カーボンニュートラルとゼロエミッション......何が違うの?
脱炭素の取り組みで「カーボンニュートラル」という言葉をメディアなどで聞いたことがある人も多いでしょう。地球温暖化などの気候変動の問題が深刻化するなか、カーボンニュートラルは世界的に注目されている取り組みの一つです。
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これと似た試みに「ゼロエミッション」という言葉をたびたび耳にすることがあります。どちらも、バイクが排出する二酸化炭素などの温室効果ガスを削減する活動に対して使われる言葉ですが、実はこの2つには大きく異なる点があります。
では、カーボンニュートラルとゼロエミッションには、どのような違いがあるのでしょうか。
地球温暖化を防いで持続可能な社会を目指すために、近年ではカーボンニュートラルへの流れは世界中で加速しています。日本では、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しました。
人間の経済活動により温室効果ガスが大量に排出されると、地球温暖化により平均気温が上昇し、異常気象などの気候変動を招きます。このまま何も対策をしないでいると、2050年には平均気温が1.5℃から2℃上昇すると予測されているというわけです。
そのためバイク業界も、カーボンニュートラルの実現に向けてさまざまな施策を打ち出しています。そして、ゼロエミッションとカーボンニュートラルの違いは、温室効果ガスの排出の有無が大きくかかわってきます。
まずゼロエミッションとは、人間の活動から排出される廃棄物をなくして最終的にできる限りゼロにする試みのこと。ただし、産業活動をするうえで完全にゼロにするのは難しいため、廃棄物を再利用するなど有効活用することで廃棄物の削減を目指します。
ここでいう廃棄物には、工場や農場で発生する廃棄物のほか、温室効果ガスなどの廃棄物質も含まれます。したがって、地球温暖化対策の観点からは、主に二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量ゼロを目指す意味として使われる言葉です。
またゼロエミッションは、1994年に国連大学によって提唱された「限りなく廃棄物をゼロにしよう」という取り組みです。東京都では2019年に、平均気温の上昇を1.5℃抑えることを追求し、最終的に2050年までにCO2排出量をゼロに近づける「ゼロエミッション東京」の実現を目指すことを宣言しました。実現に向けた取り組みとして、ロードマップをまとめた「ゼロエミッション東京戦略」を策定し、3Rの推進やプラスチック対策について規定しています。
一方のカーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを指します。よりわかりやすく説明すると「二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出量をできる限り抑えたうえで、削減できなかった温室効果ガスは植林や森林保護によって吸収量を差し引いて実質ゼロにする」というもの。
温室効果ガスは経済活動などにより排出量を削減するのが難しい分野があります。そうした、どうしても排出される温室効果ガスを、吸収もしくは除去することでCO2を増やさないようにするのがカーボンニュートラルの基本的な考え方です。
脱炭素社会の実現に向けてバイクの取り組みとは
脱炭素社会の実現に向けてバイクの取り組みは、どうなっているのでしょうか。
前述した東京都の「ゼロエミッション東京」の計画のなかには、都内で販売される新車のバイクを100%非ガソリン化にする内容も盛り込まれています。これは「バイクの2035年問題」と呼ばれているもので、2035年までに都内でガソリンエンジンを搭載した新車のバイクが販売できなくなるというものです。
具体的には、「ZEV(Zero Emission Vehicle)普及プログラム」と呼ばれるもので、自動車のCO2排出量を実質ゼロにする取り組みが進められています。また、このプログラムにはバイクも含まれており、排ガスを出さない二輪車をゼロエミッション・バイク(Zero Emission Bike)とし、「ゼロエミバイク」と呼んでいます。
バイクの100%非ガソリン化に向けてバイクメーカーは、将来的にゼロエミバイクを実現しなければならない状況です。そのためにはバイクの電動化に向けて舵を切るか、ガソリンエンジンに代わる動力を開発しなければなりません。しかし、もし電動化を選ぶにしてもバイクの電動化にはいくつかの課題があります。
とくにバイクで頭を悩ませるのが、バッテリーの積載場所と航続距離の問題。単純にバッテリーの容量を大きくすれば航続距離を伸ばすことができますが、大容量のバッテリーは当然ながら大きくなり重たくなるので、スペースの限られたバイクに積むのは難しくなります。
また、バッテリーの容量が大きくなれば、その分だけ費用がかかります。現在販売されている電動バイクでも、バッテリーが占める販売価格の割合はけっして少なくありません。それが、いまよりも大容量のバッテリーとなれば、販売価格が大きく上昇する可能性があります。車両価格があまりにも高額になれば、実用車としてユーザーに受け入れられないケースは十分あり得る話です。
いずれにしても、2035年には新車のガソリンバイクは都内で販売できなくなります。そうなれば少なくともあと10年ほどで、バイク業界にとって大きな変革期を迎えることになりそうです。
※ ※ ※
ゼロエミッションとカーボンニュートラルの違いは、温室効果ガス排出の有無の違いです。どちらもCO2の排出を削減することが前提にあります。そのため、普段のバイクの運転から排ガスをなるべく出さない優しい運転を心掛け、ライダーひとり一人が脱炭素社会の実現に向けて意識することが大切です。
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