現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 来年1月1日から車検証がICカードに! そもそも車検制度をもっと簡素化するべきではないのか?

ここから本文です

来年1月1日から車検証がICカードに! そもそも車検制度をもっと簡素化するべきではないのか?

掲載 92
来年1月1日から車検証がICカードに! そもそも車検制度をもっと簡素化するべきではないのか?

 国土交通省が3月17日に車検証のICカード化を2023年1月1日から実施するため、関連する法制度を改正すると発表しました。

 そこで、そもそも車検制度とはどんなものか? もっとアメリカのように車検制度そのものをなくすべきではないのか? もっと簡素化するべきではないのか? さらにいえば、これを機に車検制度を見直すべきではないか?

来年1月1日から車検証がICカードに! そもそも車検制度をもっと簡素化するべきではないのか?

 今回は、車検証のICカード化を期に、車検制度そのものについてもの申す!

文/高根英幸
写真/国土交通省、Adobe Stock(トビラ:kumi@AdobeStock)

■すでにデジタル化されている車検証

出展:国土交通省 自動車検査証の電子化に関する検討会 第11回参考資料から

 国土交通省が発表した車検証のICカード化は、2023年1月1日(軽自動車は2024年1月1日から)から紙の車検証ではなく、ICカードとするもの。

 ようやく車検証もデジタルになるのか、と感じた読者諸兄もおられるかもしれないが、実際には紙だからアナログ、というのは思い込みですでに車検証の情報はデジタル化されており、QRコードにより管理されている。

 QRコードで重量税の情報や車検の予約番号の確認なども行なっていることを先日、筆者はユーザー車検を受けて体験した。

電子車検証はA6サイズの文庫本相当の大きさ(出典:国土交通省)

現在の車検証はA4サイズでグローブボックスには2つ折りにして入れていた人も多いはず。A6サイズだとすんなり入りそうだ(出典:国土交通省)

 電子車検証はA6サイズの厚紙にICタグ(105×177.8mm、文庫本相当)を貼付したもので、継続検査、変更登録などによる記載事項の変更を伴わない基礎的情報を車検証巻面に記載するそうだ。

 電子車検証に記載されない情報は「車検証情報閲覧サービス」アプリで、電子車検証に記載されたセキュリティコードを入力し、ICタグを読み取ると閲覧できる。

 車検証有効期限など変更される内容は電子車検証の券面に印刷されず、基礎的な内容のみ記載される。

 アプリの主な機能は電子車検証巻面にない事項の確認が可能で、OSS申請やリコール情報などの確認(オンラインのみ)ができるという。車検証閲覧アプリは、車検証原本を所持する者または提示を受けられる者が24時間365日利用できる。

 また電子車検証巻面の左下には、初めて固有の英数字14桁の車両IDが印字される。この車両IDはナンバーやオーナーが変わるなど自動車のライフサイクルを通して不変なため、車両識別が可能となり、将来的にさまざまな情報連携の活用が見込まれるという。車両IDの頭文字は、登録車はT、軽自動車はKとなる予定。

 車検証ICカード化導入に向けた今後のスケジュールだが、2022年3月末にパブリックコメントを実施し、5月に関係省令・通達発出。

 記録等事務代行システムについては現在、システム設計、開発が進められており、実証実験を9月に実施。

 2023年1月より登録車の電子車検証を導入され、サービスの提供が開始される予定。軽自動車については、2024年1月に電子車検証が導入される予定となっている。

 車検証の電子化はディーラーなどの指定工場(いわゆる民間車検場)は工場内の検査ラインで検査して合格したクルマの新しい車検証を陸運支局や検査登録事務所で発行してもらう必要がなくなり、ネット回線を利用してICカードを上書きしてもらえば済むことになる。

 つまり今回の改正は行政機関が目指しているOSS(ワンストップサービス)の一環で、引っ越しに伴う手続きの煩雑さなどを解消させることに付随しているものの、実際に恩恵を受けるのは自動車整備業者、それも民間車検場くらいのものではないだろうか。

■車検はどんどん簡素化されている

 先日、筆者はユーザー車検で自分のクルマの車検を取得したが、2年前と比べてさらに検査は簡素化されていると感じた。

 具体的にはホイールナットの締め付けをチェックしていなかった。といっても柄の長いハンマーでホイールナットをコンコンと叩き、鈍い音がすれば緩んでいると判定するもので、以前から全車両で実施している印象はなかった。

 それでも小型トラックも混じっての検査ラインでのことだから、これは車種によってはちょっと問題があるのでは、と思ったくらいだ。乗用車に比べて、ホイール回りの負担が大きいトラックは、大型トラックでホイールナットの緩みからボルト破断によるホイール脱落事故が問題になっているからだ。点検不足で小型トラックでも同様の事故が起こらないとも限らない。

 また3月の中旬のことだったが、検査ラインは2つのコースしか使っていないなど、非常に空いている印象を受けた。陸運支局の事務所内もガラガラだった。

 誘導員の男性によれば、「ここ十数年で一番の少なさ」らしい。これから年度末に向けて混んでくるのかもしれないが、クルマの流通量が減って、車検を受けるクルマも減っている印象だ。

 クルマを検査する検査員も2年前と比べて、さらに減っていると感じた。検査自体もクルマを持ち込んだドライバーが検査ラインで操作するだけで検査が進められていくほど、現在の車検は自動化されているのである。

 クルマのメンテナンスフリー化が進んでいて、2回目(初年度登録から5年目)の車検まで、オイル交換以外のメンテナンスはほとんど必要ない、というクルマも珍しくない。ディーラーのスピード車検での不正行為は、こうしたクルマの信頼性の高さ、メンテナンスフリー性がアダとなってしまったという面もあるなら皮肉なことだ。

 しかしせっかく車検証がICカード化されるのであれば、より効率良く国民の負担を減らせるものへと車検制度を変えていく必要があるのではないだろうか。欧米など他の自動車先進国と日本の車検制度を比較して、この先の日本の車検制度のあるべき姿を考えてみよう。

■改造が日本よりも自由な米国にも車検制度はある

 改造が自由(自己責任)と思われているが、州によっては排ガス検査だけは義務付けているところもある。米国50州のうち、車検が存在しないのは8州だけだ。そのほかの州はブレーキと排ガス検査だけなど、非常に簡素化されているところが多く、費用も数千円レベルで手軽に受けることができるものとなっている。

 そのほか、欧州やオーストラリアなどでも車検制度は存在する。大抵は新車から3、4年は免除されており、そこから2年ごと(国によっては毎年)に検査を受けることが義務付けられている。

 日本の車検は高いと思われているが、それは自賠責保険や重量税、24ヶ月の定期点検などを含んだ総費用のことで、検査手数料自体は海外と比べても安い(千数百円レベル)ものだ。

 日本の車検では、さらに点検によって消耗した部品を交換すれば、総費用は20万円を超えることも珍しくない。そのため車検費用の見積もりを見て、新しいクルマへの買い替えを検討する(営業マンが勧めてくる)というのが、日本の自動車販売業の基本パターンなのだ。しかし平均車齢が伸びていることから、この戦術もユーザーにだんだん通用しなくなっている。クルマが壊れ難くなったのも、その一因だ。

 自動車整備業界を支えてきた収益の柱だったが、EVが増えていくことで今後業界は先細りしていくし、整備士も人材不足で確保するのが大変になる。そのため検査行程を簡素化してユーザーの負担も減らすことが、自動車業界を活性化させて日本の産業界や経済を盛り上げることにつながるハズだ。

 日本も納税は別にして、車検は車両の安全性と排ガスだけにして、残りは自己責任でもいいのではないだろうか。日本の車検制度がしっかりしているからこそ、ドライバーは何の不安もなく安心してクルマを乗り回せているというのは事実だが、ここまで車検を厳格にする必要性は薄れているとも思うのだ。

 なぜなら海外で日本車の人気が高いのは、リーズナブルで壊れないから。それは車検制度が簡素なものでも、クルマの高い信頼性によって日常の移動を確保出来ていることで築き上げられたものだ。

 それでも日本では、念を入れて点検整備して車検に通している、というのが実情だ。もちろん点検整備によって、クルマの問題点が判明して安全に走行できているという面もある。

 ユーザー代行車検によって車検だけをパスしたクルマが異音を発しながら(大抵はブレーキパッドの限界か、ベルトテンショナーの不良)走行しているクルマを見かけることもあるから、そのあたりは街頭の警察官なども積極的に指導するなどの対策が必要だろう。

 納税も車検の目的としては大きいから、マイナンバーカードとも紐付けることで車検証のICカードでもマイナンバーカードでも納税や確認ができるようになれば、ユーザーのメリットにはなりそうだ。

 同じことは中古車についてもいえる。海外では中古車販売店というのはあまり存在せず、中古車は個人売買するのが常識で、中古車販売店は初心者や多忙な人向けにサービスを提供する業者で、それ故にボラれることもあって如何わしい職業と見られている地域も存在する。

 それに対して日本は、中古車市場というものがしっかりと確立しており、品質や保証もしっかりとした中古車がディーラー系での販売店で用意されている。ユーザーも安心して購入して乗り回せる環境が整っているのが日本の中古車事情で、自己責任で売買し整備業者に依頼する欧米とはかなり感覚が異なるのだ。

■車検が大幅緩和された場合にデメリットはあるか

国で定める「騒音規制」が「フェーズ3」に引き上げられようとしている。フェーズ3になると電気自動車のタイヤ騒音のみでも規制をクリアできない可能性があり、保安基準も大幅な見直しが必要になるかもしれない(瑛之 新井@AdobeStock)

 日本もアフターパーツの装着などカスタムに関しては、かなり規制緩和された印象だが、相変わらずの頭が固いと思えるような保安基準も存在している。

 例えばマフラーの音量やウインドウフィルムなどを厳格に規制することの合理性が今一つ理解できない。国際基準化で統一されている、というのであれば日本独自の右ウインカーレバーはどうなるのだろう。

 サイドウインドウに透明なUVと熱線カットをするフィルムを貼っていて、それが経年劣化で透過率75%を下回ったからといって、どんな実害が生じるというのだ。真っ黒なフィルムで覆ってしまうと、横断歩道や交差点で側面にいる歩行者やドライバーとの意思疎通ができないし、こちらの存在を認識しているかも分からない。いわゆるアイコンタクトができない、という危険性はある。

 そんな極端なケースは路上で取り締まればいいのであるし、車両の改造だけでなく自分勝手な運転をしているドライバーは軽微な違反でも検挙するべきではないだろうか。

■逆に車検が簡素化された場合のデメリットを考えてみよう。

 ドライバーは日常点検や走行中の異音、振動、異臭などに気付いたら、クルマをディーラーなどの修理工場に持ち込むことになる。それはJAFなどのロードサービスに頼ることにもなりそうだ。

 現状でもロードサービスはかなりの出動件数があり、盆暮れや行楽のシーズンには稼働率が跳ね上がる。車検が簡素化されたら、この傾向はますます強まり、ロードサービスを依頼しても数時間待ちは当たり前の状況になる可能性がある。

 そしてブレーキの制動力不足や、灯火類の整備不良が原因で交通事故が起こった場合、ドライバーにはより大きな賠償責任や刑事罰、行政処分が下されることになる。したがって、自分でクルマを点検やメンテナンスができないドライバーは、結局定期的な点検を整備士にしてもらう必要がより高くなるのだ。

 それに車検を簡素化するといっても、廃車まで同じレベルの車検では問題が起こる可能性がある。欧米では車齢が10年前後を迎えた頃から、車検が短くなっている地域も多い。それでも日本の車検や24ヶ月点検と比べれば簡単な車検だが、日本でも車検の期間については見習う必要があるだろう。

 実情に合った車検制度へと切り替えていくのは、ドライバーの意識も変えていく必要があり、なかなかひと筋縄ではいかないことになりそうだ。

こんな記事も読まれています

リカルド予選18番手「感触は良くなったが、タイムが向上しない。新パーツへの理解を深める必要がある」/F1第10戦
リカルド予選18番手「感触は良くなったが、タイムが向上しない。新パーツへの理解を深める必要がある」/F1第10戦
AUTOSPORT web
【正式結果】2024スーパーフォーミュラ第3戦SUGO 決勝
【正式結果】2024スーパーフォーミュラ第3戦SUGO 決勝
AUTOSPORT web
940万円のホンダ「プレリュード」出現!? 5速MT搭載の「スペシャリティモデル」がスゴい! 23年落ちなのになぜ「新車価格」超えた? “極上車”が米で高額落札
940万円のホンダ「プレリュード」出現!? 5速MT搭載の「スペシャリティモデル」がスゴい! 23年落ちなのになぜ「新車価格」超えた? “極上車”が米で高額落札
くるまのニュース
HKSファンなら愛車にペタリ…HKSがロゴステッカー4種類を発売
HKSファンなら愛車にペタリ…HKSがロゴステッカー4種類を発売
レスポンス
乗用車じゃ当たり前の技術ハイブリッド! 大型トラックはいまだ「プロフィア」だけなのはナゼ?
乗用車じゃ当たり前の技術ハイブリッド! 大型トラックはいまだ「プロフィア」だけなのはナゼ?
WEB CARTOP
江戸は「坂」の多い町 物資を運ぶ苦労は並大抵ではなかった!
江戸は「坂」の多い町 物資を運ぶ苦労は並大抵ではなかった!
Merkmal
雨の第3戦SUGOは安全面を考慮し赤旗終了。近藤真彦会長「最後までレースができなかったことをお詫びします」
雨の第3戦SUGOは安全面を考慮し赤旗終了。近藤真彦会長「最後までレースができなかったことをお詫びします」
AUTOSPORT web
高速道路上に「なかったはずのトンネル」が出現!? 風景がめちゃくちゃ変わる大工事 これからスゴイことに!?
高速道路上に「なかったはずのトンネル」が出現!? 風景がめちゃくちゃ変わる大工事 これからスゴイことに!?
乗りものニュース
トヨタが手がけたホンキのアソビグルマ──新型クラウン・クロスオーバーRS“ランドスケープ”試乗記
トヨタが手がけたホンキのアソビグルマ──新型クラウン・クロスオーバーRS“ランドスケープ”試乗記
GQ JAPAN
野尻智紀&岩佐歩夢のコンビでSF王座争いリードするTEAM MUGEN。しかし現状には満足せず「安定感が足らない」
野尻智紀&岩佐歩夢のコンビでSF王座争いリードするTEAM MUGEN。しかし現状には満足せず「安定感が足らない」
motorsport.com 日本版
ハミルトンが予選3番手、PPと0.3秒差「実際にはそれほど差はないはず。優勝争いに加わりたい」メルセデス/F1第10戦
ハミルトンが予選3番手、PPと0.3秒差「実際にはそれほど差はないはず。優勝争いに加わりたい」メルセデス/F1第10戦
AUTOSPORT web
アルピーヌF1、カルロス・サインツJr.争奪戦に名乗り! 新加入ブリアトーレが早速動いた!?
アルピーヌF1、カルロス・サインツJr.争奪戦に名乗り! 新加入ブリアトーレが早速動いた!?
motorsport.com 日本版
「5ナンバー車」かと思ったら「7ナンバー」だったのですが… 分類番号700番台はレア? どんな車につくのか
「5ナンバー車」かと思ったら「7ナンバー」だったのですが… 分類番号700番台はレア? どんな車につくのか
乗りものニュース
「あなたはやってる?」 乗車前の「推奨行為」ってナニ? 教習所で教わるもやってる人は少ない安全確認とは
「あなたはやってる?」 乗車前の「推奨行為」ってナニ? 教習所で教わるもやってる人は少ない安全確認とは
くるまのニュース
「英国最大のバイクブランド」がスイスの高級時計メーカーと再コラボ! 世界270台限定!! 「特別なスポーツバイク」は何が魅力?
「英国最大のバイクブランド」がスイスの高級時計メーカーと再コラボ! 世界270台限定!! 「特別なスポーツバイク」は何が魅力?
VAGUE
F1分析|ラッセルに抑えられなければ勝機はあった……悔やむノリス。F1スペインGPの上位ふたりのレースペースを検証する
F1分析|ラッセルに抑えられなければ勝機はあった……悔やむノリス。F1スペインGPの上位ふたりのレースペースを検証する
motorsport.com 日本版
[サウンド制御術・実践講座]タイムアライメントでは正確な距離測定と音量バランス設定が成功の鍵!
[サウンド制御術・実践講座]タイムアライメントでは正確な距離測定と音量バランス設定が成功の鍵!
レスポンス
ハースVSマゼピン後援ウラルカリ、20億円規模のF1スポンサー契約めぐる法廷闘争がついに終了……? どちらも勝訴を主張
ハースVSマゼピン後援ウラルカリ、20億円規模のF1スポンサー契約めぐる法廷闘争がついに終了……? どちらも勝訴を主張
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

92件
  • その前に、フロントウインドに貼ってある車検シールをnシステムで読み取り、無車検車の取締、根絶をしてほしい。事故した時、無車検車、無保険車、加害者カネ無しでは、被害者に救いが無い。
  • 車検制度は今のままで良い。 問題は税金の多さと金額。何やねん重量税やらリサイクル料金やらって。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村