現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > エンジンはこの先どうなるのか。脱炭素に向けて内燃機関の技術革新が進行中。日産理論と欧州の動き

ここから本文です

エンジンはこの先どうなるのか。脱炭素に向けて内燃機関の技術革新が進行中。日産理論と欧州の動き

掲載 更新 22
エンジンはこの先どうなるのか。脱炭素に向けて内燃機関の技術革新が進行中。日産理論と欧州の動き

 いま、自動車は電動化へまっしぐらという印象を受ける。米国がパリ協定への復帰を表明し、中国と日本も「カーボンニュートラル」への動きを政府が宣言した。EU(欧州連合)では乗用車排出CO2(二酸化炭素)の規制が今年から95g/kmとなり、各メーカー平均がこの値をオーバーすると罰金を支払わなければならない。EUではBEV(バッテリー電気自動車)はCO2ゼロ換算、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)は電動走行距離に応じて大幅にCO2が割り引かれるため、各メーカーが次々とこれらの車種を販売し始めた。

 では、ICE(内燃機関)はどうなるのか。この点については日米欧の市場調査会社が予測を発表している。昨年秋時点の予測を平均すると、EUでの新車乗用車販売に占めるICE搭載車の比率は2030年時点で68~75%程度だった。BEVは25~30%、PHEVは7~12%である。FCEV(燃料電池電気自動車)は2%以下の見通しだ。

急拡大するメルセデスの電動車戦略、来年までにEQは5モデル増加

 こうした予測は、EUの規制動向や各メーカーの商品投入予測、補助金の動向なども含めた結果であり、世の中がカーボンニュートラルで騒いでいるほどにはBEVの急増はない状況を示唆するものだ。その理由のひとつに、リチウムイオン電池(以下LiB)の製造にかかわる資源問題とエネルギー問題がある。

 LiBは大量のリチウムを必要とし、電池製造段階では水に浸した状態のリチウムを乾燥させる工程が必須であり、ここで大量の電力を使う。

 再生可能エネルギーでこの電力を供給できれば電池製造での環境負荷は小さくなるが、現状では小型BEVを1台生産するときのCO2排出は、同じサイズのガソリン車1台を製造する場合に比べて「3割ほどCO2排出が増える」といわれる。

 もうひとつは、高性能LiBの極材に使われるコバルトや電動モーターの磁石に使われるディスプロシウムなど希少金属の資源問題だ。希少金属類は一部の国に資源が偏在しているほか、児童労働による採掘といった問題がある。かといって、いわゆるグリーントレードの基準を厳守すると資源が入手できない。このままBEVとPHEVの生産台数が増え続けると、現在のLiB年間生産量の2倍以上が必要になる。

 こうした事情から2040年くらいまではICEが一定数生産される見通しである。同時に、2030年代には大気中の二酸化炭素と再生可能エネルギーを使って人工的にガソリン・軽油と同じ成分の燃料、e-フューエルの量産が軌道に乗るともいわれている。また、余分なCO2を排出しないで精製できる「グリーン水素」への投資が活発化している。日本では福島県に世界最大規模の実証プラント(福島水素エネルギー研究フィールド、FH2R)が完成した。

 では、2020年代に必要なICEはどのようなものになるのか。これは自動車メーカーごとのパワートレーン整備計画によって異なるが、電動モーターと組み合わせる前提でHEV用に特化したICEと、48V(ボルト)電源を使うマイルドHEVに使用でき、同時に単独使用も可能なエンジンという2つの流れがある。

 前者の典型的な例は、日産が2月に発表した次世代e-POWER用のICEだ。シリーズHEVに使う発電専用ICEであり、エンジンを「最も熱効率の高い回転域」だけで使う。現在でもe-POWER用エンジンは良好な燃費だが、次世代型は理論空燃比よりも空気が多い状態での燃焼を目指す。

 これを実現するためにシリンダー内の混合気に強力な「流動」を作り、同時に点火システムを改良。EGR(排ガス再循環)を大量に使う場合で熱効率43%、空気を過剰に供給する希薄燃焼の場合で46%の熱効率を量産タイプの多気筒ICEで実証したという。これに廃熱回収技術を組み合わせて熱効率50%を市販ICEで狙う。

 欧州でもHEV用に特化したICEの開発が進んでいる。ドイツ勢は、低回転域と高回転域を電動モーターに任せ、ICEの運転領域を狭くする技術で可変バルブタイミング装置のようなデバイスを搭載しなくても熱効率の高い領域で運転できるICEが今後2~3年で登場しそうだ。すでにルノーは、日産のHR-16型エンジンを使ったHEVを開発しており、市販車への搭載は「いつでも始められる」状態にある。

 FCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)と合併してステランティスとなった旧グループPSAは、ベルギーのパンチ・パワートレーンと共同で小排気量ICEに電動モーターを内蔵したDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を組み合わせたHEVパワートレーンの開発を行っている。発売時期は明らかにしていないが、2023年には市販される可能性が高い。ダイムラーの筆頭株主、中国・吉利ホールディングスは、小型商用車向けHEV用ICEの共同開発をダイムラーと進めている。

 日本勢はもともとHEV用ICEの実績はあるが、トヨタとホンダは実用域で熱効率50%を目指している。マツダはプラグ点火を使う予混合圧縮着火方式であるSPCCIをマイルドHEVと組み合わせているが、次のターゲットはPHEVになるようだ。

 ICEと電動モーターが「互いの欠点を補い合う」という方向が2020年代半ばの主力になるものと思われる。つまり、すべてがBEVになるわけではなくICEと適材適所でCO2排出の削減を狙う方向が2020年代のパワートレーン展開になるという。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

18年ぶりに復活を遂げたトヨタ新型「クラウン・エステート」“待望”の発売! SUVの魅力をプラスした「新発想ワゴン」は635万円から
18年ぶりに復活を遂げたトヨタ新型「クラウン・エステート」“待望”の発売! SUVの魅力をプラスした「新発想ワゴン」は635万円から
VAGUE
ヒョンデ、『インスター』4月導入でEV普及を加速…新拠点開設やパートナーとの連携強化へ
ヒョンデ、『インスター』4月導入でEV普及を加速…新拠点開設やパートナーとの連携強化へ
レスポンス
軽自動車にこそEVがピッタリです。ル・ボラン編集部が選ぶ! 「EVアワード」日産サクラ
軽自動車にこそEVがピッタリです。ル・ボラン編集部が選ぶ! 「EVアワード」日産サクラ
LE VOLANT CARSMEET WEB
18年ぶり復活のトヨタ新型「クラウン“エステート”」! 「ワゴンとSUVの融合」実現した“デザイン”に込められた“想い”とは
18年ぶり復活のトヨタ新型「クラウン“エステート”」! 「ワゴンとSUVの融合」実現した“デザイン”に込められた“想い”とは
くるまのニュース
トヨタ「クラウンエステート」登場! “シリーズ第4”のモデルはなぜ「SUV×ワゴン」融合した? 伝統の「エステート」名称“復活”にかけた開発の想いとは【開発者インタビュー】
トヨタ「クラウンエステート」登場! “シリーズ第4”のモデルはなぜ「SUV×ワゴン」融合した? 伝統の「エステート」名称“復活”にかけた開発の想いとは【開発者インタビュー】
くるまのニュース
56年前の「ランボルギーニ」がオークションに登場 名スーパーカー「カウンタック」以前の“4人乗りランボ”とは
56年前の「ランボルギーニ」がオークションに登場 名スーパーカー「カウンタック」以前の“4人乗りランボ”とは
VAGUE
マルティン、MotoGP第3戦アメリカズGPも欠場へ。第4戦カタールでの復帰も不透明「思うように回復できず、本当に苦労している」
マルティン、MotoGP第3戦アメリカズGPも欠場へ。第4戦カタールでの復帰も不透明「思うように回復できず、本当に苦労している」
motorsport.com 日本版
レクサス [LS]2013年モデルが想像以上に良すぎる件!! マイナーチェンジってウソだろ!?
レクサス [LS]2013年モデルが想像以上に良すぎる件!! マイナーチェンジってウソだろ!?
ベストカーWeb
新車購入で後悔したくないなら徹底チェック! 購入前にディーラーの実車で穴が空くほどガン見して確認すべき項目とは
新車購入で後悔したくないなら徹底チェック! 購入前にディーラーの実車で穴が空くほどガン見して確認すべき項目とは
WEB CARTOP
トヨタ新型「クラウンエステート」発表! “ワゴン×SUV”を「よりメッキきらめくスタイル」に! スタイリッシュなモデリスタパーツを設定、KINTOでも取り扱い開始!
トヨタ新型「クラウンエステート」発表! “ワゴン×SUV”を「よりメッキきらめくスタイル」に! スタイリッシュなモデリスタパーツを設定、KINTOでも取り扱い開始!
くるまのニュース
レーシングブルズとエクソンモービルが燃料パートナー契約を締結。レッドブルファミリー全体との提携が強化
レーシングブルズとエクソンモービルが燃料パートナー契約を締結。レッドブルファミリー全体との提携が強化
AUTOSPORT web
動かす前に何をすべき!? 冬の間に乗らなかったバイクのメンテナンス
動かす前に何をすべき!? 冬の間に乗らなかったバイクのメンテナンス
バイクのニュース
ワゴン×SUV!? トヨタ新型「クラウンエステート」18年ぶりに復活! 完成された16代目クラウン独自の「乗り味」とは【試乗記】
ワゴン×SUV!? トヨタ新型「クラウンエステート」18年ぶりに復活! 完成された16代目クラウン独自の「乗り味」とは【試乗記】
くるまのニュース
高速道路に「人が運転していない」トラックが出現…なぜ? 一般車の自動運転と何が違うのか
高速道路に「人が運転していない」トラックが出現…なぜ? 一般車の自動運転と何が違うのか
乗りものニュース
トヨタ新型「クラウンエステート」正式発表! ワゴン×SUVとして18年ぶり復活の理由は? ブランド70周年で4モデル揃う!エステートが担う役割とは 635万円から設定
トヨタ新型「クラウンエステート」正式発表! ワゴン×SUVとして18年ぶり復活の理由は? ブランド70周年で4モデル揃う!エステートが担う役割とは 635万円から設定
くるまのニュース
スバル新「クロストレック」発表! 鮮烈な「オレンジ」ボディ採用した“サンブレイズ仕様”に大注目! 同時に「インプレッサ」と「レヴォーグ」特別仕様車も公開!
スバル新「クロストレック」発表! 鮮烈な「オレンジ」ボディ採用した“サンブレイズ仕様”に大注目! 同時に「インプレッサ」と「レヴォーグ」特別仕様車も公開!
くるまのニュース
「アントネッリ圧倒は必須とは思っていない」先輩ジョージ・ラッセル、”速いヤツは最初から速い”理論を提唱
「アントネッリ圧倒は必須とは思っていない」先輩ジョージ・ラッセル、”速いヤツは最初から速い”理論を提唱
motorsport.com 日本版
ホンダ『ZR-V』のゴツゴツ感を低減、スタビリティも向上させるテインの車高調「フレックスZ」発売
ホンダ『ZR-V』のゴツゴツ感を低減、スタビリティも向上させるテインの車高調「フレックスZ」発売
レスポンス

みんなのコメント

22件
  • この記事にある様に、欧州勢もエンジンを捨てるつもりは無い。
    無いのだが、日本では大手メディアが「欧州はEVに舵を切った。世界の流れはEVであり、日本は出遅れた」と騒ぎ、エンジンを捨てないのは過去の栄光にしがみついているだけというプロパガンダを展開する。
    e-fuelの話が出てきたが、こういった燃料100%でエンジンを動かしたら、EVと全く同等でカーボンフリーが実現する。しかも、この記事が指摘する様な希少金属を大量に消費するバッテリーを無くすことが出来るし、HV化するにしてもEVに対して1/50程度の容量で済む。
    日本勢は「電動化」で言うなら世界第二位の普及率で、しかもEVはHVよりも技術的なハードルは低い。日本勢にとってEVは何時でも出来るのだから、どうしても必要な地域限定で最低限売るというスタンスである。
    それで良いと思う。
  • 自動車用内燃機関技術研究組合(AICE:アイス)をなぜ取り上げないのか、自動車メーカー9社が協力して
    将来のエンジン開発を行っている。
    日産もここから出てきた内容。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村