現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 現代コーチビルドの最高峰。世界に1台の蘇った“黒いクルマ”とは?

ここから本文です

現代コーチビルドの最高峰。世界に1台の蘇った“黒いクルマ”とは?

掲載 更新 2
現代コーチビルドの最高峰。世界に1台の蘇った“黒いクルマ”とは?

唯一無二のハイパーカーを送り出すブガッティ。限定モデルであるヴェイロンやシロンとは別に、さらにワンオフもしくはフューオフモデルの開発が行われている。特別な顧客の要望とブガッティの理念が合致した際に生まれる極めて特殊なモデル、その極めつきを紹介する。

唯一無二の存在として、ハイパーカー界の頂点に君臨

SUVのフリした7座ピープルムーバーにして大人ツアラーというプジョー5008の万能性

「何かと比較されるようであれば、それはもはやブガッティではない」。あまりに有名な創始者エットーレ・ブガッティの言葉だ。

確かに戦前のエットーレ時代、110年目にイタリアはモデナで復活したロマーノ時代、そして21世紀になってからの、言わばピエヒVW時代、と、いずれの時代にもブガッティ・エンブレムをつけたモデルは“唯一無二”、無比、無双であった。

フェルディナント・ピエヒ(故人)率いるVWグループ(当時)がブガッティ・ブランドを買収した経緯には面白い逸話がある。90年代末のこと、VWグループでパワートレーン全般の開発責任者であったカール=ハインツ・ノイマンと共に来日していたピエヒは新幹線の中でとあるアイデアをスケッチし始めた。それは狭角V6ユニットを三丁がけにして18気筒エンジンとするアイデアだった。

このエンジンを実現させ然るべき高級車に搭載する。その一方で3リッターカー(ガソリン3リッターで100kmの走行が可能なクルマ)の開発にも勤しんでいたグループにとって、このアイデアは小から大までエンジン全般の技術を掌中に収めるという野望に満ちたものだった。

ピエヒはどうやら当時買収交渉の最中だったロールス・ロイスにこのエンジンを積みたかったようだ。けれども買収に成功したのはベントレーのみ。そこでピエヒが目をつけたのが、ブガッティだったという。たまたま孫が落書きで描いていたクルマ、タイプ57SCアトランティークを見てブランド名の買収を思いついたともいわれる。

かくして2000年、カール=ハインツをあらたなトップにすえた新会社ブガッティ・オートモビルが仏アルザスのモルスハイムに設立される。紆余曲折あってエンジンそのものはW18自然吸気ではなくW16クワッドターボとなったが、それでも1000psオーバーの8リッターエンジンを積んだ “ヴェイロン”は唯一無二の存在としてハイパーカー界の頂点に君臨した。ヴェイロンの総生産台数は400台。

2016年のジュネーブショーで後継モデルの“シロン”が発表される。基本的なコンセプトこそヴェイロンから引き継いだものの、W16を含め全てを新たに設計し直した。最高出力はなんと1500ps。無比無双を改めて目指した成果であった。

シロンの生産台数は500台と限定されており、スタンダードバージョンに加えて、シロンスポーツ、シロンピュアスポーツ、シロンスーパースポーツ300プラス、さらには先日発表されたばかりのシロンスーパースポーツとバリエーションを増やし、そろそろ最終のオーダータームに入っているとされる。

ヘリテージを体現する、現代のコーチビルドビジネスの最高峰

それとは別勘定でブガッティは現在、コーチビルド・プロジェクトというワンオフもしくはフューオフ(生産台数が2桁以内)モデルの開発にも余念がない。これは特別な顧客の要望とブガッティの理念が合致した際に生まれる極めて特殊なモデルであり、戦前のブガッティでも様々なコーチビルダー(ガングロフやヴァイマンといったボディ架装専門メーカー、イタリアのカロッツェリアに相当する)を活用した同様のオーダーを受けていた。

現代のコーチビルドビジネスにおける代表作が18年発表のディーヴォ(40台限定でベース価格は5ミリオンユーロ)や19年のチェントディエチ(10台限定で8ミリオンユーロ)というわけだが、いずれもメカニカルなパートはシロンをベースとするものの、内外装のデザインはもとより、運動性能もそれぞれのコンセプトに沿ったキャラクターに仕立てられており、それゆえたとえ生産台数が2桁にとどまるフューオフモデルであっても、その開発はシリーズモデルと同等の時間とコストをかけて行われている。それゆえのプライス、でもあるのだ。

なかでも極めつきは19年に発表され、開発とテスト、生産に2年を要した現時点ではブガッティ究極のワンオフモデル、“ラ・ヴォアチュール・ノワール”、訳せば“黒いクルマ”、である。先月ようやくブガッティエンスージアストの元へと納車された。

このモデルのコンセプトモチーフとなったのは、もし売り出されたとしたならば世界最高価格になると言われ生産台数わずかに4台という伝説の名車ブガッティタイプ57S(SC)アトランティーククーペ(そうピエヒの孫が描いたクルマ)、のなかでもさらに幻中の幻で1941年現在行方不明となっている1936年式SCアトランティーク(“黒いクルマ”=#57453)である。もし仮に今発見され市場に出てきたとすれば、その状態にかかわらず価値は200億円を下らない、といわれている。

現代に蘇った“黒いクルマ”もまた、他のコーチビルドカーと同様の開発と試験を受けて完成された。単なるシロンベースではなく、アトランティーククーペの優雅なスタイルを現代的に表現すべくホイールベースまで延長しているのだから、念入りなテストは当然だったのだろう。その価格はなんと11ミリオンユーロ。

自動車の平均所有台数が60台というブガッティオーナーたち。そのなかで、”ラ・ヴォワチュール・ノワール”を購入したオーナーはまず間違いなく頂点に立っている。ブランドの歴史を体現した1台を買ったと思えば、決して高い買い物ではなかったことだろう。そしてこの謎のオーナーの欲望をさらに満たすクルマといえば、現在も行方不明のままである“#57453”を見つけ出すというトレジャーハンティングくらいのものであるに違いない。

文・西川淳 写真・BUGATTI AUTOMOBILES 編集・iconic

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

高速道路に「人が運転していない」トラックが出現…なぜ? 一般車の自動運転と何が違うのか
高速道路に「人が運転していない」トラックが出現…なぜ? 一般車の自動運転と何が違うのか
乗りものニュース
トヨタ新型「クラウンエステート」正式発表! ワゴン×SUVとして18年ぶり復活の理由は? ブランド70周年で4モデル揃う!エステートが担う役割とは 635万円から設定
トヨタ新型「クラウンエステート」正式発表! ワゴン×SUVとして18年ぶり復活の理由は? ブランド70周年で4モデル揃う!エステートが担う役割とは 635万円から設定
くるまのニュース
スバル新「クロストレック」発表! 鮮烈な「オレンジ」ボディ採用した“サンブレイズ仕様”に大注目! 同時に「インプレッサ」と「レヴォーグ」特別仕様車も公開!
スバル新「クロストレック」発表! 鮮烈な「オレンジ」ボディ採用した“サンブレイズ仕様”に大注目! 同時に「インプレッサ」と「レヴォーグ」特別仕様車も公開!
くるまのニュース
「アントネッリ圧倒は必須とは思っていない」先輩ジョージ・ラッセル、”速いヤツは最初から速い”理論を提唱
「アントネッリ圧倒は必須とは思っていない」先輩ジョージ・ラッセル、”速いヤツは最初から速い”理論を提唱
motorsport.com 日本版
ホンダ『ZR-V』のゴツゴツ感を低減、スタビリティも向上させるテインの車高調「フレックスZ」発売
ホンダ『ZR-V』のゴツゴツ感を低減、スタビリティも向上させるテインの車高調「フレックスZ」発売
レスポンス
【タイ】全長4.6m! 三菱「“新”SUVミニバン」発表! 黒すぎ「ダイナミック顔」×画期的MIVECハイブリッド採用! タフ仕様もある7人乗り「エクスパンダーPLAY」特別仕様車登場
【タイ】全長4.6m! 三菱「“新”SUVミニバン」発表! 黒すぎ「ダイナミック顔」×画期的MIVECハイブリッド採用! タフ仕様もある7人乗り「エクスパンダーPLAY」特別仕様車登場
くるまのニュース
[70スープラ]がカッコよすぎてすぐ惚れちまうぜ! バブルを彩った[デートカー]たち
[70スープラ]がカッコよすぎてすぐ惚れちまうぜ! バブルを彩った[デートカー]たち
ベストカーWeb
テスラが嫌いならキャデラックを買えばいいじゃない! 初の電動SUV「リリック」が上陸【新車ニュース】
テスラが嫌いならキャデラックを買えばいいじゃない! 初の電動SUV「リリック」が上陸【新車ニュース】
くるくら
すべてが異次元な雰囲気なのに居心地がいい。 ル・ボラン編集部が選ぶ!「EVアワード」テスラ・モデル3
すべてが異次元な雰囲気なのに居心地がいい。 ル・ボラン編集部が選ぶ!「EVアワード」テスラ・モデル3
LE VOLANT CARSMEET WEB
スーパーカーのようなデザインのボート「Raptor」、日本初上陸…ジャパンインターナショナルボートショー2025
スーパーカーのようなデザインのボート「Raptor」、日本初上陸…ジャパンインターナショナルボートショー2025
レスポンス
フェラーリ育成カマラがポールポジション獲得。バドエル息子のクラッシュ含む赤旗2回の荒れた展開に|FIA F3メルボルン予選
フェラーリ育成カマラがポールポジション獲得。バドエル息子のクラッシュ含む赤旗2回の荒れた展開に|FIA F3メルボルン予選
motorsport.com 日本版
【欧州】トヨタが新型「アーバンクルーザー」発表! ヤリスクロスより“ちょいデカ”&精悍“サメ顔”採用! 新たな「コンパクトSUV」25年後半に発売
【欧州】トヨタが新型「アーバンクルーザー」発表! ヤリスクロスより“ちょいデカ”&精悍“サメ顔”採用! 新たな「コンパクトSUV」25年後半に発売
くるまのニュース
再々復活で話題のランクル70はじつはランクル76だった!? トヨタ流「型式英数字」の法則とは
再々復活で話題のランクル70はじつはランクル76だった!? トヨタ流「型式英数字」の法則とは
WEB CARTOP
【ホンダ Eクラッチ vs ヤマハ Y-AMT】クラッチ操作不要の『CB650R Eクラッチ』はナナハンCB乗りにどう映る?[前編]
【ホンダ Eクラッチ vs ヤマハ Y-AMT】クラッチ操作不要の『CB650R Eクラッチ』はナナハンCB乗りにどう映る?[前編]
レスポンス
S耐優勝、SF&FEテストドライブ……飛躍の1年経てGT300フル参戦掴んだ小山美姫「実力を上げることが、次のチャンスにつながる」
S耐優勝、SF&FEテストドライブ……飛躍の1年経てGT300フル参戦掴んだ小山美姫「実力を上げることが、次のチャンスにつながる」
motorsport.com 日本版
皆さんのお気に入りのEVはどのモデル? 「EV:LIFE FUTAKO TAMAGAWA 2025」で開催する第1回「EVアワード」の「読者・会場賞」への投票をお願いします!
皆さんのお気に入りのEVはどのモデル? 「EV:LIFE FUTAKO TAMAGAWA 2025」で開催する第1回「EVアワード」の「読者・会場賞」への投票をお願いします!
LE VOLANT CARSMEET WEB
「うわぁ!懐かしい!」 “腕回しバック駐車”は過去の話? 昭和で当たり前だったけど“令和で消えそう”な「クルマ運転あるある」5選!
「うわぁ!懐かしい!」 “腕回しバック駐車”は過去の話? 昭和で当たり前だったけど“令和で消えそう”な「クルマ運転あるある」5選!
くるまのニュース
「マンホール」はバイクにとって地雷か? 転倒リスクは「蓋がすべりやすいから」だけではない!!
「マンホール」はバイクにとって地雷か? 転倒リスクは「蓋がすべりやすいから」だけではない!!
バイクのニュース

みんなのコメント

2件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村