2020年5月に中期経営計画記者会見を行った日産。その最後で「フェアレディZ」の次期型のシルエットが発表された。ファンからすると、待ってました! というリアクションだったと思うが、今の時代はスポーツカーにとっては苦境の時代となっている。
今回の主役であるフェアレディZも例にもれず、新車販売は北米がメインで、日本では台数は見込めない状況となっている。しかし、その存在は大きく、モデル存続と新型の登場が望まれていた。
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なぜフェアレディZというクルマはここまで愛されるクルマに成長したのか? その理由について、自動車評論家の片岡英明氏が、過去のモデルを交えつつ解説。次期型に対する期待値も語っていく。
文/片岡英明
写真/NISSAN
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■北米で大ヒットし一気にトップへ! ”ズィーカー”の愛称でファンを魅了
日本の自動車技術が、欧米に引けを取らないほど高いレベルにあることを証明したのが、日産が生んだ「フェアレディZ」である。
生活に根ざしたファミリーカーは、それなりの技術レベルがあれば発売することが可能だ。が、高性能を第一に掲げるスポーツカーを作り出すのは難しい。使用する領域は驚くほど高く、時にはサーキットを走ることもある。
だから、その時代の最高技術を使って開発しないと危険だし、性能レベルが低いと誰も買ってはくれない。この厳しい世界のなかでフェアレディZは半世紀以上も第一線で活躍し、主役を張っている。
「フェアレディ」は、初めて海外で認められた日本製のスポーツカーだ。フルオープンの時代からフェアレディは北米の自動車ファンを魅了し、1967年春に登場した最終型のフェアレディ2000(SR311)は性能的にも2Lクラスで最強の域に達した。
ダットサンブランドで発売されていた「フェアレディ2000」(1967年)。若き日にあこがれた人も多いだろう。モータースポーツでも輝かしい成績を収めた名車だ
だが、お世辞にも快適とは言えず、雨の日のドライブや高速走行では苦痛の走りを強いられる。そこで天候にかかわらず快適なクローズドボディを採用し、エンジンも上質な直列6気筒を積む1970年代にふさわしいスポーツカーが企画された。
それが1969年10月に鮮烈なデビューを飾った「フェアレディZ」だ。アルファベットの最後の文字「Z」は究極のフェアレディを意味している。メカニズムもオープン時代のフェアレディとは大きく違う。高剛性のモノコックボディを採用し、エンジンは直列6気筒で、SOHCに加えDOHC4バルブも設定した。サスペンションも4輪ともストラットの独立懸架だ。
ロングノーズ&ショートデッキに、流麗なファストバックスタイルのフェアレディZは、発売されるや大ヒットを飛ばす。特に北米では空前のヒット作となっている。
海外向けの「ダットサン240Z」は2.4LのL24型 直列6気筒SOHCエンジンを積み、俊敏な走りを見せるだけでなく扱いやすさもピカイチだった。性能的には当時、最高峰だった「ポルシェ911」と互角だ。それでいて信頼性と耐久性は驚異的に高く、販売価格もリーズナブルな設定としている。最初は2シーターだけだったが、途中で2by2を追加して新しいファンの獲得にも成功した。
150psを絞り出す2.4L 直列6気筒「L24型」エンジンを搭載したことが名前の由来である「240Z」
1950年代からラリーシーンで活躍してきた日産は「240Z」を投入し好成績を収めた
海外向けモデルは後期型で「260Z」になり、最終型ではさらに排気量を増やして「280Z」に発展する。パフォーマンスにおいても一級の実力を手に入れ、ライバルを一気に突き放した。
また、モータースポーツの世界でも大暴れし、サファリラリーなどの国際ラリーでも下馬評を覆して大活躍している。初代の「S30系フェアレディZ」の生産台数は、スポーツカーとしては驚異的な55万台だ。すごいのは、海外で絶大な人気を誇り、販売台数は47万台にものぼった。なかでも北米では「ズィーカー」の愛称で呼ばれて愛され、絶大な人気を誇っている。
■経営危機でも潰えなかったその価値 生誕50周年を迎える名車に成長
アメリカの景色を変えるほど売れたから、それまで北米で主役を張っていたヨーロッパ製のスポーツカーは脇役に追いやられ、いつの間にか姿を消した。Zの人気にあやかろうと、日本でもトヨタが刺客として「セリカXX(海外ではスープラ)」を送り込んだ。マツダもロータリーエンジン搭載の「RX-7」を投入する。
迎え撃つフェアレディZは、1978年8月に初のモデルチェンジに踏み切り、「S130型 Z」を送り出した。2代目は日本では今一歩の評価だったが、41万台の生産を記録している。時代の先端を行く電子制御燃料噴射装置(EGI)を採用し、待望のターボ車やTバールーフも設定した。また、パワーステアリングを標準装備したから、女性にまでファン層を広げている。新たな神話を生み出したのが2代目のS130型 Zだ。
国産車で初めてTバールーフを採用した「S130型 Z」。セミガルウィングウィンドウ化されたモデルはテレビドラマ『西部警察』で活躍した
1983年9月に登場した3代目の「Z31型 フェアレディZ」は、デザインだけでなくメカニズムも一新し、新しい魅力を持つスポーツカーに生まれ変わる。パワーユニットは新世代のVG系V型6気筒SOHCターボだ。走りにこだわるファンが多い日本市場にはパワフルな直6のDOHCターボというスペシャルユニットを投入し、Zマニアを喜ばせている。この3代目も30万台がオーナーの手に渡った。
1989年7月に登場した「4代目フェアレディZ」、Z32型は、最初から3ナンバーのワイドボディとし、それまで影の薄い存在だった2by2も魅力的なボディをまとっている。300ZXが積むのは3LのVG30DE型 V型6気筒DOHCとDOHCターボだ。サスペンションは4輪とも革新的なマルチリンクで、4輪操舵のスーパーHICASも採用した。パフォーマンスもハンドリングも世界最高の仕上がりだ。
ロングノーズ、ショートデッキというZの伝統的なコンセプトを引き継ぎながら、空力性能を重視したデザインに変わった「Z31型」。内外装ともに一新された
1989~2000年という長期間にわたり生産された4代目「Z32型」。従来からの特徴であるロングノーズ、ショートデッキを改め、ワイド&ローというスポーツカーの基本的イメージを採用した
4代目で、ポルシェコンプレックスから脱却したフェアレディZは孤高のスポーツカーに成長する。デザインもメカニズムも独自の世界観を持ち、快適性においてもライバルを寄せつけなかった。10年以上の長きにわたって第一線で活躍し、保険料が高騰した北米でも喝采を浴びている。1992年夏には爽快なコンバーチブルを復活させ、新たな魅力を提供した。
だが、20世紀の末に日産は経営難に陥り、フランスのルノーに救済を仰いだ。ルノー傘下に収まり、フェアレディZの命運は30年で尽きたかと思われた。だが、カルロス・ゴーンCEOは「フェアレディZ」と「GT-R」の価値を認め、復活を約束する。カリスマ性と話題性があり、世界中に熱狂的なZマニアが多く存在することをルノーの首脳陣は知っていたのだ。
21世紀のフェアレディZは、2002年夏に登場する。Z33型を名乗る「350ZX」が日産リバイバルプランの牽引車として新たなZ神話の幕開けを告げた。
2003年にロードスターを追加し、2007年1月にはエンジンをパワフルなVQ35HR型に換装。そして2008年暮れに6代目の「Z34型 370ZX」がベールを脱いでいる。
運動性能を高めるためにホイールベースを短くし、エンジンはスカイラインクーペと同じVVELを採用したVQ37VHR型だ。その後、10年以上にわたって販売を続け、コンバーチブルやNISMO仕様も投入。2019年夏には生誕50周年を記念して「50thアニバーサリー」を限定発売している。
日産リバイバルプランの象徴のひとつとして復活した「Z33型」。その復活は大きな話題を呼んだ
現行型となる「Z34型」。2019年夏には生誕50周年を記念して「50thアニバーサリー」を限定発売
■次代の日産で輝けるか!? ファン期待の新型 その姿
誕生から51年目の2020年、日産はまたしても経営危機に陥った。建て直すために日産は5月末に2023年度までの事業構造改革計画「日産NEXT」を発表している。
その席で今後18カ月の間に12の新型車を投入するとコメントした。うれしかったのは、そのなかに次期フェアレディZと思しきスポーツカーのティザー画像があったことだ。やはり日産はフェアレディZを見捨てなかったのである。
2020年5月の中期経営計画記者会見で、その存在が明かされた「新型フェアレディZ」。ファンとしては心が躍る発表であった
そのクーペフォルムは初代フェアレディZに似ているようだ。パワーユニットは現行のスカイラインが積んでいる3LのV型6気筒DOHCツインターボが有力である。スカイラインと同じように400psレベルを超えることはたやすいだろう。
だが、時代を考えると3.5LのV6ハイブリッドを設定することも考えられる。数々の神話を持ち、いつの時代も羨望の的だった「ズィーカー」が次のフェアレディZ神話を生み出すのを楽しみに待ちたい。
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みんなのコメント
32Rやシルビアとかシーマもそう。
当時は乗りたくなる車が多種ありましたね。
日本車のデザインはどうなっちゃったのかね。