で一番優れた車ってことになりますね。
へ〜