AC100V/1500Wコンセントがあればドライヤーまで使用可能
クルマの車内には、その昔、タバコに火をつけるシガーライターなるものが、灰皿とともに当たり前のように装備されていた。そう、電熱のライターでタバコに火がつけられたのだ。ソケットにはほかの電子パーツも取り付けることができ、たとえばポータブルナビや、ちょっと前までは携帯電話の充電コードの接続にも重宝されていたのである(スマホの充電は、今はUSBコンセントが主流だろう)。
一度経験すると付いていないクルマに乗れなくなるほど便利な装備11選
じつは、最近の新車でも、名称をシガーソケット改め、DC12Vの”アクセサリーソケット”として、USBが台頭する今でもほとんどのクルマに生き残りをかけて!? 付いている。さすがにこの禁煙ブームのなか!? 現在の新車ではライターとしては使えず、キャップが付いているだけだが(そもそも今のクルマには灰皿がない!!)、我が愛車も、そこに、最近、導入したポータブルナビゲーションなどを接続しているのだ。
もしシガーソケットがなければ、かなり大がかりな電源確保、コードの取りまわしが必要になるから、やっぱりあると便利だと痛感したばかり。前時代的装備でありながら、今でもなくてはならない機能装備のひとつ言えるかも知れない。
ところで、プリウスなどの一部のハイブリッドカー、PHV、EVであれば、DC12Vのアクセサリーソケットだけでなく、家庭用電源と同じAC100V/1500Wコンセントが標準、またはオプションで用意されているケースも多い。
つまり、ハリアーを例に挙げると、AC100V/1500Wコンセントを税込み4万4000円(高っ!!)で付けられるのは、ハイブリッドのみ。ガソリン車には、AC100V/100Wが税込み8800円でオプション設定されているだけなのだ(1500Wではない)。
AC100V/1500Wコンセントであれば、なんと炊飯器、コーヒーメーカー、掃除機、電子ケトル、ヘアドライヤーなどの家電品が使える電量が供給可能。一方、アクセサリーソケット同等の電力供給となるAC100V/100Wではスマホの充電、ミニ扇風機、ゲーム機ぐらいにしか対応せず、アウトドアや災害時などでの使い勝手、便利さは大きく異なってくる。さらに、AC100V/1500Wコンセントは、外部給電機能によって、クルマから外へ一般家庭の数日分から10日分の電力を供給でき、停電時でも家の中で電気を使うことができるのだから安心・便利極まりない。東日本大震災発生直後、停電した東北地方に全国のトヨタディーラーからエスティマHVが救援のために集結し、暗闇に明かりを灯し、電力を供給した事実は、今でも語り継がれるHVの便利さ、災害対応能力を示すエピソードである。
ハイブリッドを名乗っても1500Wが賄えないモデルもある
では、なぜ、一部のハイブリッドカーやPHV、EVにしかAC100V/1500Wコンセントが用意されないのだろうか。その理由は、当たり前のことながら、AC100V/1500W電源を供給できる、余裕ある容量のバッテリーの積載が不可欠だから。プリウスなどは2モーターを備えたストロングハイブリッドと呼ばれているが、1モーターのハイブリッド車、微細なモーターアシストのみのマイルドハイブリッドの、廉価かつ軽量コンパクトな小容量バッテリーでは、AC100V/1500Wの電力などまかなうことができないのである。数万円のコストやユーザーニーズも、セダンなど、車種によって採用されない理由となる。
現在、AC100V/1500Wコンセントを用意しているクルマは、三菱ではアウトランダーPHEV、トヨタではプリウス、プリウスPHV、ヤリスHV、アルファード&ヴェルファイアHV、ノア&ヴォクシーHV、RAV4 HV、RAV4 PHV、カローラツーリングHVなどのHV、PHVほぼ全車(レクサスも同様)、ホンダではホンダe、オデッセイHV、ステップワゴンHVなど、日産ではリーフ……というわけで、繰り返すが、HV、PHV(PHEV)、ピュアEVに限られている。もちろん、EVでもホンダeのように、ベースグレードには付かない、という価格戦略上の設定もあったりする。
ここでのポイントは、HV、PHV(PHEV)であれば、バッテリーが底をついても、エンジンを始動させることでバッテリーに充電できること。ピュアEVでは、充電しない限り、そのリカバリーができないという点だ。つまり、同じAC100V/1500Wコンセントでも、災害時、停電時により心強いのは、エンジンを積むHV、PHV(PHEV)ということになる。ガソリンがある限り、エンジンによる発電でバッテリーに電力を蓄え、電力を供給し続けることができるからである。
もっとも、ハリアーのオプション価格を見てもわかるとおり、AC100V/1500Wコンセントの値段は税込み4万4000円と決して安くはない。クルマをアウトドアライフで頻繁に使うような人は別にして、一般的に車内外でAC100V/1500Wコンセントを使う機会がどのぐらいあるか? そう考えると、災害時、停電時の給電設備として有効であることがわかっていても、車両本体価格をできるだけ抑えるため、オプションにしているケースが多いというのも納得できる。
とはいえ、クルマを便利に使うために、なんらかの小電力を供給する機能=電源は必要だから、今やシガー用ではないDC12Vのアクセサリーソケットがしぶとく生き残っているというわけだ。
日本は災害、地震大国でもあり、世界のクルマの電動化の流れとは別に意味で、HV、PHV(PHEV)に用意されるAC100V/1500Wコンセント、および給電機能が用意される、大容量バッテリー搭載の電動車の存在意義、価値は極めて大きいとも言えるだろう。
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