この記事をまとめると
■過去、「販売のトヨタ」と言われることがあった
「優れた性能」をもつライバルを圧倒! 「トヨタ車」がバカ売れする「販売力以外の」理由
■トヨタは売れているが、熱狂的なファンが少ない印象がある
■その理由やトヨタの今後について考えてみた
熱狂的なトヨタファンは少ない印象
昭和の時代には、“技術の日産”というフレーズが世の中で広く認知されていた。一方で“販売のトヨタ”ということもいわれていた。日産ではフェアレディZやスカイラインなどクルマ好きから高い支持を得ており、クルマ好きをうならせるモデルが目立つことは、“技術の日産”を裏付ける効果があったのかもしれない。そしてコアな日産ファンというものも目立っていた。一方のトヨタは当時から万人受けするモデルを多く扱っていた。筆者の私見となるが、技術的にも冒険をあまりしないところが、クルマに対してそれほど趣味性を持たず、実用性を重んじる人から支持されていたように見えた。
初代ホンダ・シビックが大ヒットし、海外の動きもあり、日本のいわゆる大衆車クラスのFF(フロントエンジン・フロントドライブ)化が進んだ。1980年にそれまでのFR(フロントエンジン・リヤドライブ)からFFへ代わった5代目マツダ・ファミリアが登場すると大ヒットした。カローラの宿敵、日産サニーも1981年に登場した5代目でFFへと代わったが、トヨタ・カローラは1983年に登場した5代目でようやくセダン(5ドアハッチバック)をFF化している(レビン系はFRのまま)。
日産やホンダ車を愛好する人の多くがカローラのFF化は遅れていると感じていたが、トヨタ車ユーザーからみると、「“機が熟した”からカローラもFFになった」と好意的に受け止める人も多かったようだ。つまりクルマ好きが飛びつくような、最新トレンドや斬新な技術導入をいち早く行わず、ある意味、安全運転に終始するトヨタの姿勢と、それを支持するユーザー層の傾向もあり、“熱狂的なトヨタファンが少ない”というイメージが定着してしまったのかもしれない。
アメリカに目を向けると、年齢の高い層ではトヨタをトラックブランドというイメージを強く持つ人も少なくない。トヨタに限らず、そして日本車に限らず巨大市場であるアメリカで、過去にいきなりアメリカ車の“一丁目一番地”にあたる販売中核カテゴリーモデルで販売活動を始めることはかなり難しかった。とくに昭和のころでは、とにかく大きいボディサイズに大排気量(日本でのトラックのような排気量も珍しくなかった)V型エンジン搭載車が、どのカテゴリーでも需要のメインなので対抗できるわけがなかった。つまり、まずニッチなカテゴリーでビジネスを始めるのが常道であった。
そこで日本車が目を付けたのが、アメリカでは“軽トラック”のような存在となる、フォードFシリーズなどより小さい、小型ピックアップトラックであった。トヨタは当然ながら小型ピックアップトラックだけでなく、乗用車もアメリカへ輸出して販売していたが、消費者の多くは、小型ピックアップトラックのほうが思い浮かべやすかったらしく、トラックブランドというイメージが一部で定着することとなった。
一方で日産は1969年におもに対米戦略車として、初代フェアレディZを発売する。目論見通り、アメリカ、とくに西海岸あたりで大ヒットすることになる。日産はロングノーズスタイルの2ドアクーペであるフェアレディZの大ヒットで、いち早く乗用車ブランドという認知をアメリカの消費者から得たのである。
トヨタも1970年に初代セリカを発表し、アメリカ市場でも展開するのだが、ファーストペンギンであり、その独特のスタイルを持つフェアレディZほどのインパクトを消費者に与えることができなかったようである。
ホンダは低燃費の小型車シビックで一躍アメリカにて注目のブランドとなった。いまではアメリカ国内の新車販売でもナンバー1となる実力を見せるトヨタだが、乗用車でインパクトのかなり強いモデルを市場参入初期にラインアップできなかったことが、日産やホンダなどとトヨタに対するアメリカでのブランドイメージの微妙な違い(トヨタは実用性の高いクルマのブランド?)を招いてしまったともいえよう。
メーカーの色は変わりつつある
そもそも、今日では世界一の販売台数を誇る巨大メーカーであるトヨタ。当然ながら幅広い層に販売していかなければ日本一や世界一にはなれない。そうなれば、一部のコアなファンに支持されるより、万人に評価されるモデルを開発し販売していかなければならないのだから、コアなファンが目立たないのは自然の流れにも見える。
アメリカのテレビドラマでは、セリフで車名が出てくるなどクルマを小道具として効果的に使っている。そんなアメリカのドラマを見ていると、たとえば刑事ドラマで被害者がごく一般的な市民であることを印象付けるためなのか、「被害者のクルマはトヨタ・カムリです」といったセリフが入ることも少なくない。故障が少なく、燃費も良く、価格もそこそこでリセールバリューの良いトヨタ車、とくにアメリカでのカローラセダン的存在となるカムリというのは、ごく普通のアメリカ人というキャラを印象付けるのには効果的なようだ。
しかし、豊田章男氏が社長に就任すると風向きが変わってきた。それまでは、どちらかといえばVW(フォルクスワーゲン)的だった、つまり実用性を重んじていたようなクルマ作りが変わってきたのである。トヨタだけではなく、メルセデスベンツなど量販ブランドユーザーの高齢化がアメリカはじめ世界中で目立っていた。メルセデスベンツはアメリカだけではなく、世界的にFF方式のコンパクトモデルの積極投入を行うようになって久しいが、これも若者や新たなユーザー層獲得を意識したものと見る話も聞いている。
トヨタも豊田章男社長の時代になると、若年層を中心とした新たなユーザー層を獲得するためもあったのか、登場当初は「ずいぶん思い切ったなあ」といわれるような外観デザインを採用するようになった。技術面でもクルマとしての今まで以上の基本性能の強化や、最新トレンドを積極投入する姿勢を見せてきた。またTRDやGRといった趣味性を強調したブランドモデルなどのラインアップも強化した。
筆者は30年以上歴代カローラセダンを乗り継いできており、いまは改良前の現行カローラセダンに乗っているが、見た目や走行性能も含め、“カローラですら”という表現は少々失礼かもしれないが、明らかに流れが変わったことを実感している。明らかに豊田章男社長の考えるクルマ作りというものが会社全体に浸透し、それがここへきて実車にあますことなく反映されてきていることを末端のトヨタ車ユーザーとして感じている。
筆者は熱狂的なカローラセダンファンを自負している。つまり、トヨタ車ユーザーにまったく熱狂的なファンがいないわけでもない。世界一の販売台数を誇り、国内販売シェアも圧倒的に多いトヨタだからこそ、熱狂的ファンが見えにいといった表現のほうがいままではふさわしく、最近のモデルラインアップを見ていると今後、熱狂的ファンは増えていく可能性を秘めているといっていいかもしれない。
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閲覧数を稼ぎたいタイトルという印象の記事。
(中身は無難と言えば無難)