■国産防弾車の実力は?どこまでの衝撃に耐えられる?
2019年10月22日に天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」が東京都内でおこなわれます。その際、世界各国の国賓や要人が日本に訪れますが、移動時に命を守るさまざまな防弾車も持ち込まれる可能性があります。
自衛隊のクルマ、じつはトヨタ製!? どんなクルマが活躍しているのか
地球上で最強のクルマともいわれるアメリカ大統領専用車の通称「ビースト」などが有名ですが、国産の防弾車も存在しています。日本で作られる防弾車とは、どのような仕様なのでしょうか。
銃社会のアメリカとは異なり、日本ではあまり一般的な存在ではない防弾車ですが、世界最高レベルの防弾ガラスや、紛争地域で活躍する防弾装甲車を作っているメーカーが、国内唯一の防弾装甲車(乗用装甲車)専業の「セキュリコ」という会社です。
日本国内向けはもちろん、イラクやアフガニスタンなどを含む治安の悪い地域や紛争地域にも納車の実績がある国際的な信頼を得ているメーカーです。
現在は、軽装甲乗用車として、レクサス「LS」、トヨタ「センチュリー」「ランドクルーザー」「アルファード」を製造販売しています。
軽装甲乗用の主な装備として重要なのがものがいくつかあります。まずは、「特殊耐弾ボディ」です。ドアやボディは、アラミド系繊維などを樹脂成形したものを車体の曲面に合わせて内側から取付けしており、各ボディパネルやドア、ピラーには内装材の間に特殊な防弾パネルを採用しています。
手榴弾、対人地雷などの爆発物による爆風や破片なども、コンポジットアーマーと床に取付けた防爆パネルで室内への侵入を防ぎます。
どんな場所でも移動するために重要な走行面では、パンクしても走行可能な車輪システム(Run Guard System)をタイヤに採用。欧米では、パトカーや消防車、救急車およびVIP専用車などに広く採用されており、全タイヤがパンクしても時速80キロで最長約50kmを走る能力を持ち、通常時はタイヤ面に接触しないため、乗り心地などに変化がないことも特徴です。
さまざまな攻撃を防ぐのに重要なのが「防弾ガラス」です。最新式のポリカーボネート積層式球面型防弾ガラスを採用し、極力ベース車両と外観が変わらないように仕上げるべく、オリジナル同様のカーブを持つガラスを新たに製作し、特殊な中間模とポリカーボネートで積層し成形しています。
貫通させないことは当然ですが、弾丸の運動エネルギーを吸収し、室内に破片すら生じさせません。米国司法省の防弾基準「NIJ-IIIA(ハンドガンレベル)」の製品にさらに改良を加えています。
最新の防弾ガラスについて、防弾ガラスの国内トップメーカーのノースガラス社は、次のように話します。
「防弾ガラスは、1963年ケネディ大統領の暗殺以降、要人の車両に採用されるケースが急増しました。 当初はガラスとガラスを合わせたもので重さと厚みはありましたが弾丸を止める力はたいして高くありませんでした。
急速に進化したのは画期的なプラスチック素材『ポリカーボネート』が登場した1970年代以降です。アクリルの200倍近い耐衝撃強度を持つポリカーボネートを防弾ガラスに採用することによって、より薄く軽くなり、応用範囲も拡大し、用途によって改良も進みました」
※ ※ ※
最新の防弾ガラスはポリカーボネートやポリウレタン、特殊フィルムなど、さまざまな素材を重ね合わせることで強度をアップしながら厚さや重量をできるだけ低減するものが主流のようです。
同社の防弾ガラスは、アメリカ有数の試験機関などからすべての保護レベルにおいて証明を得ており、米軍はもちろん世界中の軍隊や事務局が定める基準にも適合していといいます。
■防弾センチュリーの中古車が存在?
重装甲乗用車は地域によって装甲レベルの設定が選べ、前述した軽装甲乗用車に加えて、さらなる装甲を施している「重装甲乗用車」もラインナップされています。
セキュリコの重装甲乗用車は、レクサスのLSをベースにした「ARMORED LEXUS」とメルセデス・ベンツ「Sクラス」をベースにした「ARMORED BENZ」や、ランドクルーザーとメルセデス・ベンツ「Gクラス」をベースにした重装甲4WD車もあります。
防弾レベルはそれぞれ、「B6 防弾レベル(紛争地向け)」と「B4 防弾レベル(北米や日本、台湾、西欧など比較的治安の良い地域向け)」の2種類を設定。
ARMORED LEXUSの見た目や室内加飾は、既存のLSと変わりません。オプションも豊富に用意されており、カーセキュリティシステムから、ストロボ灯・電子サイレン(異常発生を周囲に知らせ、緊急脱出等に利用)、 マイク・スピーカー(不用意に下車せず、スピーカーで外部に連絡)、自動消火システムなどの架装が可能です。
さまざまな地域や条件下で、乗務員の安全を守る防弾車の価格はどのくらいするのでしょうか。高級なベース車両を使用しているため、それらに最高級の装備を加えると数千万円くらいにはなりそうです。
しかし、「まさか中古車で出ていたりしないよね?」と思って調べてみたら、なんと中古の防弾センチュリーを発見しました。車両は2003年式で、走行距離は22万km。防弾仕様になっており、値段は車両本体価格100万円です。
中古の防弾車を販売しているキャル・ベースの春日部ベース店は、次のように話します。
「最初は、委託販売をしていてそのときの価格は400万円でした。ですがまったく売れずもう1年以上たちました。いまは、どんどん値段を下げて100万円まで下げています。オーナーは3人くらい代わっていて、以前のオーナーは政治家から譲り受けたそうです。
装甲のための費用は400万円だったといいます。フロントガラスを含むすべての窓が厚さ10cm程度の樹脂板になっており大変重く、後部のドアにはオートクロージャ―がついていますが、窓もドアも重いためその機構がうまく作動せずドアが閉まりにくいことがあります。
全体的な不具合といえばその程度です。扱いを軽くしたければ。防弾仕様になっているアクリル窓(鉄枠ではまっている)を外せば問題ありません。重量が増えているので車検証の数字も変更されています」
※ ※ ※
国産最後のV12エンジン(1GZ-FE型)を搭載した防弾センチュリーが100万円という価格で販売されていました。最近では、北米でも右ハンドルセンチュリーの人気が高まっており、2003年式であればカナダの15年ルールでそのまま輸入・登録も可能のため、海外でも人気を集めそうなモデルです。
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