「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、ダイハツ ミラ イースだ。
ダイハツ ミラ イース(2011年:ニューモデル)
JC08モードで30km/Lという、驚きの燃費数値を謳って、ダイハツが満を持して送り出した「第3のエコカー」と呼ばれるミラ イースにさっそく乗ってみた。「低燃費」「低価格」「省資源」をバランスさせた、その仕上がりぶりはどんなものなのか。
「燃費を良くしつつ、コストを下げるという目標を達成するために、部品一つひとつの役割から考えて点数を減らしたり、今後のスタンダードとするために設計し直したりと、すべてを3年間でやり遂げるのは本当に大変でした」と、開発主査の上田氏(編集部註:2011年当時)が語ったように、相当細かく突き詰めた工夫が凝らされているのはわかるが、ユーザー的に気になるのは「ホントにそんなに走るの?」ということだと思う。
残念ながら今回の試乗では燃費テストまでは行えなかったが、軽やかな走り味には正直ちょっと驚かされた。というのも、今回試乗した市販モデルは、以前に試乗したプロトタイプよりも、格段にフィーリングが良くなっていたのだ。
やはり燃費に振っているためか、プロトタイプでは走り出しはおとなしいなと感じられたのが、ずいぶん力強くなっていたし、高速巡航までの速度の乗り方もスピードアップしていた。ベースとなっているムーヴのパワートレーンと比べても、燃費の良さと引き換えにしてしまったところは、まったく見受けられない。変速もよりスムーズさが増し、全体的にシームレスなフィーリングになっていた。
ちなみに、ミラ イースのエンジンは、改良型のKF型と呼ばれるもの。今回、新エンジンを搭載したスズキのMRワゴンと比べてみたのだが、こちらは16年ぶりに新登場したR06A型だ。KF型はどちらかと言えば高回転型で、伸びの良い走りがウリだったが、従来のものよりスペックと発生回転数を抑えている。ベースの素性なのだろうが、スズキのエンジンは歴代、低中速域での力強さを発揮しやすい。実際のフィーリングは、街中をチョコチョコ走る力強さはMRワゴンの方が若干上だが、回転フィーリングはミラ イースの方が軽かった。
ミラより60kgも軽いのに、静粛性は高められた
ハンドリングは、軽自動車の中でも街中が主体のクルマなのでおっとり気味、乗り心地もホンワカとしたタイプではあるが、そのぶん路面の悪い街中などでは快適度が高い。車速が7km/h以下になるとエンジンが止まるアイドリングストップも、トロトロ渋滞で停止寸前→やっぱり動く、なんてシーンでも、素早く再始動してくれるので安心感が高い。
そして何よりビックリしたのが静粛性だ。遮音材増量による重さと軽量化のジレンマを、設計段階から手を入れることで解消したという。ミラと比べてマイナス60kgの軽量化を達成しつつ、静粛性は見事に高まっていた。
さて、走りと燃費はOKとして、もうひとつのポイントは価格だ。なんと最上級グレードの「G」でも、112万円という低価格。しかも、最近の豪華装備にすっかり慣れてしまっている軽自動車ユーザーを納得させるだけでなく、たいていの軽自動車ではオプション設定のVSC、オーディオ、SRSサイドエアバッグまで標準装備されている。
パッケージングも、ミラよりも室内高が25mm低いにもかかわらず、室内は明るくて開放感がある。軽量化のため新設計されたというシートも、ポジション調整機構も備えられた上に、クッション性も合格レベル。さすがに後席にゴージャスさはないが、広さは本当に文句なし。これだけ揃ってこの車両価格なら、試してみる価値はある1台といえるだろう。
■ダイハツ ミラ イース G 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1500mm
●ホイールベース:2455mm
●車両重量:730kg
●エンジン:直3 DOHC
●総排気量:658cc
●最高出力:38kW(52ps)/6800rpm
●最大トルク:60Nm(6.1kgm)/5200rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・30L
●JC08モード燃費:30.0km/L
●タイヤサイズ:155/65R14
●当時の車両価格(税込):112万円
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みんなのコメント
外から見るよりも実はハイト系で、高さ方向にスペースを有効に使う事で居住空間も広く、視点は高めなので視界は良い。
極端に聞こえるかもしれないが、道具として必要十分な性能があり、車はこれで十分。これ以上の車は贅沢品だとさえ思った。