EクラスクーペあらためCLEクーペとして船出
軽から普通車までハイト系ワンボックスばかりが売れ、ユーザーも最強と思っている日本市場。それゆえ、スポーツカーでもない2ドアのクーペという優雅なジャンルが伝統と格式あるハイエンドに欠かせない理由や、そもそも拠って立つところが理解されづらい。
【画像】メルセデス・ベンツCLE200クーペ 試乗の様子をみる 全108枚
多様性がパワーワードの時代に、それこそ嘆息すべき無知ですらある。
メルセデス・ベンツの新しいCLE200クーペ・スポーツを前にして、ふとタイムトリップ気味に考えた。ポール・ブラックがデザインしたあのW114の昔から、Eクラス相当のクーペが欠かさずラインナップされ世代をまた一新した事実に、感心して唸らざるをえない。
W114から数えたら最新のEクーペことCLEクーペ・スポーツはじつに8世代目にあたる老舗看板で、型式ネームは「C236」が与えられている。
ちなみに新型の6代目Eクラスは「W214」で、EクーペがCクラス・ベースとなった先々代のW204&C207の関係を思い出さないでもないが、MRAプラットフォームをS/E/C各クラスが採るようになって以来、各クラス・各シリーズの「格」を大きさで推し量ることは、ほとんど無意味とすらいえる。
一人乗りなら「ハイ、メルセデス」と呼びかけずとも音声コマンドが使える、ジャストトーク機能もEクラス同様、ちゃんと付いている。
装備はEクラスゆずり どこで差別化?
外観はメルセデスの掲げる「センシュアル・ピュリティ(官能的純粋さ)」のデザインランゲージ通り、滑らかでシンプルなグラフィックとボリューム感がみてとれる。
その中でもクォーターウインドウ後端の跳ね上げるようなキックラインが、先代よりもサイドビューを軽快に見せている。ショルダーのキャラクターラインも薄口でクリーンだ。
他にもフロントのスターライトグリルやマトリクスLEDランプ、ボンネット上に追加された一対のパワーバルジ、あるいはトランクリッド後端に控えめに設けられたリアスポイラー形状なども、クーペならではの特徴となる。荷室容量は420Lと、ゴルフバッグが2個は易々と収められる。
試乗車はレザーエクスクルーシブパッケージで、室内の仕立てやテーマはEクラスと共通する。ただし肩までサポートのある専用のシート形状や縦型11.9インチのセンターディスプレイゆえ、指数本分ほどだがパッセンジャー間の距離はより近い印象。
MBUXエンターテイメントパッケージプラスはなく、Eクラスに用意されていたセルフィ―用カメラやサードパーティアプリのインストールはできないそうだが「ビジネス寄りの機能」を省くことで、より親密なパーソナル空間というクーペらしいキャラは透けて見える。
この流れで唯一いただけないのはリアシートの左右を分ける、固い樹脂製のセンターコンソールだ。レザーストラップを引っ張って前席が電動スライドする乗降性のよさと大人ふたり分の最低限の居住性が確保されている分、惜しい。ともあれ、フロントシートの2人にプライオリティがある車であることは確かだ。
再出発が意味するものとは
直4の2LターボはISGそして9速トルコンATと組み合わされる。出足のクリープ現象は控えめに抑えつつも、アクセルへの反応は鈍すぎない。ジェントルだが唐突でない発進マナーは、歩道手前の一時停止とかいった街乗り状況でも扱いやすい。
MHEVというライトな電動パワートレインながら、従来的なICEよりタッチの部分での上質化、制御が着々と進んでいるのだ。
オプション装備だが、最小回転半径を5.2mから5mに抑えるリアステア機能にも不自然な感覚がなく、街中での取り回し易さを下支えしてくれる。
試乗車は可変シャシーのダイナミックボディコントロールサスペンションをオプション装着していた。首都高に入るとスポーツモードの出番。20インチの35扁平タイヤなのにダンピングが跳ねずバタつかず、脚がほどよく締まる感覚は、RWDで車重1800kgという基本骨格の良質さ、外連味なさによるとこが大きい。
CLEクーペのトップバッターにして初出のMHEVである本モデルには「出汁」のよさからひと手間かけて澄ませた、そんな旨味がある。
「大人のクーペ」というは易し。でも格付けランキングや多機能スマート化から一歩引いた上品さで「大人ぶりたいお子さま」には無理がある。だから全長4850×全幅1860×全高1420mmというサイズながら、これは「小さな高級車」でもある。
日常的な使い勝手に対して優雅なクーペ1台で折り合える、そんな暮らしやスタイルに漠然と憧れをもたらしてくれるだけでも、CLEクーペ・スポーツのほどよくスノッブで優雅な余韻は、貴重なのだ。
試乗車のスペック
価格:850万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4850×1860×1420mm
燃料消費率:14.5km/L(WLTC)
駆動方式:FR
車両重量:1760kg
パワートレイン:直列4気筒1997cc+ターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:204ps/5800rpm
最大トルク:32.63kg-m/1600~4000rpm
電動機種類:交流同期電動機
定格出力:10kW
最高出力:17kW/1500~3000rpm
最大トルク:20.90kg-m/0~750rpm
蓄電池種類:リチウムイオン電池
ギアボックス:9速オートマティック
タイヤサイズ:245/35R20(フロント)275/30R20(リア)
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みんなのコメント
ローンチエディションとして300辺りからと思ってたからね
需要が少ないので仕方がないが日本のメーカーもスタイルと優雅さを楽しめるクーペを作ってくれたらなぁ