■見た目はシックな印象ながらハイパフォーマンスなセダンを振り返る
高性能なエンジンを搭載し、優れた足まわりやブレーキによって速く走ることに特化したモデルといえば、スポーツカーが挙げられます。
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スポーツカーは高い走行性能だけでなく見た目にもスピーディな印象で、派手なデザインの外観を採用しているのが一般的です。
高性能さがわかりやすいスポーツカーは、走り好きのユーザーからは昔から人気のモデルですが、おとなしい外観で実は高性能というモデルも大いに魅力的です。
最近はほとんど耳にしなくなりましたが、そうしたクルマのことを「羊の皮を被った狼」と呼んでいたこともあり、あえて好むユーザーも散見されました。
そこで、ちょっと前まで販売されていたシックな見た目の高性能なセダンを、3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「レジェンド」
1985年に登場したホンダ初代「レジェンド」は、「アコード」の上位に位置するフラッグシップモデルとして開発された高級セダンで、アメリカでは高級車ブランドのアキュラ立ち上げにも重要な役割を担っていました。
他メーカーの高級セダンよりもスポーティさを強調したデザインやコンセプトで、その後も代を重ねて2004年には4代目が登場しました。
4代目レジェンドの大きな特徴はふたつあって、ひとつは最高出力280馬力という自主規制値を国内モデルのなかで初めてオーバーした、300馬力を発揮する新開発の3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載したことです。
そしてもうひとつが、世界初となる4輪の駆動力を制御する「SH-AWD(スーパーハンドリングAWD)」を採用したことで、カーブの内側と外側それぞれのタイヤの駆動力だけでなく、前後の駆動力を最適に制御し、タイヤのグリップ力を最大限に保つシステムとなっていました。
SH-AWDはカーブの侵入から脱出までを、スムーズかつ安全に高い速度を維持でき、4代目レジェンドはハイパワーなエンジンと相まって、ラグジュアリーセダンながらスポーツカー並の走行性能を発揮すると高く評価されました。
ボディも3代目の重厚なイメージから一新して、初代に原点回帰したようなスポーティかつスタイリッシュなフォルムを採用。
しかし、すでにセダンのニーズは低下しており、4代目レジェンドは2012年に生産を終了し、一旦はレジェンドの系譜は途絶えてしまいましたが、2014年にはよりパワフルな5代目が復活を果たしました。
そして、2021年3月には自動運転レベル3を実現した「レジェンド ハイブリッドEX・Honda SENSING Elite」を発売(リース販売)して大いに注目されましたが、2021年をもって生産を終える予定です。
●スバル「レガシィB4 2.0GT DIT」
1989年に発売されたスバル初代「レガシィ」は、トップグレードにハイパワーなターボエンジンと4WDシステムを組み合わせ、高性能なセダン/ステーションワゴンとして一躍人気車となりました。
そして、その後も同様なコンセプトで代を重ねて2009年には5代目がデビューし、北米市場を意識して全長4730mm×全幅1780mm×全高1505mm(B4)と従来よりもさらに大型化したことが話題となりました。
5代目において当初から高性能グレードとしてB4とツーリングワゴンにラインナップされたのが、「2.5GT Sパッケージ」で、搭載されたエンジンは最高出力285馬力を発揮する2.5リッター水平対向4気筒ターボです。トランスミッションは6速MTと5速ATが設定され、上質なハイパフォーマンスモデルに仕立てられていました。
さらに、2012年にはシリーズ最強の最高出力300馬力を発揮する、2リッター水平対向4気筒直噴ターボエンジンを搭載した「2.0GT DIT」が誕生。
トランスミッションはリニアトロニック(CVT)のみとされ駆動方式はフルタイム4WDで、走行モードが選択可能な「SI-DRIVE」を標準装備し、低燃費かつスポーティな走りを両立していました。
足まわりにはレガシィ伝統のビルシュタイン製ダンパーが奢られ、優れた走行安定性とハンドリングを実現。
しかし、2014年に6代目がデビューするとツーリングワゴンは廃止され、B4のエンジンも175馬力の2.5リッターの自然吸気のみとなったことから、ハイパワーなターボエンジン車は消滅してしまいました。
その後、レガシィB4は2020年に国内向けの生産を終え、長い歴史に幕を下ろしました。
●トヨタ「マークX」
少し前まで、トヨタのセダンラインナップは現在よりも充実していました。しかし、近年は急激にラインナップが減少し、そのなかの1台が、一時は国内でも屈指の人気セダンだった「マークII」の系譜を受け継いでいた「マークX」です。
マークXは国内で数少ない後輪駆動のセダンで、初代は2004年に登場。2009年には初代からキープコンセプトとしながらも、デザインやメカニズムを大きくブラッシュアップした2代目が発売されました。
エンジンは最高出力203馬力を発揮する2.5リッターV型6気筒と、トップグレードの「350RDS」(後期型)には318馬力を誇る、3.5リッターV型6気筒を搭載。大排気量自然吸気エンジンという、こちらも国内では希少な存在でした。
外観は精悍な印象のフロントマスクに流麗なフォルムが特徴で、フォーマルな印象もあるスポーツセダンといったイメージに仕立てられていました。
足まわりはフロントにダブルウイッシュボーン、リアにマルチリンクを採用。前後重量配分はFR車として理想に近いフロント54:リア46を実現し、シャープなハンドリングと優れたコーナリング性能を発揮しました。
トータルバランスに優れ、まさに大人のための高性能セダンだったマークXですが、2019年をもって生産を終了。
現在、限定モデルの「マークX GRMN」を除けば、350RDSでも200万円台から中古車の入手が可能で、かなりコストパフォーマンスが高いセダンといえるでしょう。
※ ※ ※
高性能なセダンというと世界的にはまだ一定の需要が存在し、欧州車を含めると豊富にラインナップされています。
しかし、高級化も顕著で、かつてのような2リッター以下のエンジンで比較的な安価な高性能コンパクトセダンは、もはや希少な存在です。
今後、セダン人気の復活はかなり難しい状況にあるため、ますます貴重なモデルとなると考えられます。
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