BMW直6ターボを搭載した衝撃のS14シルビア!
禁断のフュージョン、ここに極まれり
「シルビアにBMWの直6エンジンを搭載!?」構想から完成までに2年間を費やした伝説のS14!
S14用のロケットバニーBOSSワイドボディキットがSEMAで話題をさらった2015年。スティーブ・ファムもまた、ショーに先立ってキットを手に入れた最初のオーナーのひとりだった。だが、クルマの完成に約2年の時間を要したため、予定していたSEMAへの参加は叶わなかった。では、なぜそんなに時間がかかってしまったのか。それはこのS14に施されたモディファイの内容を知れば納得するほかない。
スティーブのS14に、まず飛躍的なイマジネーションを与えたのは、カリフォルニアのエルモンテにあるBMWプロショップ『LTMW(LTモーターワークス)』である。プロジェクトのプロデューサー役を果たしたLTMWは、BMW製の直列6気筒直噴ターボエンジンをS14に移植するアイデアをスティーブに提案した。
RB26や2JZ、V8のLSなどをスワップする例はアメリカでも数多くあるが、BMW製モーターをS14に搭載したという話はまだ聞いたことがない。オリジナリティに溢れるアイデアにスティーブも賛同し、E92型335iから引っこ抜いたN54型エンジンと6速MTをS14に移植するという、世界初の試みにゴーサインを出したのである。
S14のエンジンベイにシルキー6を搭載することは、当初想像していた以上に困難を極めたそうだ。バルクヘッドを切開してエンジンをマウントしたものの、サスタワーとの間にはわずかなクリアランスしかないため、エキマニをワンオフで作るなど手間と時間のかかる作業の連続。それでも、タービンをより目立つ位置にレイアウトしたり、お約束のシェイブドベイやワイヤータックを取り入れたりして“魅せる”ためのエンジンルーム作りにも労を厭わなかった。
エンジン本体のチューニングは、もちろんBMWスペシャリストであるLTMWが担当。サスタワーとのクリアランスに収まる6-1集合のエキマニ、3.25インチのダウンパイプなども製作。ターボレイアウトにはTurbonetics製のGT-K850タービン、ウエストゲート、ブローオフバルブを使用し、出口へと向かうエキゾーストラインは純正を流用している。「ここしかないだろ」と言わんばかりに、手前にガツンと置かれたタービンがアメリカ流だ。パワーアップは純正ECUの書き替えで対応し、最高出力は657hp(約666ps)に迫るという。
ホイールは地元カリフォルニアの人気ブランド、ロティフォームの鍛造3ピースRBQをセット。ビンテージな雰囲気が旧車ルックに映える。タイヤはトーヨーのR888。ブレーキも同じくカリフォルニアブランドとして知られるストップテックのビッグキャリパーキットが装着されている。
ロケットバニーのBOSSにとってはB110サニーなど旧いダットサンのイメージと捉えられることが多い。ペイントにはM3などに使用されるBMW純正のラグナセカブルーを採用。エアリフトパフォーマンスのエアサスを装備し、車高調整も思いのままだ。
室内も凄まじい。エンジンとトランスミッションがキャビンに食い込むため、センターコンソールをワンオフで製作。右ハンドル化にともなって、ペダルはウィルウッドのアッセンブリーキットと純正のアクセルペダルを使ってリロケート。
BMWのメーターも流用している。ステアリングとバケットはスパルコ製。ワンオフのロールケージもボディ同色で塗られた。センターパネルにはボディキットのフィッティングを実車で行った、TRA京都の三浦さんが書いた「三浦参上」のサインが。
2015年のSEMAに間に合わせることはできなかったが、そうして見事に完成したスティーブのS14は、2016年のWEKFESTサンノゼやJCCS、そして念願だったSEMAにも出展。ショーデビューを果たすや、SNSやメディアに数多く取り上げられて大きな注目を浴びた。
オールド・ダットサンのような旧車ルックに生まれ変わったジャパニーズカーに、ヨーロッパのハートとアメリカのエンターテイメントを融合させることに成功したスティーブ。これをオリジナルと言わずして何と呼べばよいのだろう。その功績に大きな拍手を送りたい。
Photo:Akio HIRANO TEXT:Hideo KOBAYASHI
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