今の日産と三菱は、合弁会社のNMKVを設立して、軽自動車を開発している。日産のデイズやルークス、三菱のeKシリーズは、いずれもNMKVによって造られた。
そして2022年度初頭(2022年4~5月)には、両社で軽自動車サイズのEV(電気自動車)を発売すると発表。ボディサイズは全長3395mm、全幅1475mmで、全高は日産仕様が1655mm、三菱仕様は1670mmと公表された。両車ともに20kWhの駆動用電池を搭載して、価格は補助金を差し引いた実質額が200万円からになるという。
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現在、日本の自家用車のうち約4割が軽自動車となっている。もし軽自動車にEVが登場し、しかもそれが安価で普及すれば、充電環境も整い、住宅事情や道路事情にも変化が起きるだろう。日産と三菱が発売する「軽EV」は、日本のクルマ社会を変える力があるのか。渡辺陽一郎氏に伺った。
文/渡辺陽一郎
写真/日産、三菱自動車
[gallink]
■軽自動車EVが今後普及するかは価格次第!?
今回日産と三菱が発売を計画する「軽EV」、搭載する駆動用電池の容量は前述のとおり20kWhだが、日産リーフは40kWhと62kWhを設定する。先行して発売したホンダeとマツダMX-30のEVモデルは35.5kWhだ。駆動用電池の容量に余裕があると、1回の充電で走行できる航続可能距離を長くできるが、価格も高めてしまう。そこで日産と三菱の軽EVは(あえて?)20kWhに抑えている。
両社の発表によると、ベーシックグレードの価格が前述の200万円だから、中級は220万円、上級は240万円というあたりの価格水準だろう。そうなるとアクアの価格に近い。アクアはXが209万円、Gは223万円、Zは240万円だ。つまり軽EVの価格は、コンパクトカーのハイブリッドと同等になる。
2019年秋に開催された東京モーターショーに出品された日産IMk。この市販型が2022年春に市販される
微妙な線だが、この価格では軽EVを大量に売るのは難しい。今の軽乗用車では、全高が1700mmを超えるスライドドアを備えたスーパーハイトワゴンの人気が高く、販売面では軽乗用車全体の50%以上を占める。価格も売れ筋グレードが150~180万円に達するが、軽EVはこの1.3倍だ。
ただしEVは走行段階では排出ガスを発生させず、その一方で大容量の駆動用電池を搭載しない限り、長距離を連続して走るのは不得意だ。この長所と短所を考えると、EVは街中の移動手段に適するから、軽自動車との親和性も高い。
従って価格が軽自動車として不満なく購入できる水準まで下がると、軽EVが急速に普及する可能性もある。
トヨタは2021年9月7日に行われた「電池・カーボンニュートラルに関する説明会」において、2020年代後半までにEVの電池コストを1台当たり50%低減する方針を打ち出した。一般的にリチウムイオン電池の大幅なコスト低減は難しいとされるが、今後の動向次第では、軽EVの価格が下がって売れ行きを伸ばす可能性もある。
■EVと軽自動車はさまざまな相乗効果を得やすい
最近は、ハイブリッド車の普及などによってクルマの燃料消費量が減った結果、給油所(ガソリンスタンド)の拠点数も減っている。給油所の数は1994年には6万箇所に達したが、今は3万箇所を下まわり、約30年間で半減した。
公共の交通機関が未発達な地域では、1人に1台の所有を含めて軽自動車が普及したが、自宅付近の給油所が激減している地域もある。
その点で、EVなら自宅で充電できるから、遠方の給油所まで出かける手間を省ける。軽EVは利便性が高く、1人に1台の割合で軽自動車が普及している地域には、都市部と違って一戸建てが多いために充電設備も設置しやすい。
このようにEVと軽自動車は、いろいろな相乗効果を得やすいから、普及は価格の引き下げに掛かっている。
軽EVの当面の売れ方は、購入予算に余裕のある一戸建て世帯のセカンドカー需要が中心になるだろう。都市部ではマンションが多く、充電設備を設置しにくい。それでも日産の販売店は、急速充電器の設置を進め、今では設置可能な大半の店舗に行き渡っている。
そこで課題になるのが、急速充電器の頻繁な利用に基づく駆動用電池の劣化だ。従来は急速充電器を頻繁に使うと駆動用電池の劣化が急速に進むため、自宅における充電が不可欠とされていた。急速充電器は緊急用という考え方も根強かった。
ところがアリアの開発者は「アリアでは駆動用電池の冷却方式を刷新して、温度管理を確実に行う。従って急速充電器を頻繁に使っても、劣化を心配する必要はない」という。駆動用電池の冷却方式が進化して、急速充電器の使用に対する耐久性が向上すれば、都市部のマンションに住むユーザーも販売店の急速充電器を使って軽EVを所有することが可能だ。
三菱i-MiEVイメージ写真
そして軽EVでは、ブランドイメージの構築や内外装のデザインも大切になる。前述の通り軽自動車でもEVになると価格は補助金を差し引いて実質200~240万円に達するため、例えばノートオーラのような「小さな高級車」的なプレミアム感覚、付加価値が求められる。EVや軽自動車の本質から外れる話だが、軽EVを都会的で先進的な移動のツールとして根付かせるには不可欠だ。
運転感覚も大切で、モーター駆動による滑らかさと静かさに磨きを掛け、乗り心地や内外装の質も高めたい。乗員を心地よく感じさせるクルマに仕上げることが大切だ。
■今後も軽自動車を使い続けるためには規格を見直す必要がある
過去を振り返ると、今までにも三菱が軽EVのi-MiEVを用意したが、ほぼ同時期に日産からリーフが発売された。リーフは改良を重ねて2017年に2代目の現行型へ発展したが、i-MiEVはあまり手を加えられずに販売を低迷させた。そのために現時点では、軽EVの存在自体があまり認識されておらず、2022年度に登場する車種が実質的に最初の軽EVになる。この成否は、軽EVというカテゴリーの行方にも大きな影響を与える。
三菱 軽自動車EV「i-MiEV」
その一方で2030年度燃費基準の実施を踏まえると、軽自動車のハイブリッド化も重要だ。例えばN-BOX・Lの車両重量は900kg、WLTCモード燃費は21.2km/Lだが、2030年度燃費基準をクリアするには27.8km/L前後まで向上させる必要がある。比率に換算すれば31%だ。現在施行されている2020年度を含め、燃費基準はCAFE(企業別平均燃費方式)に基づくが、軽自動車は率先して達成する必要がある。
軽自動車に多く使われるマイルドハイブリッドは、価格の上乗せについては実質4万円前後に収まるが、燃費向上率も約5%と小さい。マイルドハイブリッドでは、2030年度燃費基準には対応できない。
ストロングハイブリッドであれば、ノーマルエンジンに比べて30~50%の燃費向上を達成できるが、価格も35~60万円の上乗せになってしまう。仮に35万円でも、155万9800円のN-BOX・Lが190万円に値上げされる。これでは「実質的な金額が200万円から」という軽EVとあまり変わらず、軽自動車を買えないユーザーが生じる。それでは公共の交通機関が乏しい地域のライフラインが支障を来たす。
そうなるとストロングとマイルドの中間的なハイブリッドを開発して、価格の上乗せを20万円程度に抑えながら、約30%の燃費向上を実現せねばならない。軽EVの開発と併せて、高効率かつ割安な軽ハイブリッドも重要だ。
軽自動車の開発者は「今の軽自動車は車両重量の割に排気量が小さく、800cc前後まで拡大した方が、優れた燃費効率を達成できる」という。軽自動車税などを高めずに、軽自動車の排気量枠を拡大することなども考えたい。今後も軽自動車を使い続けるには、EVやハイブリッドも大切だが、ユーザーの目線で軽自動車の規格を見直す必要もある。
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みんなのコメント
ウチは、ディーゼル車とガソリン車2台の3台体制。
ガソリン車の一台を、買い物・チョコ乗り用に軽のBEVに換えたいと思う。
また、この日産の軽EVは、外観デザインも良い。
かなり売れるのではないか。
EVじゃない車が充電スポットに停めるのも取り締まり対象にしないとダメですね
ルーフを太陽電池パネルにして駐車中に勝手に充電できないかな?
朝晩の通勤にしか使わないのだから日中は停めてるだけなんだけどw