建築・建設・土木関係の仕事に従事する建設機械。用途によってさまざまな形状を持っているのだ。知れば知るほど興味がわいてくる奥深い「建機沼」にご案内しよう!!
※本稿は2023年10月のものです
編集制作/末永高章、中山修一
初出:『ベストカー』2023年11月26日号
建設機械にも自動化の波!? 働くダンプトラックがデカくてカッケェ!!!! なかなか見れない珍しい建設機械6選
■ダンプトラック/特撮の世界に飛び込んでしまったかのような違和感のあるスケール……こりゃ、走る建造物だ
資材を満載して現場を走るダンプトラック、コマツ HD785。90t級の積載量を誇る機械だが、走ると結構速いのだ!!
街や高速道路を土砂資材などを積んで走る単車のダンプトラックは、道交法と運送車両法の規定により、基本的に全長×全幅=12m×2.5mの対地サイズが決められ、積載は車両を含めた総重量で25tのため、実質的に12t程度までと決められている。
しかし建機の世界でいうダンプトラックは、公道を走るという制約がないためにサイズの制限はなし。積載重量も46t~100tといったものがザラに活躍している。
その大きさたるや、4階建てビルと同じくらいのものもあり、ドライバーは車体に据え付けられた階段を登って運転席に向かうというスケールの、まるで走る建造物だ。
ではこんなダンプトラックはどこで活躍しているのかといえば、採石場や砕土場、広大な街単位の地盤形成現場などだ。よって一般にはそうそう目にすることはない存在だが、確実に日本のどこかで今日も働いているのだ。
■圧倒のスケール感!! でも運転席は意外と普通
走行中のデモンストレーションとして、2台縦列でベッセルをダンプしたダンプトラック。キャタピラー 777Eだ
とにかく大きいだけで凄いといえる建機のダンプトラックは、そのベッセル(荷台部分)の形状が、石や土砂資材などを積載することに特化された“逆への字”形をしており、走行時は安定して移送でき、ダンプ時にはベッセルは垂直近くまで立ち上がるが、スムーズに排土できる構造となっている。
このダンプトラック巨大ぶりはイメージしていただけたかと思うが、実は運転は普通だったりする。階段やハシゴを登って運転席に座ると、もちろん視界はとても高いが、運転装置やシートは商用バンのイメージだ。
ステアリングも道路用自動車トラックより乗用車に近い垂直さだし、トランスミッションもトルコン式ATで、乗用車用のセレクターで操作する。ビックリするほど意外な普通の運転席なのだ。
■アーティキュレートトラック/見た目はボンネットトラックだが、秘めた性能は建機ならではのパフォーマンスを発揮して“運ぶ”!!
見た目はちょっとワイルドなダンプトラック、といった面持ちだ。写真のように悪路走破性はバツグンの性能を誇る
見た目はちょっと大きめの平台トラックといった姿をしているが、いやいや、立派に建機として現場に不可欠な存在なのがこのアーティキュレートトラックだ。ボンネットトラックの姿をしているが、基本的に公道走行は不可だ。
このアーティキュレートというワードはホイールローダーの項でも説明したが、“胴体を折り曲げて前輪操舵の代わりにするもの”だ。
その効果は泥濘地などでの確実な走破性能を挙げたが、このアーティキュレートトラックの場合はもうひとつ“荷台部分を作業に適した位置に確実に停めるため”という性能もある。
アーティキュレート構造を発揮して、どんな路面の現場でも細かく走り回って資材を移動する。荷台はもちろんダンプ構造で、後方のほか側方にもダンプして、次の作業に適した位置に資材を下ろすという性能も持っている。
そして何より、動きが速い。走行速度も早く、そのフットワークを生かして複数台による連携作業も得意とする、何ともツブシの効く建機なのだ。
■モーターグレーダー/昆虫のような姿に機能美を感じる!? 路盤資材を均等に均して平らな道路を創る機械だ
まるで昆虫のような姿をしているモーターグレーダー。獲物を狙うカマキリのような面持ちだ
道路整地のための車両型機械がモーターグレーダーだ。高速道路の大規模工事の際など、車線規制された部分の走行時などに目にした人は多いと思う。
3軸6輪を持った車両型の建機で、まるでカマキリのような姿が特徴的だ。ニョキッと伸びた前方は線が細い印象だが、実はとんでもなく強靭なソリッドの鉄骨で、実はこれは油圧ショベルの“付け根の腕”部分と同じブーム。
なので正しくは2軸4輪の車体から、1軸2輪が付いたブームが伸びている、という構造なのだ。
路面の出っ張った部分を削ったり凹んだ部分を埋めたりして、とにかく徹底的に均すのが使命。余った資材は脇に排土するため、ブレードは進行方向ナナメにセッティングされるのが常だ。
まだ舗装前の砂利資材が露出された路面を走って整地し、端まで行ったらクルっとUターンしてまた隣のレーンを均す。仕上げ一歩前のとても繊細で重要な仕事を行なう機械だ。
また、ブレードを交換することで除雪作業にも従事する。
■双碗作業機(日立 アスタコNEO)/2本の腕で独特のオペレーションをこなす孤高の存在。アニメで活躍してもよさげな機械だ
まるでカニのような姿を持つのが日立建機のアスタコNEOだ。油圧ショベルにもう1本の腕を付けたような感じで、これで一気にロボット感が増している
油圧ショベルを基本とした発展型の機械だが、油圧ショベルと異なり腕が2本ある、よりロボットに近いイメージの機械が、双碗作業機だ。
この機械は現在、日立建機の「アスタコ」が唯一のモデルとなっており、サイズは油圧ショベルと並べるなら20t級の中型機。
油圧ショベルのアタッチメントをバケットからグラップラ、プライヤなど、蟹バサミ的な“挟んで掴む”ものと“挟んでカットする”ものに交換したもので、ブームやアームの経路・系統は油圧ショベルと同様のものだ。
あの機動戦士のグループの“タンク”的な姿で、台座のクローラーを脚にしたら(できるのか!?)、だいぶ人型機に近づきそうだ。
鉄骨を片方の腕で挟んで、もう片方でブツンと挟み切ってしまう性能は、ちょっと怖いようなイメージだ。
こういった機械が実用稼動していると「もしかして……実は○○○って創れちゃうのでは?」と夢が膨らんでしまう。
■アタッチメントと特殊操作/必要に応じてアタッチメントを交換して対応 遠隔操作で危険回避も当たり前な世界だ!!
危険な現場では、ラジコン操作のオペレーションも行なわれる
油圧ショベルやホイールローダーなどは、アーム、ブームの先端にさまざまなアタッチメントを交換取り付けをすることができる。
掘削する爪のあるバケットを基本とし、蟹バサミのようなグラップラや、岩を砕く振動ドライバー、金属を選り分けて拾い上げる電磁石など、サイズも含めればそのバリエーションは無限だ。
建機の世界では“小物”扱い的なパーツだが、大型のバケットなどは現場まで、20tトラックで輸送することもしばしばという迫力の物体。これは幹線道路で積載走行しているシーンを見たことがある人も多いと思う。
ほかにも今どきの建機の特徴として、危険な場所での作業が必要な場合には、オペレーターが乗車することなく、離れた安全な場所からラジコン操作で作業を行なうという方法もすでに一般的だ。
さらに遠隔操作も実現されている。3Dモニターを見ながら5G通信での遠距離のリモート作業も、必要とあらば普通に行なわれている。
■クレーン車/求められる性能と要素が多すぎる……走りの性能と天下無双の吊り下げ能力を見ろ!!
加藤製作所のオールテレーンクレーンKA-3000R。オールテレーンクレーンは走行とオペレーションの運転台が別になっている。最大地上揚程は55m、最大つり上げ能力は300t(重荷重装置付)というスペックだ
ビル建設現場などでよく見かけるクレーン。工期が何カ月もある場合には、ビルから伸びるように設置される「据え付け型」のクレーンが活躍しているが、ここで紹介するのは、建機とはちょっと毛色が違うが「クレーン車」というヤツだ。
クレーン車にもクローラークレーンとホイールクレーンがあるが、「車」ということで道路を走行して現場で作業するタイプのものを紹介したい。
また、ベースが自動車車両であるトラッククレーンやキャブバッククレーンを除くとざっくり分けて、ラフテレーンクレーンとオールテレーンクレーンの2種が挙げられる。
本誌読者なら「テレーン」が「地形」を意味する言葉であることはご存知と思われるが、その名の通りでラフテレーンは荒れた地形・路面でも入り込める走行性能を持ち、オールテレーンはすべての地形・路面で……ということになりそうだが、実はオールテレーンの“オール”は道路において、という意味があるようだ。
なお、ラフテレーンは走行運転とオペレーションが同じ運転台で行なわれ、オールテレーンはそれそれが別の運転台を持っている。
■建機が半自動で作業してくれるって!?
機械の自動化・自律化と、施工オペレーションの最適化の両方のレベルアップにより、安全で生産性の高い現場を実現する
建機はいま、無人化・自動化などによる安全性と生産性向上の実現に向かって進んでいる。
このコマツのスマートコンストラクションでは、GPSやドローンを飛ばして作業現場の地形の3Dデータを取得。完成図面までにどういった作業で進めるか、シミュレーションや施工計画策定を行う。
機械には予め各部にセンサを搭載して、バケットの刃先の位置データを把握し、どこまで掘り進めて良いか判別。作業が半自動制御されるというもの。
作業位置の誤差もGPSの精度が高まっていることから、数センチ程度とのことなので、SFだと思っていたことがとっくに実現されていた!!
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みんなのコメント
…アレ絶対無許可だったと思うが、広めの道路なのに道幅一杯に向かって来るの見た時、一瞬状況が信じられなかったが、遠目にも分かるバカデカさだったから、道路外に出て止まって避けるしかなかった。(昭和の話だし、今思えば自衛隊の車だったのかもしれないけど、あの踏みつぶされそうな大きさと恐怖は未だに覚えてる。。。)