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シビックで続くスポーツe:HEVの挑戦【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

掲載 更新
シビックで続くスポーツe:HEVの挑戦【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

モータースポーツ [2023.12.18 UP]


シビックで続くスポーツe:HEVの挑戦【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】
文●石井昌道

今年最もカーシェアされたクルマは?「カーシェア・オブ・ザ・イヤー2023」発表 エニカ

 フィットe:HEVによるレース活動は当コラムで何度か紹介してきたが、当初の計画通り3カ年での活動を終え、今度はシビックe:HEVにスイッチした。

 もともとは、自分は2012年にモータージャーナリスト仲間と、ハイブリッドカーなど次世代パワートレーンでモータースポーツを行うチーム“Tokyo Next Speed”を立ち上げた。2020年にフルモデルチェンジされた4代目フィットは、e:HEVと呼ばれるハイブリッドシステムを新たに搭載し、これによってレースに出てみたいと目論んだことから3カ年の活動が始まった。

 ハイブリッドカーなど電動車でサーキットを走ると、バッテリーなど電気系が熱をもってフェールセーフが働いてパワーが落ちたりする。ガソリン車でもラジエターを大型のものに交換するなどと同じことだが、水温ならば比較的容易に調べられるものの、ハイブリッドカーの、どこをどのように温度計測して、どれぐらいに収まっていれば問題なし、などということは自動車メーカーのエンジニアでなければわからない。

 そこで4代目フィットの試乗会のときに、開発陣にe:HEVでレースをやりたいから、トラブル等が起きないように協力してもらえないか? と話を持ちかけたのだった。自分としては、例えばバッテリーにはどれぐらいの冷却対策をしないとダメ、などアドバイスがもらえるだけでもありがたいと思っていたのだが想像以上に話が盛り上がり、開発陣とコラボレーションしてレースに参戦することが決まった。

 じつは4代目フィットの発売当初、3代目まであったスポーティモデルのRSを用意できず開発陣も悔しい思いをしていて、3年後のマイナーチェンジには用意しようと決意していたから、その開発スタディにちょうどいいという事情があったのだ。レース活動を経て、2022年には無事にフィットe:HEV RS が発売され、役割を終えたのだった。

 この取り組みは社内でも評判が良く、e:HEVの可能性をもっと追求すべきだということになってシビックe:HEVへのスイッチが実現。e:HEVをスポーツドライビング向けに開発することを含めてレースに参戦していく。レースはこれまでと同様、モビリティリゾートもてぎでの“もてぎEnjoy耐久(Joy耐)”で、夏に7時間のJoy耐、冬に2時間のミニJoy耐がある。アマチュアのレースではあるが、燃費性能も問われるルールのなか、エンジン車と競うとどうなるのかを試すにはちょうどいい場でもあるのだ。

 フィットe:HEVは、最初のテスト走行では2分46秒台という、かなり遅いラップタイムだったものの、最終的には2分26秒台まで向上させた。市販車とはハイブリッドシステムの制御をかえてスポーツ走行向けとし、エンジンやバッテリーの強化、LSDの採用、軽量化などが主なタイムアップのポイントとなった。

 シビックはフィットよりもサイズが大きく、車両重量は市販車同士で約250kgも重たくなるのだが、エンジンが1.5Lから2.0Lとなり、電気モーターは90kW(123PS)から134kW(182PS)へとパワーアップされているので、パフォーマンスは高い。

 今回はエンジンやバッテリーなどはノーマル、LSD無しのまま挑んだが、予選では2分23秒651を記録、22台中12位となってまずまず好調な滑り出しとなった。走らせていても加速もストレートスピードの伸びもフィットとは段違い。また、リアにマルチリンク式サスペンションを使うシャシーのポテンシャルも高く、コーナリング性能でも違いがある。安定感がありながらノーズの入りが良くて自在感があるうえ、すべての動きが洗練されていてスムーズに走れるのだ。

 最初からある程度以上のレベルで走れているのは、フィットでの経験に基づいてハイブリッドシステムの制御の適正化などがなされているからだが、これは楽しみ。今後はLSDの採用やギア比の変更など、まだまだパフォーマンスをあげるアイデアはいくつもある。

 ただし、車両重量が増しているのにパワーがあるから速いということから想像される通り、燃費は悪化した。フィットに比べると20~30%は余計に燃料を消費してしまっているのでレースでは辛い。Joy耐は、給油時のピット滞在時間がクラスによって9~12分などと決められていてレース結果を左右する。フィットは2時間を無給油で走り切れたが、シビックは無理。給油を後半まで引っ張った結果、一時は4位まで進出したものの、給油後は14位にドロップしてしまった。さらに、終盤にはサスペンション周りに振動が出てきたので、一度ピットインしてチェックした後、ペースを落としてチェッカーを目指したので最終的な結果は最下位に終わった。

 燃費が課題となり、予選用と決勝用でハイブリッドシステムの制御を変更するなどを検討しなくてはならないが、ポテンシャルの高さに期待が持てるシビックe:HEV。スポーツドライビングが楽しめるハイブリッドカーを目指して、2024年のJoy耐へも参加するつもりだ。また、2024年1月12~14日に東京ビッグサイトで開催される東京オートサロンでは、新たなカラーリングを身に纏って出展するので、訪れる方は是非とも目にしていただきたい。

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