日産自動車は11月28日、バッテリーの蓄電・放電機能を活かし、電気自動車の持つ魅力をさらに向上させるソリューション「Nissan Energy(ニッサン エナジー)」を発表した。
日産は、「日産リーフ」などのEVを中心とした「エコシステム」の構築を目指し、日本・米国・欧州ですでに取り組みを始めている。「Nissan Energy」はこれらのソリューションの総称で、「ニッサン インテリジェント モビリティ」の取り組みの一環だ。
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Nissan Energy」のもと、日産のEVを利用しているユーザーはEVとエネルギー・システムをつなぐことで、車載バッテリーの充電に加え、そのバッテリーに貯めた電力を家やビルに給電できる。さらに、その電力を電力網に供給することも可能になる。あわせて日産は、EVのバッテリーの二次利用についても提案していく。
グローバル販売・マーケティングを統括するダニエレ・スキラッチ副社長は、次のようにコメントしている。
「『Nissan Energy』によって、お客さまはご自身のEVを運転するだけでなく、生活の中でさまざまな用途にEVをお使いいただくことができます。『Nissan Energy』は、クルマがエネルギーをどのように使い、どのように走るのか、そして社会とどのようにつながっていくのかということを再定義することで、日産車をより魅力的なクルマにするアプローチ『ニッサン インテリジェント モビリティ』のビジョンを実現するソリューションです」
クルマとエネルギー・システムをつなぐ「Nissan Energy」には「Nissan Energy Supply(ニッサン エナジー サプライ)」、「Nissan Energy Share(ニッサン エナジー シェア)」、「 Nissan Energy Storage(ニッサン エナジー ストレージ)」の三つの重点活動がある。
Nissan Energy Supply:自宅や外出先、旅先でも充電可能
ユーザーがいつでも必要なときに充電できるようにさまざまサービスを提供する。大多数のユーザーは自宅で充電するので、日産では、住宅用充電設備(コンセントや充電器など)が日産の電気自動車に安全に接続できるかを検証したり、日産が認定した設置業者を紹介することで、ユーザーに安心感を提供する。(市場により異なる)
また、外出先や旅先ではCHAdeMOの急速充電器を使用することができる。CHAdeMOの充電ネットワークは世界最大の規模で、すでに世界で22,000 基を超える急速充電器が配備され、その数は拡大を続けているす。ユーザーはNissanConnect EVアプリや車載ナビゲーションシステムから、どこで充電ができるか確認できる。
Nissan Energy Share:パートナーとともにEVを活用したエネルギーマネジメントを推進
EVのバッテリーはクルマの動力源であるだけでなく、移動可能な蓄電池としても機能する。すでに世界中を走っている日産のEVの総蓄電可能容量は、10GWh以上。「Nissan Energy Share」によって、EVとインフラをつなぎ、EVの大容量バッテリーに蓄えた電力を住宅やビルに給電することが可能となる。さらに、複数のEVと電力網をつなげることで、VPP(Virtual Power Plant)の役割を果たし、効率的なエネルギーマネジメントに貢献する。
日産は、すでに日本、米国、欧州などの市場で複数のパートナーと協業し、「Nissan Energy Share」の実証実験を進めている。実証実験完了後には、本システムの実用化に向けて準備を進めていく。
● Vehicle-to-Home(V2H)
日産はパートナー企業と協力し、価格競争力の高いV2H機器(PCS)の市場投入と 普及を促進する。V2Hを利用することで、日産のEVのユーザーは、再生可能エネルギーや電力料金の安い時間帯にEVに充電した電力を自宅で使用することができる。さらに、EVの蓄電池は停電時や緊急時のバックアップ電源にもなる。
● Vehicle-to-building(V2B)
V2Hと同様に、V2BはEVのバッテリーに貯めた電力を使ってビルや事業所に給電するシステムだ。企業がV2Bで大きなコストダウンを実現するには数百台のEVが必要なため、本格的なV2Bシステムの実証実験が様々な国で始まっている。また、日産は複数のパートナーと協業し、2019年にV2Bシステムの市場投入を目指している。
● Vehicle- to-grid(V2G)
日産は、電力会社や行政機関と提携し、V2Gの活用も検討している。欧州で行なわれている実証実験では、日産車が電力網に複数のサービスを提供し、エネルギー需給のバランスをとることや再生可能エネルギーの活用促進に寄与している。日産は複数のパートナーとともに、ユーザーがクルマを利用しない時に移動手段としてのニーズに影響を与えることなく、車載バッテリーに蓄えた電力を共有することで収入を得られる仕組みの検討を進めている。
Nissan Energy Storage:車載バッテリーの二次利用
日産のEVに搭載されるバッテリーは、クルマで使用された後でも高い性能を有しており、例えば電動フォークリフトの動力源、や競技場への電力供給源としてなど、さまざまな用途への再利用・再製品化が可能だ。
また、EVが普及し、EVの買い替えが進むことで、二次利用可能なバッテリーの供給は大きく増加することが見込まれている。
● 日本
日産と住友商事は、EVに使用されたバッテリーの二次利用を行なう「フォーアールエナジー株式会社」を2010年に設立している。また、2018年3月には、フォーアールエナジーは使用済みバッテリーの再利用および再製品化に特化した新工場を開業した。同社のバッテリーの再製品化技術を活用することで、使用済みのバッテリーをEV向けの交換用バッテリーや蓄電システム、重機用のバッテリーなど、さまざまな用途に再利用することが可能になる。
● 欧州
日産はEVバッテリーを再利用して、家庭における定置型蓄電池に活用しており、英国では太陽光パネルとその蓄電池を組み合わせて使用している。2018年6月には、欧州で最大規模の蓄電システムが、オランダのヨハン・クライフ・アレナ スタジアムで稼働した。本システムでは「日産リーフ」の車載バッテリー148個を使用しており、電力網とは独立して駆動する。
● 南米
ブラジル日産とサンタカタリーナ連邦大学(Federal University of Santa Catarina)は、使用済みバッテリーの将来的な活用に向けた実験を行なう覚書を締結した。
ダニエレ・スキラッチ副社長はさらに述べている。
「日産は『Nissan Energy』のもと、真のEVエコシステムを提供します。EVを所有するだけでなく、そのポテンシャルを最大限に発揮させることで、お客さまや社会全体に利益をもたらすEVエコシステムは、電動化の新たな基準になるものと考えています」
また、国内では、「クルマも、道路も、街も、社会も、もっともっと美しい“ブルー”に、日本をもっと美しい国に」、との想いを込めた日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」を推進していく。
日産は、北米日産の本社をはじめ、グローバルに「Nissan Energy」を強化する取り組みを始めている。
● 米国 テネシー州フランクリン
北米日産本社で、電力需要ピーク時に「日産リーフ」から社屋に電力を供給するパイロットプログラムを行なう。これにより、電力料金の大幅な削減が見込まれる。
● ドイツ ハーゲン市
テクノロジーカンパニーであるMobility House社、電力会社であるENERVIE社、並びに電力システムオペレーターのAmprion社とともに、「日産リーフ」を使ったV2G(Vehicle to grid)の実証実験を開始する。
● 日本
日本の大手電力会社や通信会社などともに、EVをエネルギーマネジメントに活用していく可能性を検証するため、V2GやVPP(Virtual Power Plant)の実証実験を行っている。
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