ひと昔前まで国産車のほとんどは、日本に向けて作られるのが当たり前だった。ところが、今では国産メーカーの海外進出が進み、日本で売る車=海外でも売る車という図式が、すっかり一般的になってしまった。
そうなると、日本の環境には合わない“大柄で高価な日本車”が増えるのは必定の成り行き。逆に、タイなど新興国で生産された車を日本で発売した例もあったが、これもクオリティの低さが目立ち、日本のユーザーには受け入れられなかった。
【航続距離増加 出力58ps増 価格50万円高】日産リーフe+は会心の一撃になるか!?
“日本車なのに日本に合っていない”というジレンマを解消するには何が必要なのか?
文:御堀直嗣
写真:編集部、TOYOTA、Honda、MITSUBISHI
かつてのカローラと同じ? 安いだけじゃない軽の価値
2018年の年間新車販売の順位を見ると、上位4位までが軽自動車だ。その後、10位までを見ても8位のプリウスを除いて、他は登録車でも5ナンバー車である。
また、登録車では、5位のノート(販売の7割がe-POWER)をはじめ、アクア、プリウスともに、ハイブリッドが主体の小型車である。年間の新車販売台数約527万台のうち、4分の1近い約126万台の上位10台が、新車の販売動向を上記のように示している。
なかでも軽自動車は、527万台の内昨年は192万台を販売し、それは全体の36%強を占め、3分の1以上という変わらぬ人気を維持している。軽は安いからとの印象が語られやすいが、その価格帯は80万円台から200万円を超える金額まで幅広い。
また、廉価な乗用車から、ハイトワゴン、4輪駆動車、スポーツカー、スペシャルティカー的な位置づけなど、軽の枠の中だけで豊富な価値観が提供されている。必ずしも安価であることだけが軽自動車の魅力ではない。
さらに着目すべき点は、現在の軽自動車規格の車体寸法であり、ことに車幅に関しては、1960年代の初代カローラやサニーとほぼ同じで、全長もカローラやサニーが3ボックスカーであったためやや長いが、それほど大きな違いがあるわけではない。
1960年代にそうした大衆車が現れたことで、日本の自動車社会は発展した。発展のための道路や駐車場など社会基盤も、それら大衆車を含む5ナンバー車に合わせて整備されてきた。したがって日本の道路を走る上で、今日の軽自動車が、もっとも扱いやすい大きさなのである。
国産5ナンバー車が秘めるEVの可能性
登録車においても、「5ナンバー車」というといかにもガラパゴス的で、グローバルカー時代には不似合いな印象がもたれているが、たとえばイタリアの「マテオ神父の事件簿」というミステリードラマでは、ダイハツのテリオスやスズキのジムニーシエラが人々の足として出てくる。石積みの家や石畳の道といった古い町並みを残す欧州には、日本の5ナンバー車が適しているという一例ではないか。
とはいいながらも、軽自動車や5ナンバー車は、基本的には実用車として生まれ、発展してきた経緯があるので、上質さや高性能さといった点で、車種によっては十分でないという思いがあるかもしれない。そこで、日本の軽自動車や5ナンバーでも高い満足を得られるクルマとして、電気自動車(EV)化の進展を提案する。
EVというと、距離への不安や、価格の高さへの懸念がまだ根強い。実際、三菱i-MiEVは294.8万円からという値段で、200万円超えのエンジン車と比べても約80万円の差がある。安い軽が1台買えてしまう価格差だ。あるいは日産 リーフは、324万円からという価格であり、ノートe-POWERの190万円からに比べ134万円も高いのである。
それら課題に対して、まず距離の問題から話すと、一充電でi-MiEVは164kmである。リーフは、400~570km(WLTCでは322~458km)を実現している。どちらも、比較の都合上JC08モードでの数値だ。
日本でのクルマの使い方を考えると、軽自動車や5ナンバー車であれば、それら国産EVはすでに十分な距離を獲得しているといえるのではないだろうか。そのうえで、充電設備の普及において、これまでとは違った展開が強く求められるのも事実だ。
それは、自宅と目的地(勤務先、ショッピングモール、レストラン、宿泊施設など)での200ボルト(V)による普通充電の拡充である。
世界的に、所有されるクルマの利用状況は、9割が駐車で、走行は1割ほどとされる。その9割の駐車時間を充電に充てるというのが、普通充電普及の基本的考えだ。これこそ、EV利用の極意である。
急速充電器を増やして、ガソリンスタンドの代わりにする発想だから、充電時間が論議の種になる。しかし、クルマは9割の時間止められているのだから、それを有効に活用しようという話である。
こうすれば、自宅を出て、用事のある場所へ行くまで100km以上連続して走る例はまれであり、目的地で充電できれば、次の場所や、自宅へまでの電力は満たされる。数百キロの移動であれば、日本なら鉄道や高速バスなどを利用するのが一般的ではないか。
そして急速充電器は、万一足りない時の臨時の設備となり、例えていうなら公衆トイレのような価値観で考えるといい。ガソリンスタンドの代替的発想は、EVには適さないし、本質を活かす取り組みではない。
軽トラが鍵握る!? EV作りは車の高額化を見直すチャンス
次にコストの問題だ。誰もが、リチウムイオンバッテリーの部品代は高いと知っている。だが、ハイブリッド車を例にすれば、エンジン車にモーターやバッテリー、制御システムなど部品を追加して作られている。ハイブリッド車こそ、コスト高の体質だ。そこから、エンジンやトランスミッション、排ガス浄化システムなどを取り去れば、部品代は減って、それをバッテリー代へまわせばいいのではないか。
また、エンジン車で付加価値とされたシートヒーターやステアリングヒーターを標準とする代わりに、車内全体の冷暖房をしなければならないエアコンディショナーは、電力使用量が10倍以上多いので、副次的装備に考えるなど、冷暖房の考え方にも新しい発想が求められる。実際、空調関係者の間では、輻射熱の利用などの検討がはじめられている。
そのように、エンジン車で標準とされてきた装備と、注文装備とされてきたものの価値を、EV専用にゼロから見直しを行えば、コストの再評価も可能だろう。
さらに、劇的な原価低減への挑戦のため、私は「100km・100万円・軽EV」という構想を、3年前から提唱し、国内自動車メーカーへ提案してきた。これは、850万台近い保有台数の軽貨物を、まずEV化し、生産財として厳しい目がもたれる軽トラックや軽バンでEV原価を切り詰める挑戦である。
ただし、バッテリーを多く積めば価格は上がるので、一充電走行距離は100kmで納得する。仕事で使われる機会の多い軽商用車であれば、合理的な走行距離の目途もたつだろう。そのうえで、仕事のクルマとして4輪駆動への要望が高いので、パートタイム式であっても、モーターを2個使うのであっても方式は問わず、4輪駆動は用意する。
車種を問わず、商用車は全体的に快適性が犠牲になっている場合が多く、働く時間の多くを不快な運転環境に居ることは健康的ではない。EVになれば振動・騒音は軽減され、労働環境も改善される。当然ながら、電気代はガソリン代より安く、少なくとも半分にはなるはずだ。経費節減につながる。
“日本主体の車”をもう一度作るには何が必要?
軽商用EVで原価を突き詰めたら、軽乗用や登録車の5ナンバー車へもコストが見合っていくのではないか。
ガソリンスタンドが半減した今日、タンクローリーから直接給油することを認める特区を設けるより、自宅で充電できる軽EVで働く方が、よほど手間が省ける。
そのうえで、EVは、静粛性はもちろん、走行中の乗り心地もバッテリー重量が増える分、落ち着きのある快適さが得られる。たとえばi-MiEVに乗っていると、寸法的広さはともかくとして、走行感覚は軽に乗っているとは思えなくなってくる。
さらにモーターは、その動力特性によって、アクセルを深く踏み込んだ際の加速が強烈だ。
つまり、EVは静かで乗り心地が良く、加速が鋭い、すなわち従来エンジン車で高級車だとか、高性能スポーツカーだとかいわれてきた3ナンバー車が追い求めた性能を、軽自動車や5ナンバー車でも実現できるのである。
これを、日本独自の市場に合わせた魅力的新車として普及していけば、小さくて質の高いクルマとして消費者は喜ぶのではないか。
そして日本には、クラウンやレヴォーグといった国内市場向けのクルマに人気がある。そういう3ナンバー車に対しても、バッテリーを多く積めば適応できるし、あまりたくさんバッテリーを積みたくないなら、発電用のエンジンを搭載するレンジエクステンダーという応用も可能だ。
米国のテスラは、バッテリーをたくさん積むことで高級EVを作り、ドイツのBMWは距離を求める人のためにi3にレンジエクステンダーを用意している。
日本仕様としてしっかり原価を追求し、軽自動車や5ナンバー車に適用できる理想のEVを構築できれば、それはグローバル展開できるのである。
最大の問題は、車両開発にしても充電などの社会基盤整備にしても、エンジン車の延長でしか考えられない思考の頑固さにある。
柔軟にEV最良を求め、市場が無いのではなく市場を開拓する挑戦ができれば、私の提案は実現できるはずだ。そうした柔軟性は、やはりベンチャーであったり異業種であったりするというのが、現状ではないだろうか。
日本最良のクルマの回答は、EVにありと言いたい。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
トヨタ本気の「小さな高級車」に驚きの声! めちゃ豪華な「本革×本木目」内装を採用! 小型車に「クラウン品質」取り入れた“直列6気筒エンジン”搭載モデルに反響あり!
日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
スズキ・フロンクスが月販目標の9倍も受注! 絶好調な理由は小さくて安いのに感じられる「高級感」!!
日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
トヨタ『ランドクルーザー』リコール…ドライブシャフト不良、走行不可能になる恐れ
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
中古車バブル崩壊……その時あなたは何を買う!? 絶版国産[スポーツカー]ほしいランキング
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?