ターボをファミリーカーへ普及
近年ではターボエンジンは一般的なものになったが、かつては珍しい最新技術だった。フルラインターボを掲げ、差別化を狙った自動車メーカーもあったほど。
【画像】サーブ900 ブランド晩年の9-3と9-5 同時代のボルボ240も 全45枚
自動車のエンジンにターボチャージャーが搭載されたのは、1962年のオールズモビル・ジェットファイアーやシボレー・コルベア・モンツァから。1970年代へ時間が進んでも、ターボエンジンを搭載するモデルはほんの一握りだった。
そこへBMWが2002へ、ポルシェが911へターボを採用。伝説的なステータスを獲得するに至り、ターボ技術は急速に進化を始めた。
1977年、今はなきスウェーデンのサーブは、中型モデルの99へターボエンジンを搭載する。不要な排気ガスを逃がすウェイストゲート技術を与えることで、日常的な運転にも適していることを証明した。
さらに翌1978年、サーブは大幅に改良を加えた後継モデルの900を発表。ターボをファミリーカーへ普及させる、立役者となった。
サーブ900のモデルライフは長く、個性的なシルエットのハッチバックとサルーン、コンバーチブルが展開されている。樹脂製バンパーが目立っていたが、飛行機のキャノピーのような滑らかなフォルムが魅力といえた。
ファンの間では1978年から1994年に販売された初代の900を、クラシックと呼んでいる。合計4グレードが存在したが、今回はそのターボモデルに焦点を当ててみたい。
細かな改良が繰り返された900
発売当初、900 ターボの2.0L直列4気筒エンジンは147psを発揮。自然吸気の900より50%近く多い馬力を誇った。1985年には改良された16バルブエンジンを獲得し、177psを達成。活発な走りを求めるなら、こちらの900がオススメといえる。
当時の評論家も、後期モデルの勇ましいパフォーマンスを高く評価。ターボラグを減らした反応の良いドライビング体験が特長だった。
インテリアの品質や走りの洗練性、クルマとしての実用性にも優れていた。荷室容量は602Lもあり、内装パネルなどの作りもソリッド。リアシートには、3名が座れるシートも用意されている。
飛行機に発想を得たというシートは、人間工学に優れ座り心地も良好。長時間のドライブでも、疲れ知らずといえるものだった。
1994年に2代目900へバトンタッチするまでに、初代900には細かな改良が繰り返されている。1981年には3速ATが選べるようになり、1982年以降はノッキングセンサーを搭載し、エンジンを守りながら様々なグレードのガソリンへ対応させている。
同じ1982年には集中ドアロックも追加。1983年には、量産車初となる環境に優しいアスベストフリーのブレーキも採用された。
1987年には後期モデルとしてフェイスリフトを受けている。ヘッドライトやフロントグリル、バンパーなどのデザインが新しくなり、クルーズコントロールも装備。燃費も向上している。
スウェーデンの自動車史に刻まれた名車
長いモデルライフとなったサーブ900だが、そのうちの約25%へターボエンジンが搭載されていた。近年では英国でもめっきり初代を目にする機会が減っているものの、まだ入手困難というまでには至っていない。
900 ターボの魅力を最も味わえるのが、1986年に投入されたスタイリッシュな2ドアコンバーチブルだ。予算は1万ポンド(約152万円)は見ておきたいところ。過走行や追加の整備をいとわなければ、英国では3500ポンド(約53万円)前後から見つけられる。
スウェーデンの自動車史に刻まれた名車とともに、内燃エンンジ時代の末期を過ごすのも悪くはないだろう。
オーナーの意見を聞いてみる
エド・ウィーバー氏
「99以来、サーブが大好きになりました。これまでにターボエンジンの9-5 エステートや、9-3 コンバーチブルなどに乗ってきましたが、クラシカルなモデルとして900は最も妥当な選択肢といえました」
「1987年の16バルブ・ターボのコンバーチブルです。購入金額は当時7000ポンド。走行距離は20万kmを超えていますが、日常的に乗れるようにレストアしてあります」
「走りは最高です。季節を問わず楽しいですが、サーブというブランドがもはや存在しないのは、少し残念でもありますね。あと数年ほどコンバーチブルを維持して、クーペの900へ乗り換えたいと考えています」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
900のターボエンジンの耐久性は驚くほど高い。オーバーホールなしで64万kmも走れたというオーナーもいるようだ。タイミングチェーンは20万km毎の交換。8バルブ・エンジンの方が作業は難しい。
ターボチャージャーは32万kmくらいは問題なく回るが、排気ガスに含まれる白煙には注意したい。ノッキングセンサーなどの電子機器が故障することがあり、パワーの低下や吹け上がりの悪さが症状となる。
ボディ
ボディの深刻な錆びに悩んでいるオーナーもいる。年式の古い900では珍しくない問題ではある。サイドシルやサンルーフ周辺、給油口、ドアの下面、ホイールアーチ付近が主に錆びる部分。
バッテリートレイやガラス周辺、フロント・バルクヘッド付近などの状態も、購入時はよく観察したい。
トランスミッション
あまり積極的に運転すると、トランスミッションが耐えきれない。初期の4速MTの方が、パワーが低いためにリスクは小さい。
5速MTが壊れると、交換に英国では2000ポンド(約30万円)程は必要になる。試乗時は不意にギアが抜けないか確かめる。優しく運転していれば、48万kmくらいはもつ。
電装系とインテリア
あまり運転に支障が出る部分とはいえないが、一部の修理は予想以上に高い費用がかかることも。ヘッドライナーの剥がれは補修が簡単ではないし、スピーカーグリルの交換部品は見つけにくく高価。
シートは、内側のフォームが崩れてしまうことがある。テキスタイルの色あせも、年式を考えれば珍しくない。
英国ではいくら払うべき?
3500ポンド(約54万円)~5499ポンド(約84万円)
英国では見つからなくはないが、走行距離は30万km以上が中心。ある程度の整備は前提としておきたい。
5500ポンド(約85万円)~7499ポンド(約115万円)
ほどほどに維持されてきたコンバーチブルが英国では見つかる。
7500ポンド(約116万円)~9999ポンド(約154万円)
1993年式の変わった900 ターボを見つけた。アボット・レーシング社製のキットにローダウン・サス、ショートシフターなどが組まれているようだ。
1万ポンド(約155万円)~1万2499ポンド(約192万円)
英国では16万km以下の900 ターボを探せる。中にはエアコンの付いたガレージで保管されてきた例や、走行距離3万kmほどという上物も。
1万2500ポンド(約193万円)以上
走行距離16万km以下で、しっかりメンテナンスが行き届いた900 ターボを英国では購入できる。整備記録もしっかり揃っているはず。
知っておくべきこと
初代サーブ900には、15年の製造期間に14種類の特別仕様が販売されている。なかでも187psのカールソン仕様エンジンに赤いボディ、ボディ同色バンパーとグレーのアルミホイールで仕立てられたルビーは、英国限定の900 ターボだった。
インテリアには、上質なバッファロー・レザーとゼニア・ウールが奢られている。製造台数は150台。英国で販売された、最後の初代サーブ900 ターボになった。
英国で掘り出し物を発見
サーブ900 ターボ・コンバーチブル 登録:1989年 走行距離:28万4800km 価格:7250ポンド(約110万円)
新品のバッテリーに交換され、車検も受けたて。価格は手頃といえ、走行距離なりの不備は残っていると考えて良いだろう。特に運転席は傷みが酷いようだ。
少なくともルーフライナーの状態は良好で、ボディは最近全塗装を受けている。説明書や整備記録なども、かなりの量が付いてくるという。
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