第1回日本グランプリでも活躍した『貴婦人』
国産車初の量産スポーツカーとして、1961年10月にデビューした『ダットサン・フェアレディ1500』(SP310型)。
【画像】1969年式ダットサン・フェアレディとオーナーの笹本和彦さん 全21枚
イギリス車を彷彿させるスマートなオープンボディに直列4気筒OHVエンジンを搭載した『フェアレディ=貴婦人』は、そのエレガントなスタイルで人々を魅了しただけでなく、持ち前のスポーティな走りで黎明期のモータースポーツでも活躍。確かな足跡を遺した。
1963年5月に開催された第1回日本グランプリでは、日産自動車を代表するスポーツカーとして孤軍奮闘。MGやトライアンフといったヨーロッパの強豪を敵にまわし、スポーツカーのB-IIクラスで見事優勝したことは広く知られるエピソードだ。
この第1回日本グランプリでの勝利を受け、SUツインキャブ仕様となったSP310型は、1965年5月に排気量を1595ccとしたSP311型に発展。
その後、1967年3月にツインチョーク・ソレックスキャブレター2基を備え、排気量を1982ccとした直列4気筒SOHCエンジンを獲得し、最高出力145psを誇るSR311型へと進化。国内外での評価をより一層高いものにしていった。
SP時代からダットサン・スポーツの名で輸出されていたフェアレディは、いずれのモデルもアメリカ市場を中心に大ヒット。後継車となったフェアレディZがデビュー当初から海外で受け入れられた背景に、SP/SR型フェアレディの活躍があったことは周知の事実だ。
1977年に購入したフェアレディでTBCCに参戦
「このSR311型フェアレディは1969年式で、1977年に購入しました」
そのように話してくれたオーナーの笹本和彦さんは66歳(取材時)。去る12月1日に袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催された『第47回東京ベイサイド・クラシック・カップ・シリーズ』(TBCC)のクラブマンズ・カップに初参戦した。
今回のTBCCは12シーズン目の第3戦だったが、前回(第2戦)のスポーツ走行クラスで自身のフェアレディを走らせて走行感覚をつかみ、すぐさまレース形式走行会にエントリーしたそうだ。
「いろいろイジっていますが、TBCCに参戦するためにモディファイしたのではありません。エンジンはオーバーホールして排気量が2080ccになっており、ハイカムになっています。駆動系はノンスリップデフになっていて、それらの仕様変更は45年前に行いました。ナルディのステアリングも45年前から使っています。購入した当初となる10代の頃はハードトップではなく純正の幌仕様で乗っていました」
40数年前に『タックス』に出ていたらしいが、その後、スーパーカーに乗るようになってポルシェ911ターボ(930型)やフェラーリ・テスタロッサを愛用。フェアレディを20年以上ガレージに放置してしまったので、12年前に各部をリセットし、路上復帰させた。
「修理して乗れるようになったのですが、またブランクができてしまい、昨年(2023年)、再びリフレッシュしました」
終活でポルシェ911カレラは手放すかもしれない
「昨年、フェアレディに電動ファンを取り付け、電磁ポンプを車体の後部に移動。ウォーターポンプも修理しました。ウェーバーキャブレターの口径は48φ、オートルックのバケットシートは当時モノです。助手席のシートとロールケージは日産純正品で、ロールケージは15年前に交換しました」
クラシックカーは数年に一度のスパンで各部のリフレッシュが必要になるが、笹本さんもリセット作業をしっかり実践しており、いま、愛車のSR311型フェアレディはいい状態に仕上がっている。
長年連れ添った相棒が再びシャキッとしたことも要因のひとつになっているのかもしれないが、現在、笹本さんは終活の一環としてもう1台の趣味グルマを手放そうとしている。それは993型のポルシェ911カレラで、写真を拝見したらサーキット走行用にセンスよくモディファイされていた。
「930型の911ターボや964型の911に乗った後、993型の911カレラを購入しました。このクルマもMT仕様です。ポルシェクラブの走行会で富士スピードウェイを走ったりしていましたね。実はTBCCで走らせたこともあります」
SR311型フェアレディで袖ヶ浦フォレストレースウェイを走った際のベストラップタイムが1分29秒台となる笹本さん。911カレラから降りる日はまだまだ先になると思うので、深紅のポルシェでサーキットを疾走している勇姿も拝見したいところだ。
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