新型は、新たなアイコンに
今年8月から9月にかけて、全国ディーラーキャラバンを行うかたちで日本でのデビューを果たしたマセラティ新型グラントゥーリズモが、東京の築地本願寺で正式に発表された。
【画像】14色をまとう! グラントゥーリズモ「プリズマ」を見る【日本上陸】 全12枚
今回は日本だけでなくアジアパシフィック地域のプレビューイベントでもあるということで、海外メディアも多く詰めかけていた。築地本願寺を選んだ理由のひとつも、そこにあった。
プレゼンテーションを行ったマセラティ アジアパシフィックのマネージング・ディレクターでマセラティ ジャパン代表取締役の木村隆之氏は、現在の築地本願寺の建物はアジアを研究対象としていた建築家が設計しており、ユニークで多様性を感じられるところがアジアパシフィックの発表会の舞台にふさわしいと感じたそうだ。
新型グラントゥーリズモについてはまず、1947年に発表されたA6 1500からの系譜を受け継ぐモデルと紹介した。
A6 1500はレーシングカーに積まれていたエンジンを流麗なクーペボディに組み合わせ、パフォーマンスとコンフォートを高次元で両立した、当時としては稀有な存在だった。これが現在のマセラティのクルマづくりの源流になっており、グラントゥーリズモは新しいアイコンになる存在であると語った。
SUVの時代に選ばれるには?
新型のアピールポイントについて木村氏は、パフォーマンス、デザイン、コンフォートの3つの要素があると説明した。
パフォーマンスでは、F1エンジン由来の特許取得済みプレチャンバー・コンバスチョン技術を使用した3リッターV6ツインターボの「ネットゥーノ」、AWD、アルミやマグネシウムなどをふんだんに使用した軽量ボディを紹介。
デザインはタイムレスであること、コンフォートではリアル4シーターであることを挙げた。
スタイリッシュでありながらユーティリティにも長けたSUVが主流になる一方で、2ドアのラインナップは世界的に減少傾向にある。グラントゥーリズモとて安泰ではないと思われるが、木村氏は後席にも大人が乗れセダンのように使えるので、クーペを好むユーザー以外にもアピールしたいと話していた。
バリエーションは、V6ネットゥーノエンジンを積む「モデナ」と「トロフェオ」、マセラティ初の電気自動車となる「フォルゴーレ」の3タイプとなる。
まず12月からモデナとトロフェオのデリバリーが始まり、フォルゴーレは来年の予定となっている。
エンジン車か 電動モデルか
モデナとトロフェオの大きな違いはエンジンのパフォーマンスで、前者は最高出力490psなのに対し、後者は550psにアップし、最高速度は302km/hから320km/h、0-100km/h加速は3.9秒から3.5秒にそれぞれ向上する。
フォルゴーレはフォーミュラEの経験をフィードバックしており、300kWのモーターをフロント1基、リア2基搭載した3モーターのAWDとなる。
92.5kWhの容量を持つ駆動用バッテリーは床下ではなく、センタートンネルとリアシート部分にTボーン型に搭載した。タイムレスデザインとの融合が念頭に置かれている。
このフォルゴーレについて木村氏は、「伝統とは灰を崇拝することではなく火を守ることだ」という作曲家グスタフ・マーラーの言葉を引用し、エンジン車と同等の前後荷重配分、情熱的なドライビングなどにより、マセラティらしさを尊重しつつ電動化という新しい世界を確立していると説明した。
とはいえ日本市場はフォルゴーレよりも、“最後のエンジン車かもしれない”ということで興味を抱く人が多くなりそうとも分析していた。
またグレカーレは他のブランドから来た人が多かったのに対し、グラントゥーリズモは伝統的なクーペスタイルということで、昔からのファンが多くなるのではないかと予想していた。
まさかの14色 「プリズマ」
会場に展示された2台のグラントゥーリズモは、どちらも特別仕立てだった。
プレゼンテーションが行われたホールに置かれていたのは、A6 1500が登場してから75周年であることを記念した「75thアニバーサリーエディション」。展示されていたマットグレーのボディにレッドのアクセントのほか、ブラックボディにグリーンアクセントという仕様もあり、ホイールのセンターとシートのヘッドレストに75周年記念のロゴが与えられている。
一方ホールに通じるロビーに展示されていたのは、マセラティのカスタマイズプログラム「フォーリセリエ」を通じて制作され、ミラノデザインウィークに展示されたワンオフの「プリズマ」だった。
ボディカラーには14もの色が使われており、そのうち12色は過去の車種に使われたもの。グラデーションの部分にはセブリングやミストラルなど名車の文字を見ることができる。すべて手作業で仕上げられたそうで、イタリアならではのアーティスティックなクラフトマンシップに圧倒された。
そして建物の前には、1957年生まれの3500GTと1998年生まれの3200GTの2台が展示されていた。ヒストリックな車種だけを置くのではなく、自分も所有していた比較的最近の車種も並べるところに好感を抱いた。
過去の遺産だけにとらわれず、75年の歴史全体を振り返ったうえで、マセラティにふさわしい未来を考え、かたちにしたのが新型グラントゥーリズモなのだと感じた。
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