フェラーリのソフトトップオープンモデルの甘美な乗り味
タイムレスなエレガントさで“ドルチェ・ヴィータ”を体現するクーペのスタイルを崩さず、ソフトトップを備えたオープンモデル「ローマ スパイダー」にイタリアで試乗。そこにはさらに“甘い生活”が待っていました。その様子をお伝えします。
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エレガントなソフトトップで優雅なフォルムはそのままに
クーペがドルチェ・ヴィータ(甘い生活)だったと評価するのであれば、スパイダーはそれどころの話じゃない。トロッポ・ドルチェ(激甘)だ。
クーペの甘いデビューから3年と少し。2023年3月にローマ スパイダーは登場した。予想された通り、ソフトトップを採用した。
クーペのエレガントさに、リトラクタブル・ハード・トップ(RHT)はあまりに無粋だ。誰もがそう感じていた。だから、もしローマにオープンモデルが追加されるのであれば、それはソフトトップになるはずだと誰もが予想できたのだ。もちろん、その時点ではRHTの「ポルトフィーノM」が人気モデルとしてまだ存命だったこともあって、マラネッロはローマのソフトトップオープンはもちろん、オープンモデルの存在さえ“ノーコメント”だったけれど。ちなみにポルトフィーノMは既オーダー分で生産終了である。
かくしてクーペの優雅なフォルムを一切崩さないソフトトップを備えたローマスパイダーは発表された。ソフトトップは電動式で、13.5秒で開閉する。ソフトトップとはいえ60km/hまでであれば走行中でも開け閉めが可能だ。
吸音効果の高い素材を挟み込んだ5層構造になっており、ソフトとは言ってもかなり硬い。骨組みは軽量なZ構造で、リアのガラススクリーンとともに格納スペースへと収められる。仕舞い込んだトップを覆うトノカバーはトップ生地と同じ素材で覆われており、リアヘッドレストと一体になって見た目にも美しい。
なにしろトップの見栄えにも凝っているのだ。とくにネイビーやレッドといったカラートップでは素材をカーボンファイバーのように格子状に織り込んで光沢と立体感を出した。その風合いとボディカラーをどうマッチさせるか。オーナーのセンスが問われるところだろう。
パフォーマンスはクーペとほぼ同じ
デュアルコクピットスタイルのインテリアは基本的にクーペから継承した。リアを見ると穴の空いた大きな板がシートバックと一体になっている。ウインドウディフレクターだ。170km/hまでボタン1つで展開できる。展開さえしておけば何km/hまででも機能するらしい。
オープン化によってちょうど筆者1人分(84kg)の重量が増した。剛性強化のためサイドシルやAピラー、リアセクションの構造がクーペとは異なる。サスペンションの制御をはじめ動的なキャリブレーションもまたスパイダー専用だ。そのほか、ADASも最新となって、ついにマラネッロ製のGTカーにもレーンキープアシストと緊急ブレーキが備わった。
メルセデス・ベンツ「SLKクラス」の登場以来、一世を風靡したRHT。近年はソフトトップ式にすっかり押され気味だ。筆者は以前からRHTの格好悪さを指摘してきた。とくにトップそのものが大きくなると物理的にオープン時のリアシルエットに瘤ができて格好悪い。(負けじとハードとはいえ)ソフトトップへの原点回帰は嬉しい限り。色と素材違いの2トーンもかっこいい。
パワートレインそのものはクーペと全く同じ。最高出力620ps/最大トルク760Nmの4L V8ツインターボエンジンに8速DCTを組み合わせて搭載した。0-100km/hの加速タイムはクーペと変わらず3.4秒、重量差が多少効くと思われる0-200km/hでもわずかに0.4秒落ちの9.7秒と、クーペとほぼ同じパフォーマンスを有すると言っていい。
クーペより乗り心地がいい!
国際試乗会はサルディーニャ島で開催された。ホテルの敷地内をゆっくりと走らせながらオープンに。まずはクーペより乗り心地のいいことに気づく。前輪のつっぱり感が薄れ、代わりにハンドルを握る両手との一体感にしなやかさが増した。
空いた一般道に出る。たまらず加速してみれば、なるほどクーペに遜色ない速さ。否、風を感じるぶん速いとさえ思ってしまう。エグゾーストサウンドは決してラウドではない。むしろ抑え気味だと思う。それでもオープンで走れば、V8ノートを心ゆくまで楽しむことができる。
ウインドウディフレクターもよく効く。同時にサイドウインドウを上げておけばかなりの速度域まで風の巻き込みがない。せっかくのオープンなのだから風だって心地よさの演出、と肯定できる程度には頭頂にて風を感じることができた。
ワインディングロードにノーズを向ける。ローマ最大の魅力はその正確無比なハンドリングにあったけれど、さらに動きが自然で思い通りに前輪の動く感覚があった。単に正確なだけでなく気持ちいいと思える。ステアリング操作そのものが気持ちいい。
絶対的なパフォーマンスだけがスポーツカーの楽しさでない。そのことをローマ スパイダーは改めて教えてくれた。しゃかりきになって攻め込んでいる時はもちろん、ゆったりとクルージング中でも、ドライバーの思い通りにクルマが動いてくれているという感覚がある。機械との対話がそこにある。
ローマスパイダーが1台我が家にあれば、“甘過ぎるカーライフ”が送れそうだ。
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