現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【964ターボS物語】たった86台しか作られなかったポルシェ964ターボS その革命的なドライビング性能とは?

ここから本文です

【964ターボS物語】たった86台しか作られなかったポルシェ964ターボS その革命的なドライビング性能とは?

掲載 7
【964ターボS物語】たった86台しか作られなかったポルシェ964ターボS その革命的なドライビング性能とは?

わずか86台しか製造されなかったSで、ポルシェは30年前の964ターボの名声を守った。この車をドライブしてみると、本当に革命的であることがわかる。

30年前、ミハエル シューマッハがまだAUTO BILDで時々テストをしてくれていた頃、編集部はスーパースポーツカー比較の一環として、彼に「普通の911ターボ」をプレゼントした。

【このクルマなんぼ?】ゴルフ2の2ドア&75馬力のスポーティモデル VWゴルフ2ファンクションが現在売りに出ている その詳細と価格

ベネトンF1チームのドライバーは、余裕のハンドルさばきで少し遊んだが、この車に興奮することはなかった。重すぎ、柔らかすぎ、遅すぎ・・・。彼には、ノーマルの「964ターボ」が時代遅れのものに思えたのだった。

当然のことだ。ポルシェは、1991年モデルから「964」シリーズに先代のターボエンジンを搭載することにした。そしてそれではダメだということは、誰の目にも明らかだった。

1992年に発売された小生産シリーズ「ターボS」

1991年末に新型ターボがアメリカのIMSAスーパーカー選手権で優勝したことで、先代の13年型ターボエンジンを搭載した「964」は、ますます評判が落ちてしまったため、ポルシェは1992年に「ターボ」の後に「S」を付けたハードチューンの限定小生産シリーズを立ち上げた。

30年後、我々は、その真の姿とターボスピリットを求めて、希少な「964ターボS」を小さな山道を巡る旅に再び連れ出したのだった。

最初は、懐かしむように、気楽に構えていた。鮮やかな「スピードイエロー」は、当時ターボSのために特別に調合された色だ(現在でもポルシェのセラミックブレーキのキャリパーを飾っている)。

4センチメートル低い

スピードラインの3ピースホイールは、「964」では初めて18インチとなり、ワイド化されたターボのホイールアーチにも難なく収まるサイズとなった。初期の標準的な「964」は16インチホイール用しかなく、それ以上のサイズになると、当初は板金の折り返し部分に手作業のフランジ加工が必要であった。

ドアを開けるときの金属的なカチッという音は、昔の「911」に共通するものだ。しかし、4cmのローダウンは、乗り込むとすぐに体感できる。

ドア自体が動きやすくなり、また、閉めるときの音も小さくなった。ボンネットと同様、カーボンファイバーで強化されたプラスチック製で、サイドとリアの窓は薄いガラスでできている。リアシートやエアバッグ、成型ドアパネル、断熱材を除けば、トータルで180kg、13%の軽量化になる。

ターボチャージャーによる吸気音低減

音響的には、最初は何も気にならない。このレーシングマシンも、6気筒ボクサーによるマスバランスによって、ほとんど振動がないからだ。また、ターボチャージャーは吸気音を減衰させる。

完璧な前方視界と、美しい「カップ」ミラーを通した後方視界も、「964」の普通を装っているのだ。

しかし、前車軸の235サイズのタイヤを回すのが大変なことに気づく。パワーステアリングがないのだ。そして、時速30kmを超えると、小石が断熱されていないホイールアーチにぶつかり、硬いサスペンションが小さな凹凸を直接バケットシートに伝え始める。しかしそれでも、アクセルを踏み込み、回転数が3200回転を超えたとき、ドライバーは道路とマシンがよりダイレクトにつながることを実感する。

320馬力の代わりに381馬力

標準のターボより数百回転早くブースト圧を高め、瞬きする間に車から戦闘機へと変身する。4000rpmからも止まることはなく、6800rpmまで回転させることができる。最高出力は320馬力から381馬力となった。

「ターボS」の出力向上は、主にカムシャフトのプロフィールを変更したことによるもので、「S」ではブースト圧をわずかに高め、日常的に使用する回転域でのトルクアップにさえつながっている。

AUTO BILDのテストの際に、シューミは、標準のターボの技術よりも、「964カレラRS」から引き継いだ「S」のよりダイレクトなステアリングとブレーキ油圧の方が満足度が高かったと感じたらしい。「ターボがかかると同時に、トップでリミッターが強くかかるんだ」と、F1ドライバーは当時を振り返っている。

この「964ターボS」はとにかくレーシーで、センセーショナルな存在であったといえよう。86台しか作られなかった「ターボS」。果たしてそのうちの何台が良好なコンディションで現存しているだろうか。

【ABJのコメント】 「ポルシェ964」で覚えているのは、いっきにバリエーションが増えた、という驚いた気持ちを抱いたことである。ざっと思い出しただけでも、クーペとカブリオレがあり、「カレラ2」と「カレラ4」が存在し(つまり2輪駆動と4輪駆動が揃った)、ミッションに関してもMTとティプトロニックが登場した。言うまでもなく、このティプトロニックの登場で、あっという間に「964」は普通の女性が買いものにも使えるようなジャンルの車になったようにも思う。なんともバブルな時代の話ではあるが、それほど普及し、色とりどりの「964」は街にあふれるようになった。

さらにその上には、「ターボ」や「RS」という辛口バージョンが存在したわけだが、本文中にも記されている通り、本来ポルシェのターボというのはスパルタンなスペックのものではなく、ゴージャスで満艦飾な最上級グレードとしての存在であることが多く、今では3,000万円はおろか4,000万円を用意しなくては購入できない「911ターボ」というのは、長年そういう豪勢なモデルなのである。今回の「ターボS」はそういう絢爛豪華なスペックのターボではなく、言ってみれば辛口仕様の「ターボ」なわけだが、台数が86台と、キリ番ではなく中途半端な台数しか存在していない。そして運転することには、それ相応の技術が必須なことも明らかである。

2022年の現在、街中でターボを愛用している方々(女性も多く見かけるのには驚く)に、この「964ターボS」を運転させることはおすすめしない。ちゃんと走らせることが怪しいばかりか、電子デバイス満載の現代の「911ターボ」に慣れてしまっているドライバーに気楽にステアリングをゆだねることは、危なっかしくて心配になってしまうからである。(KO)

Text: Henning Hinze 加筆: 大林晃平 Photo: autobild.de

こんな記事も読まれています

7/25申込締切 モビリティ・ロードマップ2024(自動運転法制を中心に)とモビリティDX戦略
7/25申込締切 モビリティ・ロードマップ2024(自動運転法制を中心に)とモビリティDX戦略
レスポンス
自動車保険料3年連続の引き上げ、2026年以降平均5.7%上げへ[新聞ウォッチ]
自動車保険料3年連続の引き上げ、2026年以降平均5.7%上げへ[新聞ウォッチ]
レスポンス
「クルマの空調」使い方間違えると「燃費悪化」も!? 「謎の“A/Cボタン”」何のため? カーエアコンの「正しい使い方」とは
「クルマの空調」使い方間違えると「燃費悪化」も!? 「謎の“A/Cボタン”」何のため? カーエアコンの「正しい使い方」とは
くるまのニュース
ドライブレコーダーを付けたからと言って安心はできない!? 事故にあった際の正しい操作方法とは
ドライブレコーダーを付けたからと言って安心はできない!? 事故にあった際の正しい操作方法とは
バイクのニュース
一年中快適に楽しめるオープンモデル!メルセデス・ベンツ、高い走行性と安全性を併せ持つ「CLEカブリオレ」を発売
一年中快適に楽しめるオープンモデル!メルセデス・ベンツ、高い走行性と安全性を併せ持つ「CLEカブリオレ」を発売
LE VOLANT CARSMEET WEB
伝統と革新が融合したスポーツモデル!ダイナミックな外観や新世代ISGを引っ提げ、「メルセデスAMG CLE 53クーペ」発売!
伝統と革新が融合したスポーツモデル!ダイナミックな外観や新世代ISGを引っ提げ、「メルセデスAMG CLE 53クーペ」発売!
LE VOLANT CARSMEET WEB
今季10戦目にしてなんと5回目の11位……ヒュルケンベルグ抜群の安定感も”入賞圏外”に落胆「新しいポイントシステムが必要だ」
今季10戦目にしてなんと5回目の11位……ヒュルケンベルグ抜群の安定感も”入賞圏外”に落胆「新しいポイントシステムが必要だ」
motorsport.com 日本版
オートバックスセブン、林野庁と協定締結 店舗での国産木材使用を拡大
オートバックスセブン、林野庁と協定締結 店舗での国産木材使用を拡大
日刊自動車新聞
日産が新型「軽“ワゴン”」発表! ホンダ「N-BOX」対抗の「超背高モデル」! 超スゴイ“ピンク”も追加の「新ルークス」に販売店でも反響あり
日産が新型「軽“ワゴン”」発表! ホンダ「N-BOX」対抗の「超背高モデル」! 超スゴイ“ピンク”も追加の「新ルークス」に販売店でも反響あり
くるまのニュース
そういえば滑りづらくなった!? 首都高の二輪車安全対策「フィンガージョイントすべり止め」「カーブ部のカラー舗装延伸」とは?
そういえば滑りづらくなった!? 首都高の二輪車安全対策「フィンガージョイントすべり止め」「カーブ部のカラー舗装延伸」とは?
バイクのニュース
「ChatGPT」車載化、VWがゴルフやティグアンにオプション設定…欧州仕様
「ChatGPT」車載化、VWがゴルフやティグアンにオプション設定…欧州仕様
レスポンス
アクセルを戻せば減速する……のはわかる! でも説明しろと言われると悩むエンジンブレーキの「仕組み」とは
アクセルを戻せば減速する……のはわかる! でも説明しろと言われると悩むエンジンブレーキの「仕組み」とは
WEB CARTOP
フレッシュアップされたBMW 3シリーズの全情報 価格から走行性能&比較テストまで 新型BMW 3シリーズのすべて
フレッシュアップされたBMW 3シリーズの全情報 価格から走行性能&比較テストまで 新型BMW 3シリーズのすべて
AutoBild Japan
ついに始まった首都高「新ルート事業」の凄さとは 「箱崎の渋滞」も変わる!? 都心に地下トンネル「新京橋連絡路」爆誕へ
ついに始まった首都高「新ルート事業」の凄さとは 「箱崎の渋滞」も変わる!? 都心に地下トンネル「新京橋連絡路」爆誕へ
くるまのニュース
新型コンパクトSUV『EMZOOM』、世界市場で成功…中国広州汽車
新型コンパクトSUV『EMZOOM』、世界市場で成功…中国広州汽車
レスポンス
日本でまさかの拳銃を使ったタクシー強盗発生! キャッシュレス化で現金をもたない仕組み作りが一番の解決策
日本でまさかの拳銃を使ったタクシー強盗発生! キャッシュレス化で現金をもたない仕組み作りが一番の解決策
WEB CARTOP
本田宗一郎とイーロン・マスクに共通点があった? 稀代の経営者を支える「無知の知」とは何か
本田宗一郎とイーロン・マスクに共通点があった? 稀代の経営者を支える「無知の知」とは何か
Merkmal
全長5m級!トヨタが新たな「ラージSUV」まもなく発売!? 17年ぶり復活! 斬新フェイス&車中泊出来そう空間の「クラウン」 発売はどうなった?
全長5m級!トヨタが新たな「ラージSUV」まもなく発売!? 17年ぶり復活! 斬新フェイス&車中泊出来そう空間の「クラウン」 発売はどうなった?
くるまのニュース

みんなのコメント

7件
  • シューマッハにかかると964ターボですらぬるいと感じてしまうのか。
    初めて鈴鹿でF1見たとき、金曜日のFPで2コーナーでスピンして止まったから、じっくり見られてよかった。
    ヘルメット脱いだら、スタンド上段からもアゴがハッキリ分かって嬉しかったな。
    ミックは来年も乗れるといいな。

  • 以前、964ターボSライトウェイトで走ってました。普通の964ターボと違い、当時、兎に角軽いという印象でした。ターボ3.3、3.6と乗ってみましたが全く別物と言えます。カムシャフトがカレラ2と同じプロフィールでしたからこれが乗り味や加速感を大きく左右してると思います。普通の3.3ターボにこのカムを入れたらエンジンはかなりターボSに近い感じになりました。この車、現代の車にはない限界スレスレを操る面白さや、ただ単に流しで乗っても楽しい車でした。個人的には欲しかった装備はパワステと助手席側だけにパワーウィンドウかな(笑)。パワステがあったらもっと日常的に乗ってたかも。風の噂では私が乗っていたターボSは北米のコレクターのトコロに行ったとか。良い車でした!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2550.02800.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
ターボの車買取相場を調べる

ベントレー ターボの中古車

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2550.02800.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村