2017年7月にフルモデルチェンジした現行型カムリに、2018年8月、早くも新グレードの「WS」が加わった。CMなどでは「カムリスポーツ」と呼ぶ、「スポーティさ」を強調したグレードで、内外装とともに足回りも改良を受けている。
この「WS」、カムリ自体の商品力をアップするだけでなく、トヨタのラインアップ全体にとっても重要な意味を持つ。
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以下、カムリWSの紹介とともに、その重要性を解説したい。
文:ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部
写真:平野学
■高速安定性が増し、「余裕」が楽しい
カムリの新グレード「WS」の具体的な特別装備、仕様は以下のとおり。
【内外装】
バンパー左右の開口部を端まで広げ、ワイド感を強調。フロントグリルを立体的に突出させてスポーティさを強調。デュアルマフラーカッターを装着。ブラック塗装の専用18インチアルミホイールをオプション設定。専用シートのほか、カムリ唯一となるパドルシフトを装着。
【足回り】
0.01m/秒以下の超微入力時にもしっかり反応する新開発ショックアブソーバを採用し、乗り心地を維持したまま操縦安定性を向上。
といったところ。
米国や中国ではすでに販売されている仕様だが(グレード名は異なる)、単にそれを日本に導入したわけではなく、日本専用のサスペンションチューニングが施されているという。
なお「WS」は「Worldwide&Sporty」の略だそうです。
では、試乗といこう。
2.5Lハイブリッドに変更はないが、従来のトヨタのハイブリッド車にありがちだったラバーフィールは低減されており、ファンな仕上がりとなっている。
ライントレース性が向上しているという注目の新サスペンションは、なるほど乗り心地を悪化させることなくスポーツ性をアップさせている。
と、言いたいところだが、公道走行レベルでは標準グレードとの差を感じ取るのは難しい。同時に乗り比べればわかるのかもしれないが、それよりも高速直進安定性の高さに感心した。
具体的な数値は控えるが、やむを得ず高速道路の追い越し車線を元気な速度で走ったと思ってほしい。速度が上がるほど車体の安定感が増していくものだから、知らず知らずのうちに「覆面いないだろね?」と警戒するスピードで走っていることになる。
これこそWS最大の魅力とみた。速く走れるのがいいのではなく、高速域での余裕がいいのだ。足を硬くしているわけではないのに安定感が増しているのだから文句なし。高速道路だけでなく、一般道でも乗り心地に不満を感じる場面はいっさいなかった。
TNGAのテクノロジーを使うことで走行性能が向上し、見た目の印象も若返ったカムリだが、WSはそれをもうひと押ししてきたイメージ。クーペルックを際立たせるWS専用のツートーンカラーが設定されているのも本気ぶりをうかがわせる。
なお、標準グレードはオート電動格納式ドアミラー、インテリジェントクリアランスソナーが標準装備となった。また、JBLプレミアムサウンドシステムがX以外の全グレードに新たにオプション設定されており、これも注目したいポイントだ。
カムリを「おじさんセダン」と思い込んでいるのはもったいない。フラットな目でクルマ選びをすれば、このWSは候補の相当上位に挙がってくるはずだ。
■マークX廃止の布石として…?
今回この「WS」グレードをカムリに設定したのは、トヨタにとって重要な販売戦略となる。
というのも、ご承知のとおり、カムリは(先代型までカローラ店専売モデルだったが)現行型からトヨペット店(東京地区はトヨタ店)、ネッツ店、カローラ店の併売モデルとなった。
特にポイントなのは、トヨペット店にはマークXがあり、競合を避けるための棲み分け策として単独系列扱いだったのだが、しかしトヨタはここ数年、日本市場での「系列店の廃止」、「車種整理」を進めている。
マークXは車種整理の対象車種であり、早ければ今年中の生産終了もあると言われている。
そうしたなか、「マークXがなくなると、トヨタからミドルサイズのスポーティなセダンがなくなってしまうではないか」という声が出ていた。
そこに(他系列併売車種である)カムリのスポーティグレード「WS」の追加である。
ここまで材料が揃うと、やはりトヨタは系列店の廃止、車種整理を進めるため、着々と準備を整えているんだな、とも思える。
もちろんそうした販売戦略があるからといって、このカムリWSの魅力が損なわれるわけではない。カムリWSにはカムリWSのよさがあり、マークXにはマークXのよさがある。だからこそ、マークXは生き残ってほしいし、このカムリWSも売れてほしいと思うのだが……。
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