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【クルマ物知り図鑑】オート3輪から4輪車の時代へ。ユーザーの夢を運んだシンプルなタフギア、1959年日産キャブライト

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【クルマ物知り図鑑】オート3輪から4輪車の時代へ。ユーザーの夢を運んだシンプルなタフギア、1959年日産キャブライト

打倒3輪トラックを目指して開発された働くクルマ

 黎明期の日本のモータリーゼーションを下支えした働き者、それがキャブライトだった。キャブライトは1958年の東京モーターショーでデビューした新型コマーシャルカーである。ダットサン・セダン110型&ダットサン・トラック120型のメカニズムを流用したセミキャブオーバー型トラック(A20型/850kg積み)が最初に発売された。

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 キャブライトの直接のライバルは当時、小型トラックの主流だった3輪トラックだった。シンプルなメカニズムとリーズナブルなプライスを武器にした3輪トラックは1950年代のユーザーのハートを射止め、町の風景の一部ともなっていた。しかし3輪トラックは、走行安定性や快適性面などで大きな欠点があった。3輪トラックのユーザーは誰もが「できることなら4輪トラックに乗り換えたい」と考えていたという。3輪トラックは、4輪トラックに移行する前のいわば「我慢グルマ」だったのだ。

 キャブライトは、3輪トラックのユーザーの乗り換えに最適なモデルだった。850kgの十分な積載量を持ち、エンジンはダットサン・セダンやトラックで実績のある直列4気筒のB1型/850cc(27ps/4200rpm)を搭載。前後ともリーフリジッド式サスペンションを持つ足回りやシャシーもダットサン・セダンやトラック用をベースとしていた。キャブライトは、3輪トラックのユーザーが羨望の眼差しで見ていたダットサン・セダン&トラックのメカニズムをベースにした小型トラックだったのである。しかもキャブライトには強力な武器があった。お買い得なプライス設定である。4輪モデルながら、ライバルの3輪トラックより安い戦略的な価格を提示したのだ。

好評を背景に1959年ライトバン登場

 キャブライトはデビューと同時にユーザーの高い評価を受けた。翌年の1959年6月には各部をマイナーチェンジし、ライトバンやパネルバン、ダブルキャブ・トラックなどの魅力的なバリエーションを追加する。なかでもライトバンは、ウィークデイは仕事の足として使え、週末は家族な仲間とドライブを楽しめるマルチユースモデルとして注目を集めた。

 ライトバンは、現在で言うミニバンのようなフルメタルボディを持ち、定員は5名。前席2名、後席3名掛けのシートを備え、5名乗車で500kg、2名乗車で600kgのラゲッジ積載が可能だった。リアゲートは観音開き方式を採用。後席用の独立ドアを持たない構造で、後席への乗降は助手席全体を前倒しして行う方式だった。

 ちなみにメカニズム面はトラックと共通。27ps/4200rpmのエンジンは前述のようにダットサン・セダン&トラック用を流用し、シャシーもダットサン・セダン&トラックをベースにしていた。走りはコマーシャルビークルとしては乗り心地がよく、シンクロ付きの4速ミッションや操作の楽な乗用車的な吊り下げ式ペダルなどで運転もしやすかったという。ちなみにカタログ上のトップスピードは75km/hだった。

低価格の秘密!? それは徹底したシンプル装備

 ところでキャブライトの低価格設定には秘密があった。徹底的なシンプルな設計によって成し遂げられたものだったのだ。シンプル設計ぶりが端的に現れていたのは室内各部の仕立てで、内装には豪華なトリムはいっさいなく、金属パネルがむきだし。シートもパイプにクッションを貼っただけのハンモックタイプで、サイドウインドーの開閉は手動上下スライド方式だった。ラジオやライターはもちろんない。キャブライトのシンプルぶりは、1950年代末に発表された点を考慮しても徹底していた。メインライバルの3輪トラックも装備面はシンプルだったが、それを上回っていたほどだ。乗り味は乗用車ライクでも見た目や室内の雰囲気はスパルタンそのもの。そのスパルタンさは低価格を実現する工夫とはいえ、しだいにユーザーの不満点になっていく。

 キャブライトのシンプルさは、キャブライトと同様に、3輪トラックをメインライバルに据えてデビューしたトヨタのトヨエースとは対照的だった。トヨエースは内外装ともに乗用車ライクな仕立てとしそれをセールスポイントのひとつとしていた。現在の目で見るとキャブライトのシンプルぶりは新鮮で、機能美を感じる。しかし当時のユーザーが求めていたのは機能美以上に豪華さだったようだ。キャブライトは人気が高かったものの、トヨエースを上回る販売セールスを記録することはついにできなかった。

対米輸出成功を記念した大胆なデビューキャンペーン

 キャブライトは、デビュー時に斬新な懸賞キャンペーンを展開した。なんとキャブライト50台が当たる「対米輸出記念・謝恩セール」と銘打ったキャンペーンである。「日本の自動車業界のトップを切ってダットサン乗用車の対米輸出に成功したことを記念するキャンペーン」と、当時メーカーでは説明していたが、実質的にはブランニューモデルであるキャブライトの知名度をアップさせることを目的としていた。

 キャンペーン期間は、1958年7月1日から9月30日までで、期間中にダットサン、オースチン、ジュニア、キャブオールなどの日産各車を新車で購入したユーザーに抽選券1枚を進呈、抽選でキャブライトなど豪華商品が当たるシステムだった。商品は特賞がキャブライト50台、1等は電気冷蔵庫かテレビでこちらも50台、2等は電気掃除機(50台)、3等はトランジスタラジオ(100台)だった。すでに日産各車を購入したユーザーがさらにもう1台、キャブライトを欲しがるかどうかは別として、この懸賞キャンペーンは現在の標準でも豪華そのもの。大いに注目を集め、一気にキャブライトのネーミングが知れ渡ったという。

日産キャブライト 主要諸元

モデル=1959年式キャブライト・ライトバン
全長×全幅×全高=3720×1603×1800mm
ホイールベース=2220mm
トレッド=フロント:1294/リア:1304mm
車重=850kg
エンジン=850cc直4SV
エンジン最高出力=27ps/4200rpm
最高速度=75km/h
最小回転半径=5m
サスペンション=フロント:リーフ・リジッド/リア:リーフ・リジッド
ブレーキ=前後ドラム
タイヤサイズ=5.50-15-6PR
駆動方式=FR
乗車定員=5名

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みんなのコメント

6件
  • *****
    昔のクルマのカタログって
    実写じゃなくてイラストだったのが
    かえってノスタルジーを感じる
  • may********
    トヨエースもそうでしたが、そもそもキャブライトはオート三輪の刺客。デビュー当時はオート三輪と同等又は更に安価を目標に開発されました。
     但し鉄板が薄い、エンジン等は旧型転用等のデメリットがあり、販売ターゲットは鮮魚店、土建屋等車がすぐ痛む代替え需要が早い業者向けにセールスしたと聞きます。耐久性が保証できないので、別の方の投稿にありますが、昭和33年生れの方でも現役車輛を見ないのは、当然の結果です。

     キャブライトやトヨエースはオート三輪の刺客として一定の役割を果たしましたが、これらの車輛が現存しないのは、第一次クラシックカーブームの時、オート三輪はマニアの救いの手が入るが、これ等は手が入らず、その後幾度のブームでも救いの手がなかった為、現在では絶滅レベル(残存数が10台未満)となりました。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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