ロードスターの開発に携わるマツダ関係者も多く参加
「世界でもっとも多く生産された二人乗り小型オープンスポーツカー」というギネス記録を持つ、世界に誇る日本車であるマツダ・ロードスターの世界最大となるファンミーティング「軽井沢ミーティング」が、2024年5月26日、長野県軽井沢町にある軽井沢プリンスホテル・プリンススキー場駐車場にて開催されました。
【画像】ギネス記録を持つクルマ!? 1100台が集まるファンミーティングを写真で見る(30枚)
軽井沢ミーティングは、1993年にマツダ・ロードスターのオーナーたちがファンの集う場として開催したのが始まり。
第1回は、NA型ロードスター115台と138名という規模でしたが、開催を重ねる毎に参加者数と車両数がウナギ登りに。2016年には、歴代ロードスターの台数が過去最高となる1363台を記録するまでに成長しました。
その後、会場のキャパシティや周辺施設の利用者への配慮などを理由に、参加台数の上限が設けられましたが、それでも約1100台のロードスターが集結します。そして、参加者数も家族や友人などを連れ立ったオーナーに加え、公共交通機関を利用した参加者もいるため、2000人を超える規模となっています。
それだけの規模ながら、初回から現在まで、イベントの運営は、ロードスターオーナーのボランティアで行われており、ファンによるファンのためのイベントであることも大きな特徴です。
今年はロードスター生誕35周年となる記念すべき回であるだけに、約1100台の当選車両に加え、2633人の参加申し込みがある盛況ぶりに。参加台数の内訳を見ていくと、発売より9年目を迎えた現行型であるND型が全体の約60%を占めるまでに成長。それに次ぐ初代となるNA型の約25%と、根強い人気を見せています。
近年では、若いユーザーの参加も増えており、イベント自体の若返りも感じられ得るようになっています。
マツダの公式イベントではありませんが、ロードスターの開発に携わるマツダ関係者も多く参加し、ファンとの交流を図るのも恒例となっています。
35周年の節目となる今年は、開発の指揮を執る歴代主査が集結。初代NA型の開発に携わり、NA型~NC型まで開発主査だった貴島孝雄さんを始め、ND型の初代主査の山本修弘さんのマツダOBの元主査に加え、ND型のチーフデザイナーを務めた後、主査にもなった現デザイン本部長である中山 雅さん、そして、現主査である齋藤茂樹さんが参加。
さらに35周年という節目に相応しいゲストとして、初代NA型の誕生前夜となるプロトタイプから開発プロジェクトに携わった元北米マツダのデザイナーである俣野努さんも、米国より来日しました。
イベントの目玉のひとつであるマツダのロードスター関係者をゲストに招いたトークショーでは、ロードスターのお祭りに相応しい特別なエピソードが披露されるのも恒例となっています。午前の部のトークショーは、NA型のモデル途中からNC型まで主査を務められた貴島さんとNA型のデザイナーに携わった俣野さんのトークショーでは、ロードスター誕生前夜の話が語られました。
俣野さんによれば、70年代後半、日本車好きの米国の自動車ジャーナリストであるボブ・ホール氏が来日した際、ロータリーエンジン開発の指揮をとり、マツダの重役になっていた山本健一さんに、当時発売間もないサバンナ「RX-7」よりも下に位置するライトウェイトスポーツカーを作るべきだと提案したそう。
その後、ホールさんは北米マツダに入社。プランニングに携わることで、北米マツダに出張してきた山本さんと再会。山本さんは、彼が提案した例のライトウェイトスポーツカーの話のその後を尋ねたそう。ボブさんの「どの部署に持ちかけても話が動かない」という回答に対して、山本さんは、「自分でやってみろ」と返されたそうです。
ただ正式な業務ではないため、就業時間後の取り組むことに。それがロードスターの誕生の原点となったことが明かされました。これまでロードスター誕生のきっかけについて多くが語られることはなかったので、一人の日本車好きの外国人ジャーナリストのアイデアに端を発していたとは驚きました。
貴島さんからは、NA型ロードスターが長く愛されるための基礎となっている堅牢さの秘密が明かされました。
「マツダの自動車設計には、乗用車基準とトラック基準があります。トラックはプロが使うため、壊れたら、仕事にならない。実は、ロードスターは、そのトラック基準を使っているんです。だから、海外の関係者からは、“ロードスターはモノ持ちが良すぎる”なんていわれたものです。だから、強度と信頼性は乗用車としては非常に高い。だからこそ、未だに皆さんに愛用してもらえている。こんなクルマはなかなかありません」
NA型ロードスターには、コストダウンのために、灰皿をトラックから流用した話が有名ですが、部品だけでなく、設計思想まで取り入れられていたのです。大切にすれば長持ちするという素性の良さが、長く愛されるクルマの基礎となっているわけです。それが発売から35年を過ぎ、最終型でも26年を迎えるNA型の長寿命を支えていると知り、納得しました。
35周年記念車は「あります」
午後の部は、現マツダロードスター開発関係者によるトークショーが行われ、こちらでは、35周年記念車の話題に注目が集まりました。
35周年記念車について問われた齋藤主査は、「あります」と断言。前回の30周年記念車が限定車だったのに対して、今回は、期間限定車とし、購入希望者全員に届くようにするとのこと。その詳細は明かされませんでしたが、中山デザイン本部長は、「来年のイベントに30周年記念車で参加し、開発者にサインが貰いたい人は、金色のペンを用意してください」と意味深な発言を……。明言こそ避けましたが、金色と相性の良いカラーが内外装には使われているようです。
そのため、一部では、ついにグリーンのボディカラーが登場するのではという憶測もあり、大いに盛り上がりました。ロードスターの今後については、現行型での販売が継続できる限りつづけられるとのこと。つまり、現行型での法規対応が難しくなった段階で、フルモデルチェンジを図るようです。
また初代ロードスターのレストアや復刻パーツの供給を手掛けるクラシックマツダチームのトークショーでは、部品メーカーの廃業、製造設備の更新や金型の寿命に加え、当時と同等の材料の入手が困難になるなど、復刻が難しいだけでなく、復刻したパーツの供給をどこまで維持できるかが見えない厳しい現状も報告されました。
やはり、旧車となった愛車のパーツは、あるうちに確保がベターのようです。そのため、今後、復刻パーツを続けながらも、サードパーティー製の純正同等に使える部品の情報などの提供も考えていくとのことでした。
この他にも注目のプロジェクトが進行中であることが会場で明かされました。
ひとつは、生誕35周年を記念したNA型ロードスターミニカーセットのプロジェクトが、本格始動したこと。ダイキャスト製の1/43スケールモデルで、標準車に加え、魅力的な限定車たちもモデル化されるので、ファンにはたまらない内容となっています。その制作過程も、マツダオンラインショップの公式メルマガ等で発信されていくというから楽しみです。
もうひとつは、マツダのオフィシャルグッズでも、ロードスター専用アイテムの開発が進行中なこと。これは用品担当者が会場に出向いたことをきっかけに、ロードスターオーナーの意向を取り入れた商品開発プロジェクトがスタート。現在、ボディバッグやジャケット、シューズなどの開発が進んでいます。ボディバッグに関しては、早くも試作品が持ち込まれ、オーナーたちからの意見が集められました。今後、その反響も取り入れ、製品化が進められるとのことなので、続報にも期待です。
※ ※ ※
トークショー以外のステージイベントは、抽選大会やチャリティーオークションなどに留まり、基本的にはファン同士の交流がメインとなっていますが、31年間も続いてきたのは、ロードスターが好きという気持ちを共有できる世代を超えた仲間たちとの出会いにほかなりません。
初代のカタログに掲げられた「だれもが、しあわせになる。」という作り手の想いが込められたフレーズが、今もロードスターの信念として受け継がれていることを実感させられます。
もちろん、来年2025年も35周年記念車をゲストに、36年の歴史を祝うべく、初夏の軽井沢にロードスターで埋め尽くされることでしょう。
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