カメラマンならではの独自な視点が好評な、山本佳吾カメラマンのラリーレポート。JRC(全日本ラリー選手権)の最終戦唐津は、チャンピオンの座ををかけた今年1番の熱いバトルが見られたようだ!
今年の王座争いは超僅差!
本来ならば開幕戦として予定されていたJRC、ツール・ド・九州2020 in 唐津が、最終戦にあたる実質第4戦として開催されました。今回の見所はなんといってもJN1クラスとJN3クラスのチャンピオン争い。まずJN1は、第3戦ラリー北海道終了時点で首位の新井大輝から4位の父、新井敏弘までの差が5.9ポイント。この5.9ポイント差の間に、2位の奴田原文雄、3位の鎌田卓麻がひしめく状態。2日目のデイポイントなど計算がややこしいのだけど、簡単に言えば唐津で勝ったらドライバー、コ・ドライバーともにチャンピオン決定という状況です。これはJN3も同様で、ドライバー、コ・ドライバーともに首位から4位までが8ポイント差で、こちらも唐津でチャンピオンが決定するという接戦でした。
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●JN3クラス トヨタ 86を駆る曽根・竹原組
今回の唐津は変則的なスケジュールで、金曜午前にレッキ、夕方にはデイ1がスタートしSSを2本消化。翌日土曜のデイ2には9本のSSを走行してフィニッシュという慌ただしいスケジュールでした。
デイ1の見所は、JRCではすっかり珍しくなったナイトステージのSS2。年齢を考えると夜でも見える若いドライバーが有利かと思いきや、このナイトステージを制したのはベテランの勝田・石田組でした。ランキングトップの新井・小坂組はこのステージ4位。若さよりもナイトステージの経験数が上まわったわけですねえ。ラリーは奥が深い! SS2を終えて総合首位は、オープニングのSS1で1番時計の奴田原・佐藤組。4.2秒差で新井・小坂組が2位、さらに2.7秒差の勝田・石田組が3位で続きます。
●SS2は、ライトポッドを装着して走るナイトステージだった
速さが別次元の2人
デイ2の1本目SS3からは、1位奴田原・佐藤組と2位新井・小坂組の一騎討ちでした。SS3終了後に4.6秒あったタイム差を、SS5終了時点で2秒差まで詰めた新井・小坂組。ステージで撮影していてもこの2台のペースは明らかに速くて、とんでもない争いになっていることをファインダー越しに感じていました。
●奴田原・佐藤組の三菱 ランサーエボリューションX
そして運命のSS6。奴田原・佐藤組が痛恨のスピン。新井・小坂組が逆転に成功します。そのタイム差は12.9秒。残るSSは5本。ここからはこの2台の戦いがさらにヒートアップしました。SS7はなんと同タイム。その後もSS8は奴田原、9は新井、10は奴田原と、この2台がベストタイムを獲り合うシーソーゲームを繰り広げ、最終SS11を残して2人のタイム差は11.3秒。そして最後は新井・小坂組が10.8秒逃げ切って優勝を飾り、同時に2020年のJN1チャンピオンに決定しました。
●フィニッシュ後に喜びを爆発させる、新井・小坂組
「嬉しいのと同時にほっとした! 全日本チャンピオンの称号を再び世界の舞台へと繋げたい」と新井大輝は喜びを噛み締めながら語りました。父の背中を追うようにラリーを始めたヒロキ。世界に挑戦するも、歯車が合わず悩み苦しんでいる姿を間近で見てきただけに、最終ステージのフィニッシュ直後に見せた笑顔に思わず泣きそうになったけど、そこはオトナの威厳を保つためにグッと堪えました。
●ポディウムでチャンピオンプレートを掲げる新井・小坂組
偉大なオヤジ世代が君臨し続けてきた、JRCのトップカテゴリーであるJN1クラス。ようやく若い世代のチャンピオンが誕生したけど、逆転されてからの奴田原・佐藤組のとんでもない走りを見てしまったので、来年はオヤジ世代の逆襲にも期待したいなあ。
世代交代はこのまま進むのか?
もう一方の注目クラスであるJN3。こちらもバッチバチのバトルが繰り広げられました。デイ1を首位で終えたランキング3位の山本・山本組が、デイ2の1本目SS3でコースアウト、リタイア。これでタイトル争いはランキング1位の竹内・木村組と2位の曽根・竹原組の2台に絞られました。SS7で曽根・竹原組が逆転するも、SS9で竹内・木村組が再び逆転。勝負が決したのは1.5秒差で迎えた最終ステージのSS11でした。曽根・竹原組が4.5秒まで差を広げ見事な逆転優勝でチャンピオンに決定。先にフィニッシュした竹内源樹は「リヤタイヤを使い切っちゃった……。」と悔しがっていたけど、周囲も興奮するほどのバトルを見せた満足感からか、笑顔も見せていたのが印象的でした。
●JN3クラスを制した曽根・竹原組
●JN3クラス2位の竹内・木村組
ラリーって、レースと違って目の前で起こっていることがすべてではないので、リザルトから色々と想像するのだけど、今回のこの2つのクラスのバトルはホントに興奮しました。たまたまだけど、どちらのクラスもドライバーはオヤジ世代と若い世代の争い。高齢化の波が押し寄せるJRCなので、若い世代を応援したいって気持ちはあるけど、ベテランのオヤジ世代の選手にもまだまだ頑張って欲しいって気持ちもあるし、なかなか複雑な心境です。若い選手たちには早く世代交代を進めてもらいたいし、ベテランの選手たちにはしぶとさを見せて欲しいなあと改めて思った最終戦でした!
●JN1クラス表彰台の様子
<文と写真=山本佳吾 text & photo by Keigo Yamamoto>
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