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スポーツカー苦境の時代 それでもフェアレディZが愛される理由とは

掲載 更新 19
スポーツカー苦境の時代 それでもフェアレディZが愛される理由とは

 2020年5月に中期経営計画記者会見を行った日産。その最後で「フェアレディZ」の次期型のシルエットが発表された。ファンからすると、待ってました! というリアクションだったと思うが、今の時代はスポーツカーにとっては苦境の時代となっている。

 今回の主役であるフェアレディZも例にもれず、新車販売は北米がメインで、日本では台数は見込めない状況となっている。しかし、その存在は大きく、モデル存続と新型の登場が望まれていた。

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 なぜフェアレディZというクルマはここまで愛されるクルマに成長したのか? その理由について、自動車評論家の片岡英明氏が、過去のモデルを交えつつ解説。次期型に対する期待値も語っていく。

文/片岡英明
写真/NISSAN

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■北米で大ヒットし一気にトップへ! ”ズィーカー”の愛称でファンを魅了

 日本の自動車技術が、欧米に引けを取らないほど高いレベルにあることを証明したのが、日産が生んだ「フェアレディZ」である。

 生活に根ざしたファミリーカーは、それなりの技術レベルがあれば発売することが可能だ。が、高性能を第一に掲げるスポーツカーを作り出すのは難しい。使用する領域は驚くほど高く、時にはサーキットを走ることもある。

 だから、その時代の最高技術を使って開発しないと危険だし、性能レベルが低いと誰も買ってはくれない。この厳しい世界のなかでフェアレディZは半世紀以上も第一線で活躍し、主役を張っている。

「フェアレディ」は、初めて海外で認められた日本製のスポーツカーだ。フルオープンの時代からフェアレディは北米の自動車ファンを魅了し、1967年春に登場した最終型のフェアレディ2000(SR311)は性能的にも2Lクラスで最強の域に達した。

ダットサンブランドで発売されていた「フェアレディ2000」(1967年)。若き日にあこがれた人も多いだろう。モータースポーツでも輝かしい成績を収めた名車だ

 だが、お世辞にも快適とは言えず、雨の日のドライブや高速走行では苦痛の走りを強いられる。そこで天候にかかわらず快適なクローズドボディを採用し、エンジンも上質な直列6気筒を積む1970年代にふさわしいスポーツカーが企画された。

 それが1969年10月に鮮烈なデビューを飾った「フェアレディZ」だ。アルファベットの最後の文字「Z」は究極のフェアレディを意味している。メカニズムもオープン時代のフェアレディとは大きく違う。高剛性のモノコックボディを採用し、エンジンは直列6気筒で、SOHCに加えDOHC4バルブも設定した。サスペンションも4輪ともストラットの独立懸架だ。

 ロングノーズ&ショートデッキに、流麗なファストバックスタイルのフェアレディZは、発売されるや大ヒットを飛ばす。特に北米では空前のヒット作となっている。

 海外向けの「ダットサン240Z」は2.4LのL24型 直列6気筒SOHCエンジンを積み、俊敏な走りを見せるだけでなく扱いやすさもピカイチだった。性能的には当時、最高峰だった「ポルシェ911」と互角だ。それでいて信頼性と耐久性は驚異的に高く、販売価格もリーズナブルな設定としている。最初は2シーターだけだったが、途中で2by2を追加して新しいファンの獲得にも成功した。

150psを絞り出す2.4L 直列6気筒「L24型」エンジンを搭載したことが名前の由来である「240Z」

1950年代からラリーシーンで活躍してきた日産は「240Z」を投入し好成績を収めた

 海外向けモデルは後期型で「260Z」になり、最終型ではさらに排気量を増やして「280Z」に発展する。パフォーマンスにおいても一級の実力を手に入れ、ライバルを一気に突き放した。

 また、モータースポーツの世界でも大暴れし、サファリラリーなどの国際ラリーでも下馬評を覆して大活躍している。初代の「S30系フェアレディZ」の生産台数は、スポーツカーとしては驚異的な55万台だ。すごいのは、海外で絶大な人気を誇り、販売台数は47万台にものぼった。なかでも北米では「ズィーカー」の愛称で呼ばれて愛され、絶大な人気を誇っている。

■経営危機でも潰えなかったその価値 生誕50周年を迎える名車に成長

 アメリカの景色を変えるほど売れたから、それまで北米で主役を張っていたヨーロッパ製のスポーツカーは脇役に追いやられ、いつの間にか姿を消した。Zの人気にあやかろうと、日本でもトヨタが刺客として「セリカXX(海外ではスープラ)」を送り込んだ。マツダもロータリーエンジン搭載の「RX-7」を投入する。

 迎え撃つフェアレディZは、1978年8月に初のモデルチェンジに踏み切り、「S130型 Z」を送り出した。2代目は日本では今一歩の評価だったが、41万台の生産を記録している。時代の先端を行く電子制御燃料噴射装置(EGI)を採用し、待望のターボ車やTバールーフも設定した。また、パワーステアリングを標準装備したから、女性にまでファン層を広げている。新たな神話を生み出したのが2代目のS130型 Zだ。

国産車で初めてTバールーフを採用した「S130型 Z」。セミガルウィングウィンドウ化されたモデルはテレビドラマ『西部警察』で活躍した

 1983年9月に登場した3代目の「Z31型 フェアレディZ」は、デザインだけでなくメカニズムも一新し、新しい魅力を持つスポーツカーに生まれ変わる。パワーユニットは新世代のVG系V型6気筒SOHCターボだ。走りにこだわるファンが多い日本市場にはパワフルな直6のDOHCターボというスペシャルユニットを投入し、Zマニアを喜ばせている。この3代目も30万台がオーナーの手に渡った。

 1989年7月に登場した「4代目フェアレディZ」、Z32型は、最初から3ナンバーのワイドボディとし、それまで影の薄い存在だった2by2も魅力的なボディをまとっている。300ZXが積むのは3LのVG30DE型 V型6気筒DOHCとDOHCターボだ。サスペンションは4輪とも革新的なマルチリンクで、4輪操舵のスーパーHICASも採用した。パフォーマンスもハンドリングも世界最高の仕上がりだ。

ロングノーズ、ショートデッキというZの伝統的なコンセプトを引き継ぎながら、空力性能を重視したデザインに変わった「Z31型」。内外装ともに一新された

1989~2000年という長期間にわたり生産された4代目「Z32型」。従来からの特徴であるロングノーズ、ショートデッキを改め、ワイド&ローというスポーツカーの基本的イメージを採用した

 4代目で、ポルシェコンプレックスから脱却したフェアレディZは孤高のスポーツカーに成長する。デザインもメカニズムも独自の世界観を持ち、快適性においてもライバルを寄せつけなかった。10年以上の長きにわたって第一線で活躍し、保険料が高騰した北米でも喝采を浴びている。1992年夏には爽快なコンバーチブルを復活させ、新たな魅力を提供した。

 だが、20世紀の末に日産は経営難に陥り、フランスのルノーに救済を仰いだ。ルノー傘下に収まり、フェアレディZの命運は30年で尽きたかと思われた。だが、カルロス・ゴーンCEOは「フェアレディZ」と「GT-R」の価値を認め、復活を約束する。カリスマ性と話題性があり、世界中に熱狂的なZマニアが多く存在することをルノーの首脳陣は知っていたのだ。

 21世紀のフェアレディZは、2002年夏に登場する。Z33型を名乗る「350ZX」が日産リバイバルプランの牽引車として新たなZ神話の幕開けを告げた。

 2003年にロードスターを追加し、2007年1月にはエンジンをパワフルなVQ35HR型に換装。そして2008年暮れに6代目の「Z34型 370ZX」がベールを脱いでいる。

 運動性能を高めるためにホイールベースを短くし、エンジンはスカイラインクーペと同じVVELを採用したVQ37VHR型だ。その後、10年以上にわたって販売を続け、コンバーチブルやNISMO仕様も投入。2019年夏には生誕50周年を記念して「50thアニバーサリー」を限定発売している。

日産リバイバルプランの象徴のひとつとして復活した「Z33型」。その復活は大きな話題を呼んだ

現行型となる「Z34型」。2019年夏には生誕50周年を記念して「50thアニバーサリー」を限定発売

■次代の日産で輝けるか!? ファン期待の新型 その姿

 誕生から51年目の2020年、日産はまたしても経営危機に陥った。建て直すために日産は5月末に2023年度までの事業構造改革計画「日産NEXT」を発表している。

 その席で今後18カ月の間に12の新型車を投入するとコメントした。うれしかったのは、そのなかに次期フェアレディZと思しきスポーツカーのティザー画像があったことだ。やはり日産はフェアレディZを見捨てなかったのである。

2020年5月の中期経営計画記者会見で、その存在が明かされた「新型フェアレディZ」。ファンとしては心が躍る発表であった

 そのクーペフォルムは初代フェアレディZに似ているようだ。パワーユニットは現行のスカイラインが積んでいる3LのV型6気筒DOHCツインターボが有力である。スカイラインと同じように400psレベルを超えることはたやすいだろう。

 だが、時代を考えると3.5LのV6ハイブリッドを設定することも考えられる。数々の神話を持ち、いつの時代も羨望の的だった「ズィーカー」が次のフェアレディZ神話を生み出すのを楽しみに待ちたい。

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みんなのコメント

19件
  • 内装はさすがに時代を感じさせる雰囲気だが、ヤボったい車が増えた現代では走ってるのを見ると自然に目が追ってしっまうw
    32Rやシルビアとかシーマもそう。
    当時は乗りたくなる車が多種ありましたね。
    日本車のデザインはどうなっちゃったのかね。
  • 個人的には240Zがデザイン的には好きです。安全性等を考慮するとサイズは大きくならざる得ないのでしょうが、現在のデザインは意味不明なディテールですと感じます。Z32が出た時はワクワクしましたが、その後は残念な方向に。性能は勿論大切ですが、デザイン(スポーツカーは特に)「見た目」も重要な要素でしょ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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